第25週「さらば北村笑店」第143回 3月22日(木)放送より。
脚本:吉田智子 演出:鈴木 航

連続朝ドラレビュー 「わろてんか」143話はこんな話
召集令状が届き、4日後に入隊となった隼也(成田凌)と、てん(葵わかな)は何年かぶり(6年以上)に再会する。
隼也に召集令状が
再放送中の朝ドラ「花子とアン」の146話では終戦を迎え、主人公たちが窓ガラスに貼った、割れたときの飛散対策のテープ(紙)を剥がしていた。一方「わろてんか」では、戦争まっただ中、窓ガラスが米印だらけになっている。
召集令状が実家(てんの家)に届き、急ぎ風太(濱田岳)が、隼也に届けに向かう。なにしろ、4日後に入隊だから、早く知らせないといけないうえ、てんと隼也をなんとか会わせたいからだ。
風太「いますぐ行ってくる」
トキ「どこに?」
風太「川崎や」
「隼也に電報打っといてくれ」
トキ役の徳永エリの芝居が迫真なので、「どこに?」という台詞が妥当か否か、あまり気にならなかった。
電報が打てるということは住んでいる場所を知っているはずだが・・・勢いで理屈を乗り越えてしまうこともできるという良い見本である。
ついに、土曜日から進出してきた幽霊
隼也が召集されると聞いて、幽霊藤吉(松坂桃李)が出てきた。
隼也には“幸運の女神様”がついている(てんのこと)から大丈夫。だから、「ん廻し」でもして励ましてあげろとてんに言う。
それから、てんといっしょに、落語の「ん廻し」を楽しげに諳んじる。
運がつくように「ん」がつく言葉を並べる落語。
そうか「てん」も運がつく名前だ。てんは、みんなの幸運の女神さまだったのだ。
それにしても、幽霊。
139話のレビューで、幽霊がレギュラー化する朝ドラは斬新だと書いた。
102話のレビューでは、死者と共生する様々な物語についても書いた。そこで、坂元裕二の「anone」で
死者と登場人物が会話するエピソードを描いていると紹介したが、3月21日放送の「anone」最終回でも、幽霊が登場し、当たり前に日常生活をしているふうに書いてあった。
前にも書いたけれど、亡くなった方を思い出し、語りかけることは誰しもあることだと思うから、そういう思いを可視化した、死者と共生するドラマがこれからもっと当たり前になってもおかしくはない。
そういえば、「朝ドラ殺人事件」(12年 秋元才加主演)という朝ドラをモチーフにして、幽霊が朝ドラのセットに住み着いてしまう話もあった。
ちょうど、お彼岸でもあることだし、藤吉のいつもより多めの登場はあってもいいのではないだろうか。
藤吉が「(幸運の女神は)おまえのことや」と、聞き逃してしまいそうなほどさらっと言い、てんの表情も微妙なうえあまり長いこと映さない。そこにふたりの、年齢を重ねたからこその羞恥心があって、とても良かった。これが、若いときなら、キャッキャウフフのシーンになるだろう。
みんなが隼也のために
おトキ、キース(大野拓朗)、アサリ(前野朋哉)が隼也のために、食べ物をもってきて、てんは祝い膳を作る。
「卵もろうてきたで〜」と藁に縦詰めされた卵を差し出すとき、いつものネタのメガネから指を出す仕草をしている大野拓朗。結果的に横向きのショットが使用され、ほとんど映ってなかったが、キースの特徴をいつまでもちゃんとやっているところに好感がもてる。
母子水入らずで祝膳を食べていると、リリコ(広瀬アリス)がやって来て、隼也を抱きしめ、てんもこうしたいんじゃないかとからかう。でも意地を張るてん。
隼也が召集されたら、建物疎開しないとならないこともあって、つばき(水上京香)と藤一郎(南岐佐)をてんの家に迎えることになる。初孫にはじめて会ったてんは愛情ダダ漏れになるだろうか。
それにしてもお金
風太は、隼也に、お金を渡す。141話でも、てんが芸人に餞別を渡していたし、伊能にもどーんと渡航費を出した。通天閣も思い切って買う(もう燃えてしまったけど)。なにかと言うと、お金が出てくる。経済ドラマではないが、何をするにもお金が必要というところだけは繰り返し描き続けている。ラブと笑いとお金のドラマだなあと思う。
(木俣冬)