深山大翔(松本潤)と、SEASONIIで“ラスボス”と目される川上憲一郎(笑福亭鶴瓶)の直接対決がようやく火蓋を切った。
第8話あらすじ
選挙を目前に控えた元文部科学大臣・藤堂正彦(佐野史郎)の選挙事務所で、毒物による殺害事件が起きた。事務所に送られてきた羊羹を食べた藤堂と妻の京子(森口瑤子)、後援会長の金子源助(原金太郎)、第一秘書の上杉の4人のうち、上杉が死亡し、京子は意識不明の重体になった。
事件後、羊羹の送り主であるニシカワメッキ社長・西川五郎(おかやまはじめ)が逮捕される。羊羹からは「セトシン」という毒物が検出されたが、科捜研の鑑定によってニシカワメッキが所有するセトシンと成分が一致すると判明したのだ。
しかし、深山には気になる矛盾点がある。そこで、斑目春彦(岸部一徳)は個人で鑑定を行う元科捜研・沢渡清志郎(白井晃)を連れてきた。科研より高精度を誇る沢渡の機器で再鑑定したところ、羊羹のセトシンとニシカワメッキのセトシンは別物であることが明らかになった。
裁判官・鶴瓶、裁判員制度を悪用する
斑目法律事務所は毒殺の謎を暴くために奔走する。……ぶっちゃけ、このドラマの見どころはここじゃない。ミステリーとして捉えると、『99.9』のトリックは決して難解ではない。それでいい。
では、今回の裁判で裁判長を務める川上が行った2つの「誘導」を振り返ろう。

(1)裁判員を誘導
科研より微妙な部分の判別が可能な沢渡による鑑定結果を提出した深山。しかし、2つの結果を前に裁判員らは困惑してしまう。ここで、川上が動く。
「鑑定に関しては見解が分かれても当然でしょう。検察側は一致してると言い、弁護側は一致してないと言う」
「鑑定結果以外の状況から有罪か無罪かを判定したらどうでしょうか」
今まで採用していたものより優れた方式が開発されると、裁判所としては困るのだ。最高裁判所・事務総長の岡田孝範(榎木孝明)は危惧している。
「沢渡の方式の方が正しいということになったら、今までの判決の信頼性が大きく揺らぐことになる」
逆に言うと、今回は出る杭を打つチャンス。裁判員を誘導することで、精度の高い鑑定方式の重要性を川上は打ち消した。この男にとってすれば、赤子の手をひねるようなものだ。
(2)証人を誘導
「事件前日、自宅で木箱入りの羊羹を見た」と証言するために出廷した京子だったが、彼女の証言に曖昧な部分が見えるや、すかさず詰めにかかる川上。
「箱の上のラベルの色を覚えておられますか? 柄は覚えていますか? もしかして、病み上がりに弁護士さんが訪ねて来られて、愛人の話をされて、動揺して『羊羹の箱があった』と思い込んだんじゃないですか?」
検察を援護するような質問を連発し、「自信なさげな京子」「弁護士に強く誘導されて出廷した京子」という印象を裁判員らに植え付けた。裁判官の誘導で引っ張られることもあるのが「裁判員制度」ということか。
裁判前、川上は岡田に宣言している。
「ええ判決させてもらいます(微笑)」
川上の言う「ええ判決」とは、公正な判決のことではない。裁判所の面子や上からの意向を汲み取って導き出される判決のことである。
松本潤が笑福亭鶴瓶に宣戦布告
巧みに裁判員を誘導し、思う通りの判決に導いた川上。西川には有罪が下り、深山は敗北した。……が、深山自身が事実を見つけ出し、弁護側は2審で逆転無罪を勝ち取った!
「藤堂逮捕」を報じる新聞を手にした川上が、怖いのだ。クシャクシャに握りつぶし、鬼のような表情で投げ捨てるサマ。「公平に裁いてる」なんて、どの口が言うのだろう?
西川が無罪を言い渡された後、「良かったやないか」と言いながら弁護団へ近付いていく川上。プライドと出世欲の高い川上だ。自分が下した有罪が覆される事態に腹わたが煮えくり返っているはずだが、表情は笑顔。
川上に向かって、憮然とした表情の深山が歩き出した。
川上 フッ、なんや(笑)?
深山 最初から……事実は一つでしたよ。
川上 ……!(笑みが消える)
両者の対立構造が、いよいよ鮮明になった。「ええ判決」へ導こうと画策し続ける川上に、事実のみ求める深山が宣戦布告したのだ。SEASONI最終話で、大友修一(奥田瑛二)に「冤罪事件で加害者にされた人間も犯罪の被害者なんだ」と言い放った時と同じ表情で。
本日、このドラマは最終回を迎える。死刑囚の「再審請求」を巡り、再び深山と川上が法廷で直接対決する。
“笑わない目”から、プライドの高さがだだ漏れしている川上。深山との二度目の対決に、背水の陣で挑んでくることは間違いない。弁護士を目の敵にした裁判官が裁く法廷というのも、信じられない話だが……。
『99.9-刑事専門弁護士-SEASONII』の最終話は、本日9時からスタート。
(寺西ジャジューカ)