ワコール、キリンビバ。炎上する「名ばかり女性活躍企業」たち

ワコールのTwitter公式アカウントの一つ「ワコールブランド」が、講談社のファッションWEBメディア「FORZA STYLE」に掲載したワコールのスポンサード記事(炎上直後に削除)を紹介するツイート(5/18にようやく削除)をしたところ、その内容が女性差別・女性蔑視だとして炎上しました。

女性の性をモノ化するワコールの記事


記事の内容は、FORZA STYLEの編集長を務める干場義雅氏と、ワコールのMD(マーチャンダイザー)池田晋平氏の対談モノで、干場氏が以下のような酷い女性差別や女性蔑視発言を連発していました。

・モチ肌の女性に抱かれているような感じ
・確かに触るとひんやり冷たくて、すごく気持ちいいですね。
東北美人に後ろから抱かれているような感じ。
・ブラジャーがレースとかでボコボコってしてると、あ、この人レースのブラジャー着てるんだなってわかっちゃう。良いとこでもあるんですけど、楽しみにしときたいじゃないですか。

女性の性を男性の購買意欲をそそるための「モノ」として用いて、女性の下着もエロの目線でしか捉えていないわけですから、批判が殺到するのも当然でしょう。実際、インターネット上では「セクハラ」「ロッカールームトーク」「猥談」という指摘が相次いでおり、中にはワコールの不買運動を決めた人もいるようでした。

FORZA STYLEは、「Web magazine for smart 40's」というキャッチコピーを用いていますが、干場氏の発言はゲスなセクハラオヤジの発言でしかなく、smartとは完全に真逆のことをしています。いくら質の高いファッションで外見を着飾ったところで、女性蔑視を露呈すれば人として醜いものです。ワコール側も、Twitterに謝罪文章は出したものの、ブランドイメージを大きく毀損したことは間違いないでしょう。

前代未聞の顧客叩きをしたキリンビバレッジ


女性に関連する広告が炎上するケールは枚挙に暇がありませんが、最近ではキリン・ビバレッジの『午後ティー女子』のイラスト広告が炎上したケースがあったかと思います。イラストには若い女性を小馬鹿にしたような表現が散りばめられており、大きな批判を呼ぶことになりました。

ハフィントンポストの報道によると、キリン株式会社コーポレートコミュニケーション部の担当者曰く、炎上したイラストは「親しみを感じていただくために」作ったらしいのですが、女性を傷付ける行為を親しみと捉える人の代表例と言えば、セクハラ上司か、DVバタラー(加害者)か、ストーカーなのですが、社内にそういう感覚の人しかいないということでしょうか?

炎上する企業はどうも過去の案件から学習しているとは思えず、あとからあとから同じ轍を踏む企業が続出する状況には、いつも驚かされます。

就職・転職する前に女性比率をチェック!


なお、こういう炎上の事例が起こる度に、私は必ずその企業の女性社員比率、女性管理職比率、女性役員比率を調べるようにしています。というのも、こういう女性に関連する炎上案件は、高確率で「オトコ村」の会社が起こすからです。

確かに、「社内で女性社員にチェックしてもらった」というケースもあるようですが、それでは効果が無いこともしばしば。
というのも、男性が意思決定権者のポストを牛耳る「オトコ村」にいれば、出てきた案に対して反対の意見を述べるのが難しい場合や、女性自身もその価値観に染まってしまっている場合も多々あるからです。ですので、やはり「オトコ村」か否かを最も簡単に知れる女性比率は重要な意味があります。

厚労省にはそれらの数値が分かるデータベースがあるのですが、キリン・ビバレッジを調べてみたら目を疑いました。女性役員比率は16人中0人で0%、課長級の管理職は掲載無しですが、係長級ですら66人中0人で女性比率0%となっています。これが本当であれば、オトコ村の極みと言えるでしょう。データがやや古い可能性はありますが、女性活躍が叫ばれる昨今でも、0%を維持出来るその神経を疑ってしまいます。

