このドラマには毎回、吉高演じる竹村凛々子がお酒を飲むシーンが出てくるが、先週放送の第6話の冒頭でも、彼女は同期の結婚披露パーティーで久々に集まった友人たちとグラスを交わしていた。
凛々子が親友と対立しながら事件の真相をつかむ
凛々子と美咲が対立したのは、とあるオレオレ詐欺事件をめぐって。事件の被害者は現金を渡す前に詐欺と気づくと警察に通報、それとは知らずにカネを受け取りに来た「受け子」の大学生・浅田(岡山天音)は、待ちかまえていた警官たちに現行犯逮捕された。
送検され、横浜地検の港南支部で凛々子から取調べを受けた浅田は、知らない男に頼まれてカネを取りに行っただけで、詐欺に加担しているとは知らなかったと主張し、反省の態度を示す。このあと、浅田の担当弁護士として美咲が港南支部を訪ね、凛々子に彼の釈放を求めてきた。「だまされて詐欺に加担された彼も、ある意味で被害者」とあくまで浅田を守ろうとする美咲に対し、凛々子はまだ釈放できるだけの材料がないと拒否。こうして二人は立場の違いから真っ向からぶつかり合う。
凛々子が浅田について洗い出しを進めるなかで、彼女の担当事務官である相原(安田顕)が押収物から何やらひらめくと、浅田の家を捜索。さらに彼が通っていた大学にも赴き、教員や学生から話を聞く。そこでわかったのは、浅田がバイトをしていないと言っていたにもかかわらず、高価な物を所持していたり、また同級生にカネを払って授業に代わりに出席させたりと、けっこう羽振りがよかったという事実だった。
凛々子たちが疑念を深める一方で、美咲は浅田と面会、弁護するための材料を集めようと、彼の数少ない友人としてクラスメイトの小林の名を聞き出す。ちょうどこのころ、世間には伏せられていた事件について、浅田の大学で噂が流れ始めていた。それを知った凛々子が慌てて調べると、ネットの掲示板でやはり小林の名を見つける。
先に大学に赴き、小林(上杉柊平)と会ったのは美咲だった。浅田をかばう小林に、美咲は検察で証言してくれるよう頼んで、そのまま別れる。だが、その直後に彼女は、偶然にも小林が電話で誰かと口裏合わせをしているのを目撃してしまい、そのまま彼を尾行する。一歩遅れて大学を相原とともに訪ねた凛々子は、美咲がすでに来ていたことを知ると本人に電話で確認。そこで美咲が口にした「私は大丈夫だから」との一言に、「美咲が『私は大丈夫』と言うときはいつも大丈夫じゃない」と危険を察知、急いで彼女を追いかける。
美咲は、小林が大学構内の立ち入り禁止となった建物に入っていくのを見て、そのあとをつけていった。
仲間の学生たちが全員容疑を認めたため、ついに浅田は追い詰められる。彼は、大学OBの小宮山(橋本禎之)に持ちかけられ、詐欺に加担して以来、簡単に大金が手に入ることに味を占め、犯行を重ねるようになる。そのうちに友人たちを仲間に引き入れ、役割を分担しながら日常的にオレオレ詐欺を繰り返していたのだった。
相原の鉄道知識が思いがけず捜査に役立つ
ところで、第4話のレビューで私は、鉄道ファンの相原が「時刻表トリックを見破って事件解決! なんてこともあるのだろうか」と書いたが、第6話では、彼のマニアックな知識が思いがけず、捜査の手がかりをつかむきっかけとなっていた。
それは、浅田からの押収物を確認していたときのこと。1枚の古い切符の貴重さに気づいた相原は、さっそく凛々子とともに彼の住む部屋を捜索、するとそこには高価な鉄道グッズがずらりと並んでいた。
その後、相原が浅田の仲間の小林を取り押さえたときには、不意にプロレス技をかけていた。彼はプロレスオタクでもあったのだ。普段は凛々子に口うるさく指導し、彼女からは陰で「小姑」と呼ばれている相原だが、これらエピソードからは、真面目な仕事人というだけでなく、多彩な趣味を持つ人間的な幅の広さがうかがえる。
相原には今回、クライマックスにも見せ場があった。事件の真相があきらかになったあと、先述したように取調べで「僕の人生はおしまいです」と言う浅田に、凛々子が一喝したあと、相原は静かにこう語りかけたのだ。
「ひとつ付け加えると、あなたの人生はおしまいなんかじゃありません。ちゃんと罪を償えば、人はちゃんとやり直せる。検事や弁護士はその手助けをするためにいるんですよ」
このセリフは、検事と弁護士は、ときには今回の凛々子と美咲のように立場の違いから対立することはあれど、罪を犯した者に対する役割は本質的に同じだということを、劇中の人物だけでなく視聴者にも気づかせてくれる。さりげなくこういうセリフが出てくるあたり、このドラマが丁寧につくられていることをあらためて感じさせる。
うざキャラの行動が意外にも凛々子を励ますことに
丁寧さといえば、登場人物の描き方にもいえる。今回でいえば、相原の趣味が意外なところで捜査に生かされたことのほか、今回初めて登場した凛々子の同期の検事・神蔵守(笠原秀幸)の役回りにそれを感じた。
神蔵と書いて「かんぞう」と読むこの男は、学生時代より凛々子に好意を抱きながら、空気を読まない性格で、結婚披露パーティーで久々に再会したときも彼女をうっとうしがらせる。その後、神蔵は赴任地の仙台に戻る前に、凛々子にもう一度会いたくて友人たちに飲み会を開いてもらったときも、ちょうど彼女が捜査で対立していた美咲も呼んでしまい、気まずい空気が漂った。
そんな神蔵だが、凛々子が美咲との関係で悩んでいるところへ、先のパーティーで同期みんなで撮った写真を送って、彼女の心を和らげる。神蔵を単にうっとうしいキャラで終わらせず、ときにはその空気を読まない行動が、他人の役に立つこともあるというふうに描いたところに、人間を一面だけで描かない丁寧さを感じた。
第6話ではまた、前回、凛々子が酔っぱらって先輩検事の大塚(三浦翔平)にキスをしてしまった事実をようやく知り、謝ろうとしたところ、逆に同僚たちに二人の関係を勘違いさせてしまう。本来、“事故”だったはずのキスがこういうふうに引っ張られると、今後、凛々子と大塚の関係に進展があるのかと思わせる。
恋愛ドラマとしての展開も気になる「正義のセ」。第7話は今夜10時から。予告では、相原が泣くカットが出てきたが、一体何が起こるのだろうか?
(近藤正高)
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