ということで今回、まったくの素人が芸人の相方になって漫才に挑戦してみました!
相方が出家している間「誰とでも漫才」

相方を募集していた芸人は、お笑いコンビ「かりちゃんじゃくちゃん」の苅田昇さん。
苅田さんは、高校時代に漫才コンテストで優勝したときの相方、若尊(じゃくそん)さんとコンビを結成し、養成所を経て芸歴は5年。これからが勝負!というとき、なぜ“誰とでも漫才”をはじめたのでしょうか。
「相方が寺の子で、2016年の10月から出家することになって。それで、出家が終わるまでコンビ活動は休止することになったんです。だけど、期間は1年以上あるし、どうしてもお笑いをしたくなっちゃったんですよね。でも解散してるわけじゃないから誰かとコンビ組み直すのも違うし……。じゃあお試しで『誰とでも漫才しますよ』ってことで始めました。相方がいつ出家から戻ってきてもいいように、こっちも“修行”するかってことで(笑)」
休止期間を企画に転化させたわけですか!
目標人数を設定し、はじめは50人としていたものの、どうせなら100人、いや、相方が出家してるなら煩悩の数の108がいいんじゃないか?ということで、108人達成を目指しているそう。
「芸人と組むこともあるけど、8割は一般の人。上はお笑い好きの40代男性から、下は小学2年生まで。劇場が原宿にあるので女子中高生が多いですね。中には、この漫才をきっかけにお笑いの道に進んじゃった高3の女子高生もいて。
えー! 実際にお笑い芸人になった人もいるとは!
想像以上に影響力があるみたい!
お話はこれくらいにして、漫才練習!
漫才のコツってなんですか?
「簡単なことでいえば、大きな声と元気、楽しそうにすることがコツ。もっといえば、漫才は『会話』っていうのが僕の中ではあって。セリフとか台本はあるんですけど、セリフ通りにしゃべらずに、ぼくの話した言葉を聞いて、そこで言葉を発してほしいです」

なるほど~!「漫才は会話」というのを頭に入れて臨みます!
苅田さんがツッコミで、私がボケです。
台本は「理想のプロポーズ」という王道的テーマで、展開はシンプルなつくり。
素人でもすんなり頭に入りやすいように苅田さんが書いたものです。
台本を見ながらいざ漫才の稽古!
実際にやってみるとボケるのって恥ずかしい!
でも照れが出ると余計みっともないので、「自分は芸人」と暗示をかけます。
ネタ合わせの練習はたったの3回!
え、これでいいの!?
「流れをつかめば大丈夫です。練習しすぎても面白くないんですよ」
客引きから楽屋まで体験!
そして本番の日曜15時。
竹下通りの人混みを掻き分けて、会場であるラスタ原宿へ向かいました。
ラスタ原宿は、クラウドファンディングで実現した新しくて活気のある劇場です。

客席は60人ほど。開演前から賑わってます。
少しでも満席に近づけるよう、外へ出て芸人自ら客引きをします。

「すみませ~ん!ワンコインで観れるお笑いライブをやってるんですけど~」
道行く人に声をかけてみますが、無情にも素通り。
かと思ったら、立ち止まってくれた女子中学生はしっかり話に耳を傾け、「これから用事があって、ごめんなさい。漫才頑張ってください」とツイッターをフォローしてくれました。
いい子すぎて心が洗われる……!
苦戦している中、「この辺でお笑いやってるってテレビで見たことある!」と興味を示した人に出くわし、見事成功! しかも4人組というデカイ獲物でした!
苅田さん「よくやりましたね~!滅多に成功しないですよ」
ラッキーでした!
そうこうしているうちにライブが始まり、楽屋へ。

早回しで小声でネタ合わせをしている人、一人集中を高めている人など様々。
決して表では見せない芸人さんの真剣な表情を目の当たりにしました。
出番を終えた若い男女コンビが肩を落としていました。
どうやら思ったよりウケなかったみたいです。
そんな2人に先輩芸人が声をかけます。
「『ああすればよかった』『こうすればよかった』ばっかり言っててもおもろないやろ。楽しくやらんと」
苅田さんも女性の横にきてアドバイス。
「ネタ中に相方を『お前』って呼ぶのは怖いかもな。お客さんが引いてる感じがする。
えー!ネタってここまでこだわって作られてるんだ。
ちなみにこの男女コンビ「ヒロイン」の あやちんさんこそ、“誰とでも漫才”で芸人になった方でした!

本番はもうすぐ。
楽屋裏の喫煙所でネタ合わせの最終確認をします。
緊張が高まってきました。

時間ぎりぎりまで台本を頭に叩き込みます。
いざ本番!!
出番が次に迫ってきました。
舞台袖で苅田さんと待機します。
前の漫才が終わったと同時に暗転。
苅田さんに「声、大きく出していきましょう!」と言われ、気持ちがグッと締まります。
アナウンスが響き、苅田さんの声に続いて「どうもー!!」と中央のマイクスタンドへ。
舞台に向けられたまぶしいライトの合間から、薄暗くお客さんの顔が広がります。
スゴイ! これが芸人さんが見ている光景か!
感動も束の間、堅い表情から向けられるたくさん視線にじわじわと不安感が立ち込めてきます。

その横で苅田さんは“誰とでも漫才”の活動を説明しながら、私を軽快にイジりはじめます。
アドリブを入れられて自分が一番笑ってしまう。ネタに集中するって思ってたより難しい。
セリフは飛ばさず順調!
練習通り、私がボケては苅田さんにツッコんでもらいます。
いつの間にか緊張や不安は溶け、楽しむ余裕がでてきました。
そして最後の大ボケ。
プロポーズのプレゼントを指にはめて……

「わぁ!うれしい!!……とんがりコーンだぁ!」
ちゃんと笑いが起きました!
やったー!うまくハマったみたいだ!
ネタ時間の3分は、あっという間でした。
漫才の魅力

舞台に立つ心地よい緊張感と、やりきったあとの爽快感。
「漫才が楽しい!」と芸人さんがよく口にする言葉を実感しました。
「やっぱり漫才が楽しいなって毎回思いますね。同じ漫才なのに人が変わると台本が変わってくるので。そのことに“誰とでも漫才”で気付いて、ますます漫才って楽しいなって思います。漫才って『人』なんやなって」
苅田さんの言葉を聞いて、漫才の奥深さにより一層魅了されました。
漫才って、人前に立つ度胸や話すテンポはもちろん、大勢のリアクションが伝わるし、アドリブ力も試されます。もしかしてコミュニケーションの基礎と応用を一気に鍛えるにはもってこいの方法なのかも!
台本というベースがあれば意外と形になるし、漫才を芸人さんのものだけにするのはもったいない!と思いました。

最後に、客引きに成功したのでギャラをいただきました。
呼び込み成功1人につき、200円なので……800円!
これは、芸人さんと同じ条件だとか!
くぅ~芸人で食べていくのはやっぱり厳しい……。
舞台に立つ夢に反してそんな現実も見させてくれる貴重な経験でした。
そして苅田さんは約1年をかけて先日100人を達成!
残り8人のネタが見られる108人達成記念ライブが近日開催されます。
ぜひ多くの人に達成の瞬間を見届けてほしいです!
(私も観に行きます!!)
3月2日(金)
開場18:00 開演19:00
会場 新宿シアターサンモール
チケット 前売り2000円 当日2500円
詳細 かりちゃんじゃくちゃん 苅田昇 ツイッター(@karitanoboru)
(ツマミ具依)