キリン・ビバレッジのヒット商品「世界のKitchenから」シリーズは、若い女性社員のアイデアによるものらしいのですが、このデータを見る限りは、仮に女性が活躍しても、手柄の多くは男性のものになる構造としか思えません。

また、今回炎上したワコールも、全体に占める女性社員比率は9割近くに及ぶにもかかわらず、女性管理職は323人中64人で僅か20%、女性役員比率も31人中3人で1割にすら届いていない状況のようです。

ワコール、キリンビバ。炎上する「名ばかり女性活躍企業」たち


一応管理職比率は近年上昇しているようですが、いまだに1割程度に過ぎない男性が組織の上層を牛耳っているということは、強烈な男性支配社会が依然として残ったままであると考えるのが妥当でしょう。また、そういう環境では男性の出世倍率は非常に緩く、女性は熾烈な争いを強いられるわけで、まるで男性のキャリアパスにはエスカレーターがあり、女性にはガラスの天井だらけという構造である可能性も高いと考えられます。


「名ばかり女性活躍企業」が増えても意味は無い


このデータベースは、今後就職や転職をする際には是非参考にして欲しいサイトですが、あろうことかキリン・ビバレッジは「えるぼしマーク(女性の活躍推進に関する状況が優良な企業を厚労省が認定する制度)」の認定を受けています。

係長級ですら女性比率0%で、女性蔑視的な広告炎上も起こして、謝罪文も自分たちの非を理解しているとは思えないのですが、どのあたりが女性活躍優良企業なのでしょうか?  厚労省では定量的な面をメインに認定基準としているようですが、認定基準に欠陥があるとしか思えません。

安倍政権が「女性活躍」を叫び、2016年には女性活躍推進法が施行されたものの、実態は「なんちゃって女性活躍企業」や「名ばかり女性活躍企業」が後を絶たない状況で、非常に由々しき事態と言えるでしょう。
現場も管理職もともに男女が等しく活躍できる環境が整って初めて女性活躍企業と言えるのではないでしょうか?

「女性差別企業大賞」始めました!


そこで、唐突ですが、現在私が立ち上げを準備しているジェンダー平等を目指すNPO法人で、今年から「女性差別企業大賞(仮)」を実施することにしました。ブラック企業に不名誉な表彰をすることで、労働環境の改善につなげようという「ブラック企業大賞」が既に毎年実施されていますが、この方式を女性差別問題でも行おうというものです。

前述のNPO法人が運営事務を担い、選考委員には大学のジェンダー論の教授や、女性差別・蔑視問題を得意とする弁護士、フェミニズム関連の話題が得意のオピニオンリーダーやジャーナリストにも加わって頂く予定です。また、ブラック企業大賞と同様に、WEBで一般投票も受け付けようと思っています。

正式にキャンペーンを始める時期が来たら改めて発表しようと思いますが、今後女性差別をしている企業だと思った際は、是非「#女性差別企業大賞2018」というハッシュタグをつけて、SNSで投稿して頂きたいと思います。人事における問題でも、広告・マーケティングにおける問題でも何でも可です。また、企業に限らず、役所や公益法人や教育機関等も可です。投稿と表に出ていないケースの両方からノミネート企業を選ぼうと思います。

もちろん、過去の事件を風化させないためにも、「#女性差別企業大賞2017」や「#女性差別企業大賞2016」等の投稿もお待ちしています。しっかりとこれまでの事例を見直せることによって、企業の人事や広告の担当者にとって「悪いお手本集」に出来ればと思っています。

なお、NPOのメンバーとして企画に携わりたい方や、一緒にプロジェクトを推進してくださる団体、選考委員として推薦したい方のご紹介等もお待ちしておりますので、わたくしの公式サイトよりご連絡ください。是非一緒に生きやすい平等な社会にして行くことが出来れば幸いです。

(勝部元気)
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