秀作「何の見返りも求めず、無償の愛と豊富なたんぱく質を人間に提供してくれる鶏。そんな鶏のような人間に、僕はなりたい!」

綺麗な顔の青年が、鶏に囲まれひとり天啓を受けた。


秀作(山田涼介)の手には産みたての卵。ジャ、ジャ、ジャーンと火曜サスペンス劇場のテーマ曲。
褒められもせず苦にもされない、鶏のような生き方。それが秀作のたどり着いた答えだった。
最終回「もみ消して冬」ジャニーズとして山田涼介はどうあるべきか、ドラマをヒントに考察してみた

3月17日(土)放送のドラマもみ消して冬 ~わが家の問題なかったことに~(日本テレビ系列)、最終回。

取り違えられたこどもである北沢秀作と吉田邦夫(加藤諒)は、お互いの家を入れ替えて生活していた。一週間の期限が過ぎても、居心地が良くて2人とも元の家に戻ろうとしない。
そんな状況で、北沢家の父・泰蔵(中村梅雀)がミランダとの密会写真をネタに金銭を強請られた。いくら感謝をされなくても育ててくれた父親には報いるべきだと、秀作は写真が保管してある探偵事務所に侵入。そこで邦夫と鉢合わせ、ミッションは失敗。秀作は逮捕されてしまう。

もみ冬’S PRIDE! コメディドラマの矜持



秀作「最小の犯罪で最大の成果をあげる。これも北沢家の流儀、KITAZAWA'S PRIDEだ!」

探偵事務所に侵入する際、秀作は北沢家の流儀を守り、鍵のかかったドアには触れず窓から入っていった。
秀作が守ったそのドアを派手に壊して入ってくる邦夫。

後輩の尾関(小瀧望)に取り押さえられ、逮捕された秀作はこれまでの罪を償う。
「コメディとはいえ、家族のためとはいえ、犯罪はどうなんだい」。それを、最終回できちんと払拭した。
『もみ冬』は、律儀なコメディドラマだった。

マエヲムケ! 山田涼介へのエール



そして、『もみ消して冬』はやっぱり山田涼介のドラマだったと思う。

秀作役の山田涼介は、ジャニーズ事務所のアイドルグループ・Hey! Say! JUMPのメンバー。結成当初からセンターを務め続けている。

Hey! Say! JUMPは、いま立ち位置を模索しているグループだ。
TOKIOをはじめとした先輩グループほどは、まだ一般に個人名や特徴が認知されていない。下からはKis-My-Ft2やSexy Zone、ジャニーズWESTなどの後輩グループが続々と台頭してきている。
「この先、JUMPはどんなポジションを取ればいいのか?」と、心配しているファンも多いそうだ。


ドラマを見ていても、周囲の人たちと比較され続ける秀作の様子に、山田涼介本人を取り巻く環境を考えてしまった。

秀作の恋人となった里子(恒松祐里)は、最初はセクシーで危険な香りがする兄・博文(小澤征悦)のことが好きだった。ワイルドな博文は、いまやジャニーズと人気を分けるEXILEを表しているように見える。
また、執事の楠木(千葉雄大)も秀作のライバルとして登場した。「可愛い系アラサー男子枠」で認知と人気を誇る千葉。同じ枠に、Hey! Say! JUMPの伊野尾慧らがいる。

さらに、ジャニーズが俳優としてやっていこうとしたとき。歌舞伎界やお笑い界など、さまざまなジャンルから参入してくる「すでにキャラクターを確立した人たち」とも戦っていかなければいけない。
本業を持ちながら俳優としても評価されている。それが、泰蔵役の中村梅雀や手毛綱役の児嶋一哉だ。邦夫役の加藤諒のような個性派俳優を目指すのは、まだアイドルとして生きていくならば今は難しい。

もみ消さなければいけないトラブルに翻弄されながら、自分のいるべき場所を探してきた秀作。

それは、そのまま山田涼介やHey! Say! JUMPが「どんなポジションを取るべきか」と試行錯誤している姿に重なって見えた。

秀作が最後に見つけた自分の居場所は、泰蔵、博文、知晶(波瑠)をはじめとした家族の輪の中だった。周囲の声に惑わされず自分の意思を持って、家族と認め合って暮らす。
山田涼介、そしてHey! Say! JUMPも、本人たちの「こう在りたい」という強い意思が周知されたときに、きっと今まで以上に世間に認められる存在になる。

そんなエールまでも感じてしまったあたたかい最終回だった。

(むらたえりか)

日テレオンデマンドHuluにて配信中

ドラマもみ消して冬~わが家の問題なかったことに~
出演:山田涼介、波瑠、小澤征悦、中村梅雀、小瀧望(ジャニーズWEST)、恒松祐里、ほか
脚本:金子茂樹 
主題歌:Hey! Say! JUMP「マエヲムケ」(ジェイ・ストーム)
オープニングテーマ:もみ消して冬~24のカプリスfeat.高嶋ちさ子 (作曲ニコロ・パガニーニ)
チーフプロデューサー:福士睦
プロデューサー:櫨山裕子、秋元孝之
演出:中島悟
制作協力:オフィスクレッシェンド
製作著作:日本テレビ
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