第20週「始めたい!」第117回 8月15日(水)放送より。
脚本:北川悦吏子 演出:土居祥平

NHK連続テレビ小説「半分、青い。」ソングブック すずめのうた ソニー・ミュージックダイレクト
117話はこんな話
カンちゃん(山崎莉里那)に漫画家だったことがバレてしまい、鈴愛(永野芽郁)はひさしぶりに絵を描いてみる。
五平餅合格
8月15日終戦記念日。厳かな祈りの日に、静かながら重いボディブローを受けた回だった。
それについては後述する。
仙吉(中村雅俊)五平餅修行に合格をもらった鈴愛。
そこへ、カンちゃんが帰って来て、手にしていたものに鈴愛は動揺する。
それは鈴愛の漫画「一瞬に咲け」の単行本だった。
さっそく鈴愛は律(佐藤健)に電話する。
114話で「昔漫画家だったんですっていやなんだよ」と鈴愛が言ったとき、
「律はこういうときいつも言葉少なで人の心に踏み込んでこない。まちがわない。そういうとこが好ましいと思ったり寂しいと思ったり・・・」だった律なのに、漫画家に挫折したことをかっこ悪いと思っている鈴愛に、
「まだそこか まだそこにおるんか」と鋭いお言葉。
言葉少なで、間違わない ところは合っている。
いつまでもそこにとどまっている鈴愛の心をいいタイミングで動かしたと言えるだろう。
鈴愛、動く
律にキレた(電話も切れた)鈴愛はひさかたぶりに、広告の後ろの白いところに漫画を描いてみる。
昔取った杵柄、デッサンの狂いなく描ける。こんなにうまいなら、絵の仕事続けとったら良かったのに、と思うけど、鈴愛にとっての漫画は律とのことも深く関わっているから、簡単ではないのだと思って見る。
そこに仙吉が来て、カンちゃんに絵を描いてあげたらいいと言うが、かっこわるいことが知られたくないと鈴愛は首を縦には振らない。
結果はどうあれ頑張ったことがかっこいいと励ます仙吉。これはユーコが100話で、やるとこまでやって神様におまえはダメだと言われた(諦めた)自分たちを讃えたことと似ている。
仙吉、名言
仙吉は、人間は大人になんかならない、ずっと子どものままと言う。
「競争したら勝ちたいし、人には好かれたいし、お金はほしい」
すごい。ものすごく正論だ。これには誰も反論できないだろう。
この欲望を堂々と言うことに羞恥心があって、なにかと言い訳してしまうのが人間だ。
でも、仙吉はけろっと言ってのけた。
晴(松雪泰子)が洞察していたように、仙吉は、草太のカツ丼が人気で、自分の居場所をなくして沈んでいたのだ。鈴愛は二号店の企画によって、そんな仙吉に五平餅でもうひと花咲かせるチャンスをつくった。
「競争したら勝ちたいし、人には好かれたいし、お金はほしい」
人間のどうしようもない欲望。
これがあるから争いは尽きることがない。
それを終戦記念日に。
なんてシニカルなドラマなのか。私は打ちのめされた。
ひとりひとりの欲望を、他者を損なうことなく実現するためにひとには
「アイデア」が必要だ。
宇太郎、「一瞬に咲く」を音読
滝藤賢一のリリカルな朗読。すばらしかった。ええ声やった
(木俣冬)