連続テレビ小説「半分、青い。」(NHK 総合 月〜土 朝8時〜、BSプレミアム 月〜土 あさ7時30分〜)
第2週「聞きたい!」第7回4月9日(月)放送より。 
脚本:北川悦吏子 演出:田中健二
「半分、青い。」7話。いい話だけど、マグマ大使引っ張りすぎ?
「永野芽郁 in 半分、青い。」PHOTO BOOK 東京ニュース通信社
別冊付録カレンダーがついている。4月〜9月まで。ジャスト「半分、青い。」放送期間!

7話はこんな話


ブッチャー(大竹悠義)に名前をからかわれた鈴愛(矢崎由紗)は怒ってゴミ箱を投げつける。だが、律(高村佳偉人)が代わりにぶつかってしまう。


マグマ大使からの


第2週はおもむろに「マグマ大使」からはじまった。
この作品はドラマの時期的にふさわしくないのではないか論争が第一週早々勃発したが、父・宇太郎の影響で知っている「マグマ大使」(手塚治虫の漫画であり特撮ドラマ化もされた)という理由があった。
人間のこどもマモルが笛を吹くとマグマ大使が現れる設定を意識して、鈴愛はいつも笛を吹いて律を呼んでいる。
そしてこれは、主人公・鈴愛が「律〜」と笛を吹いて呼ぶところとつながる。
笛は、他者を必要とする切実な声だ。

鈴愛が吹くのはふつうの笛だが彼女には、特撮ドラマの独特な音に聞こえている。
笛の音、5話で川を超えて糸電話で届ける「律」の名前、
1話ですでに語られている、鈴愛の片耳が聞こえない設定と、聴覚を意識したモチーフが連なって、
7話の最後、キーンっという音と、律の「鈴愛」という声が変わって聞こえるところへと繋がる。
美しい構成の見本のようだ。
サブタイトルは「聞きたい!」。

原田知世のゴア


晴(松雪泰子)は、3回笛吹いて呼ぶなんて・・・と恐縮する。当然の反応である。
だが意外や、和子(原田知世)は「光栄です、マグマ大使」と言う。
喘息のためコンプレックスがあるが、マグマ大使に見立ててもらって自信がもてているのだと。
そこで、和子(原田知世)が十八番であるゴアのモノマネをして見せる(かわいい)。

頭はいいけれど、ちょっと変わったとこがあって、「お友達できにくいです」(和子の台詞は短いセンテンスが頻出するのが特徴)と心配な律に、友達づきあいして夢を持たせてくれたことを感謝する和子。
どうやら律は、頭が良すぎて少々屈折したところがあるようで。

かぐや姫の気持ち


その日に国語の授業で、正しいとされる答えではないものに回答し、豊島先生(佐藤夕美子)を怒らせてしまう。
その設問はこれ。
かぐや姫が月に帰ってしまったとき、残されたおじいさんとおばあさんの気持ち
1.さみしかった  2.かなしかった 3.せつなかった  4.せいせいした 
1〜3は正解のサービス問題と自負する先生の姿に、教育問題への皮肉が感じられる。

鈴愛は、律が4と回答した意図を、かぐや姫が大好き過ぎて心配し過ぎることから開放されたのではないかと言ってかばう。
「いや〜ちょっと違う」と苦笑する律。おそらく律は、教育問題への反抗だったのではないかと思うのだが・・・

とはいえ、鈴愛によって、問題はうやむやに。
頭のいい律と、素朴な鈴愛。お互い補い合って、いい感じである。
この時点では、身体的に弱い部分をもった律が、鈴愛によって救われているのだが、今後、彼女が失聴することによって、状況は一変するわけだ。

「かぐや姫」というと、先日亡くなった高畑勲監督を思い出して、さみしくなった。
惜しすぎる才能。
三途の川を戻ってきてほしい。

鈴愛はいつも他人にために


鈴愛は他人思いである。
ブッチャーに名前をからかわれ、怒りのあまり、ゴミ箱を、ブッチャーにぶつけようとして、かばった律に当たってしまい、一悶着。
鈴愛は、お母さんがつけてくれた名前だから。
律がかっこいい名前で負けたくなくてつけた名前だから。
名前のことを悪く言われると、お母さんのことを思って、怒るのだ。

でも、ブッチャーが替え歌にした、ばんばひろふみの「SACHIKO」は、
「思い通りに 生きてごらん」という歌詞の、聞く人への応援歌。
そして、スズメという名前も案外悪くない。「花子とアン」や、他局の昼ドラ「越路吹雪物語」で歌われた「愛の讃歌」のエディット・ピアフのピアフはフランス語で「(子)スズメ」である。
究極の愛を歌った女性歌手の名前と同じというのはなかなか素敵ではないか。
(木俣冬)
編集部おすすめ