吉岡里帆主演の火曜ドラマ『きみが心に棲みついた』。下着メーカーを舞台に、依存とハラスメントが渦巻くドロドロの三角関係を描く。


先週放送された第8話の視聴率は平昌五輪が終わったせいもあってか、7.9%と盛り返してみせた。このまま最終回に向けて視聴率を上げていけるだろうか? 
「きみが心に棲みついた」向井理の怖さMAX8話「俺だけのために生きてくれよ」「逃げたいなら俺を殺せ」
原作/天堂きりん

素直に謝れない生涯獲得彼氏ゼロ女


第7話で、星名(向井理)にかけられた“呪い”の象徴であるねじねじを吉崎(桐谷健太)に解いてもらって一夜を過ごした“キョドコ”こと今日子(吉岡里帆)。デートの最中、吉崎にネックレスをプレゼントされて幸せいっぱい。しかし、星名は会社での人事権をタテにして、今日子に嫌がらせを続ける。

「何、普通の人間装って恋愛してんだよ。キョドコのくせに……」
「やめてください」
「吉崎なんかにお前の過去は埋められない。あいつじゃ物足りないって感じるときが必ず来る。
そのとき、お前が思い描くのは間違いなく俺だ」

車の中で星名にネックレスを壊されてしまった今日子は、吉崎を遠ざけるようになる。そんなの「間違って壊しちゃった。今、修理中なの。ゴメンネ」と言えばOKだと思うのだが、これまでの人生で彼氏ゼロ、親からも愛されたことのない今日子には思いも及ばなかったのだろう。

なお、天堂きりんの原作では星名は今日子のネックレスを奪って捨ててしまい、さらに首筋にキスマークをつけまくって吉崎に会えないようにしてしまう。かなり入念かつサディスティックだ。


明かされる星名の過去


星名の母親(岡江久美子)は、かつて星名の“本当の”父親と浮気していた。浮気相手との子どもを生み、夫と育てていたのだ。今どきの言葉で言うところの「托卵女子」である。星名の父親が星名の顔を見てはイラついていたのは、自分の子ではないという確信があったからだろう。だからといって、絶対に子どもに手を上げてはいけないのだが。

星名の母親は、夫の暴力を見てみぬふりしていた。そして、彼女は星名の本当の父親を刺殺してしまう。
2人の間にどんないざこざがあったかはまだわからない。「全部私が悪いの」と母は言うが……。星名のもとには母から絶縁を告げる手紙が届く。それと同時に、今日子も意を決して星名に絶縁を迫っていた。

「星名さん、わ、私、もう、星名さんから離れたいんです。お願いします、お願いします、お願いします!」
「わかった。
そのかわり、最後に1日、俺に付き合えよ」

今日子の「もう私を解放してください」という言葉と、母親からの手紙に書かれていた「今後一切、かかわらないでほしいのです」という言葉が、星名の中でオーバーラップする。星名は今日子に1日、デートに付き合ってくれれば要求通り解放すると告げる。

「本気で逃げたいなら、俺を殺せ」

デートの最中、今日子の膝枕で寝そべりながら、彼女の手を自分の首に導く星名。しかし、今日子には星名を肉体的に殺すことはもちろん、心の中でも殺すことはできなかった。学生時代、「俺は逃げないよ」と抱きしめてくれた記憶。行き場のない自分を受け入れてくれた記憶。
それらがある限り、今日子は星名を心の底から嫌うことなどできない。

星名が自らの過去を今日子に語り始める。なぜか立呑チェーン「晩杯屋」で……!

星名は学生の頃、刑務所に入っていた母親に面会に行ったが、その翌日、母親は刑務所で自殺未遂を図ったのだという。何度も登場する、星名が泣きじゃくっていた回想シーンはその日のことだ。星名は泣きながら今日子に「俺だけのために生きてくれよ」と言い、今日子は「生きます!」と答えて星名を抱きしめる。

つまり、星名は今日子を母親の代替物として求めていたのだ。
「俺だけのために生きてくれよ」とは、母が子に注ぐ無償の愛を意味している。星名が今日子に再三再四ハラスメントを続けていたのは、幼い子がダダをこねることで母親の愛情を確かめる行為によく似ている。そう考えれば、星名が今日子の肉体を一切求めないことも合点がいく。

しかし、星名の告白は今日子にまったく届いていなかった。まぁ、星名の説明が明らかに足りないのだが……。逆に星名の厭世的な人生観にドン引きした今日子にあらためて絶縁を告げられ、星名は一人で「死にてぇ……」と頭を抱える。誰よりも深く“呪い”をかけられ、身も心も爪の先までみっしりダークサイドに染まってしまった男。

ところで、星名にはもう一つ原作ですでに語られている重要な秘密がある。ドラマでどのように活かされるのか注目だ。

ハンバーガーにナイフをぶっ刺す女・飯田



星名に何度も抱かれた挙げ句、利用価値がないとして捨てられ、今日子に猛烈に嫉妬する女・飯田(石橋杏奈)の行動にドライブがかかってきた。

今日子を呼び出して星名との関係を問いただしながら、ハンバーガーにナイフをドカッと突き立てる! ハンバーガーにナイフをぶっ刺したまま、「あなたって本当に気持ち悪い人ね」と今日子に言い放つが、そのときの今日子の表情が「お前にだけには言われたくないわ……」と言っているように見えた。

さらに今日子が星名の部屋を飛び出てきたところを待ち構え、「最低!」とバッグで叩きまくった挙げ句、「絶対、地獄に突き落としてやるから」と捨て台詞を吐いて去っていく。こんな同僚がいる会社、絶対嫌だ……。

結局、今日子の希望は通り、星名からは解放され、堀田(瀬戸朝香)や八木(鈴木紗理奈)らのプロジェクトに残留が決まる。人気タレント、上藤アイカ(石田ニコル)の担当は飯田が務めることになって安堵する今日子だが、タレント絡みのプロジェクトをあんなサイコな人に任せていいのだろうか? このあたりに今日子の視野の狭さ(とりあえず自分と自分の狭い周囲が良ければいい)が図らずも出てしまっている。

第8話の最後には、吉崎のもとに今日子が星名のマンションに入っていく動画が送りつけられてくるが、これは絶対に飯田の仕業。今話のエクストリーム担当は、今日子でも星名でもなく、飯田だった。演じる石橋杏奈は、口元のあたりがなんとなく幸薄そうで、今回のドラマはハマリ役。お嬢様育ちの底が浅い狂気を見事に演じている。原作の最新話で飯田は星名からエゲつないことをされているんだけど、映像化されるんだろうか……。

さて、第8話ではまったく存在感がなかった吉崎だが、今夜放送の第9話では飯田の妨害にも負けずに愛を貫くことができるのだろうか? 星名の“呪い”を自力で突破したように見える今日子は、もう一つの大きな“呪い”を振り払うことができるのだろうか? そして、母からも今日子からも見捨てられ、さらにセクハラ・パワハラも告発されてしまう星名の運命は? 本日夜10時から。
(大山くまお)

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