
一生懸命でまっすぐ、そんな熱血キャラだった桜木が、今作ではなんだかクール。物語の謎の部分を一手に引き受けているので、ミステリアスな雰囲気が出るのは仕方ないが、あまりにも“らしさ”がない。年齢を重ねて落ち着いたのかも知れないが、視聴者が1話から疑問に思い続けて、時間が経ちすぎて慣れて忘れてしまった「絶対零度である必要性がない」ということを改めて考えてしまう。
知らないキャラが謎の理由で死ぬから脳が追いつかない
ミステリーの最終回にしては、残された謎が少なかった。大きなものでいうと、桜木のやろうとしていることと、井沢(沢村一樹)の妻と子供が殺された理由ぐらいだろう。話としては一話完結のような形だったので、最終回も事件の説明から始まる。しかし、これがやや複雑で視聴者を置いていった印象。
井沢と山内(横山裕)は、桜木が死んだとされるベトナムへと向かう。そこで桜木の友人で、元女刑事のグエン(フォンチー)と出会う。このベトナム人女性が、片言の日本語で事件のあらましをすべて教えてくれた。グエン、便利すぎて味気ない。
一年前、アサヒ証券の社員・谷口(斉藤佑介)は、その上司で支店長の相馬と、その娘で谷口の元フィアンセ由紀子(桜井ユキ)を殺そうとしていた。
グエン、谷口、相馬、由紀子が今回初登場。赤川、井沢の妻と子供も、名前や顔は出てきてはいたが、人物像は全くわからなかった。つまり、最終回にして過去9話に出てこなかった人物で話は構成されているのだ。知らないキャラが謎の理由でガンガン死なれても、正直、脳がついていかない。
谷口について、井沢は由紀子に。そしてまたしても新登場の谷口の弟に小田切(本田翼)が聞き込み調査。これで谷口がそんなに悪い奴じゃないということがわかる。
犯罪を起こす前から桜木と赤川が動いていたことから、この事件がミハンシステムが絡んでいると井沢は推理する。
結局は沢村一樹
上記が今回の話の前提だ。かなり複雑だけど、この先は沢村一樹のマンパワーで押し切る。理解していなかった僕でも十分楽しめるほど、沢村一樹の存在感はすごかった。というか、これだけ沢村一樹押しするなら、ストーリーをもっとシンプルにしてもよかった気がする。
自分の妻と子供を殺したミハンシステムのトップ、東堂(伊藤淳史)と対峙する井沢。怒りに震えながらも、東堂のミハンへの思いを聞く。「あなたには私を殺す権利がある」と開き直られても、井沢はどこか冷静だった。呼吸を荒げ、椅子をなぎ倒して東堂に掴みかかるも、その先にいる黒幕の存在に気付く冷静さがあった。
黒幕の町田次長からの刺客に、口封じで東堂は刺されてしまう。
普段ヘラヘラしていた井沢は、戦い方もヘラヘラしていた。圧倒的な強さを誇るも、どこか相手と向き合わず、まるで合気道のようにいなしていくシーンが多かった。しかし今回は違う。東堂の血にまみれたまま井沢は、町田の元へとまっすぐ向かう。何人もの護衛に飛び掛かられるも、町田から視線を一切外さずにそれらを力強くいなしていく。今までは、パソコンをイジりながら敵をいなす。仲間と会話をしながら敵をいなすなどの余裕を見せてきたが、今回は町田をぶちのめす目的で敵をいなしていった。
町田を追い詰めると、そこからは武術ではなく、ただの暴力。部屋に閉じ込めカギをかける。荒々しく町田の頭を壁に打ち付けては、足で踏みつけ、銃口を構える。
小田切と山内が駆けつけると、井沢は、ゆっくり普段の井沢に戻っていった。
上戸彩の使い方、ミハンシステムの粗、その他だいぶ気になるところあった今作。結局は沢村一樹が見れたからいいやと納得させられてしまった。
(沢野奈津夫)
「絶対零度~未然犯罪潜入捜査~」
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