第4週「夢見たい!」第19回4月23日(月)放送より。
脚本:北川悦吏子 演出:土井祥平
19話はこんな話
明治村で、西高新聞部の小林(森優作)と初デートをすることになった鈴愛(永野芽郁)は、律(佐藤健)のアドバイスに従って最初はおとなしくしていたが、次第に本性を露わにしてしまい・・・。
公衆電話の10円切れ
明治村の厳かな教会に入る鈴愛と小林。
左耳が聴こえないことを鈴愛が明かすと、「ぼくが守りますんで」「鈴愛さんの左耳になります」と聖堂の前で小林は誓う。
小林がおとなしいので会話がもたなくなった鈴愛は、律に電話して、さらなるアドバイスを求めるも、テレカも10円も足りなくなって、切れてしまう。
先に出た和子(原田知世)の話が長いため切れてしまうというのが、和子の話が長いことを9話であらかじめ語られてあったから、説得力がある。
いまもケータイの充電が切れることはあるとはいえ、この時代(80年代)は、外出先で公衆電話を探すのも一苦労、充電切れは、テレカや10円切れになる焦りの大きさの比ではなく、連絡が取れない絶望感は十分ドラマになり得た(いまなら、LINEの既読無視、何回かけても「電源が入ってないためかかりません」になるようなものか)。
幸い、カセットテープの中身について聞くというアドバイスがかろうじて途中まで聞こえたので、その話題でしばし保つ。

原作:金城一紀 脚本:宮藤官九郎 監督:行定勲 出演:窪塚洋介、柴咲コウほか
主人公の窪塚洋介が落語を聞いている設定だった。
この作品は、生まれた国の違いで分け隔てられることに対して抗う青年の話。
小林のカセットの中身は、落語だった。
その落語「寿限無」は、こどもにめでたい名前をつける話、晴(松雪泰子)が鈴愛となまえをつけたことを
彷彿とさせる。
この回も快調に「夏目漱石の縁側」「おまえはもう振られている」「千代の富士テレカ」「エルム街の悪夢」などさりげなく記憶をくすぐる固有名詞が散りばめてあったが、落語を聞いている高校生というと、「GO」(01年)の窪塚洋介を思い出す。
恋は玉砕
だが、そのあとが、いけない。
鈴愛が、食事中、つけ耳をつけ、金沢監獄ではしゃぎまくり、世界の拷問に目がないと喜々として早口でまくしたて、自分の考えた拷問を図解して見せるなどしたことで、小林の鈴愛に対するイメージは木っ端微塵に砕け散る(ほんとうに砕け散った画像に)。
耳が聞こえない鈴愛が、音の発生場所がわからず、「キョロキョロしているところがかわいい」と感じた小林。
彼は、ハンディキャップを弱さ及びかわいさと捉えていたのだろう。これが一般的な感覚で、でも「半分、青い。」は、そういう偏った考えを覆す物語だ。
本来、一面的な考えに違う側面から光を当てる仕事が、新聞をはじめとしたジャーナリズムであるのだが、新聞部の小林はそういう現実を知らない人物として描かれている。教師といい、新聞部といい、従来正しいとされている側の意外な欠落を「半分、青い。」は描いているような・・・。
「おまえはもう死んでいる」の「北斗の拳」のアニメは84年、
監獄とか拷問とかとは直接関係ないけど「蝋人形にしてやろうか」の聖飢魔II「蝋人形の館」は86年、鈴愛は、きっとこういうものを見聞きして育っているんだなあと感じる。
日光浴する律
鈴愛がデートしている間、勉強もせず、遊びにも行かず、布団も干さず、亀のフランソワと戯れている律。
サングラスをして、英単語を暗記しながら、フランソワの甲羅干しをしている姿は、フランス映画のよう(言い過ぎか)。
ブルーのストライプの壁紙の律の部屋は、ふつうの四角形ではなく、五角か六角形で、そこからして、彼の特異さが出ている。
ぼーっとしていると電話がまた鳴って、でもそばやの出前の注文の間違い電話だった。
そのあと、鈴愛はレストランで「ナポリタン」を頼む。麺つながり。
サンバ衣裳の件は解決
サンバの衣裳300着×4600円、計138万円を買わされたと、瞳(佐藤江梨子)にかんかんになって怒る幸子(池谷のぶえ)だったが、見積もりだったことがわかってほっとなる。一件落着。
全部入り
どうやら、小林に振られてしまったらしいことを、【ともしび】で、律、ブッチャー(矢本悠馬)、菜生(奈緒)に話す鈴愛。
「何が悪かったか」「全部」と、「鈴愛はお化けのいないお化け屋敷が好きなんだ」とすべてわかったように言う律に「憎らしいような頼もしいような嬉しいような悔しいようななんだかよくわからない感じで、でもお好み焼き“全部”乗せはやっぱり美味しい」(ナレーション・風吹ジュン)が繋がっていた。
全部まぜこぜになった気持ちを、お好み焼き全部乗せで表現するのは、非ベタファー(良いメタファー)だと思う(ベタな暗喩を「ベタファー」と呼んでアーカイブしていく運動実施中です)。
監獄や拷問に興味があるのに、ホラー映画は苦手な鈴愛を不思議がるブッチャーに、律が「鈴愛はお化けのいないお化け屋敷が好きなんだ」というのは、監獄や拷問そのものに興味をもったり好んだりしているというより、その構造とかハード面に興味があるということを律はわかっていて、そういうスタンスからして、律と鈴愛は価値観が似ているのだと思う。
(木俣冬)