上映中、スクリーンに映るのはパソコンのディスプレイやスマホの画面やニュース映像のみ……。『search/サーチ』は非常にトリッキーな映画だが、サスペンスの本質を突いた必見の一本である。

終始パソコンの中しか映りません「サーチ/Search」トリッキーだがめちゃめちゃ面白いサスペンス映画

高校生の娘が失踪! 子供のSNSにログインした父が見たものとは!?


『サーチ』が始まった時、スクリーンに映るのは緑の草原と青空だ。そう、おなじみのウィンドウズのデスクトップ画面である。映画館の巨大なスクリーンにでかでかと映し出されるデスクトップ画面……。このサイズで見る必要ありますかこれ……と思いつつ見ていると、そこに次々に画像や映像が保存されていく。その画像はあるアジア系の一家の姿を映したものだ。父親デビッド・キムと母親のパメラ・キム、それに一人娘のマーゴット。保存される画像や映像の中で娘はだんだん成長する。初めてピアノの練習に行き、初めて小学校に行き、段々と進級していくたびに記念撮影の写真が溜まっていく。

グーグルの検索窓が開かれる。そこで検索されるのはリンパ腫の治療法だ。運動がいいという結果が出れば、母親と父親が一緒になってランニングしている映像がyoutubeにアップロードされるようになり、見舞いに行った映像も保存される。どうやら病気になったのはパメラの方らしい。そして、スクリーンにはずっとパソコンや携帯の画面しか映らないにも関わらず、結局パメラは病気で死亡したことがわかる。


画面は携帯のメッセンジャーに切り替わる。どうやら娘マーゴットは高校生になっているようだ。デビッドはゴミを出し忘れたマーゴットをフェイスタイムで叱る。試験を控えているマーゴットは、友達とともに徹夜の勉強会をやっているようだ。その夜、マーゴットからデビッドのパソコンに3件の着信があるが、デビッドは寝ていて気づかない。そして、マーゴットはそのまま消息を断つ。何度メッセージを送っても返信はなく、デビッドは警察に通報する。

誘拐なのか失踪なのかも不明。手がかりを探そうにも、マーゴットの友達の連絡先すらデビッドにはわからない。藁をも掴む思いでデビッドはマーゴットが忘れていったノートパソコンを開き、彼女の使っていたSNSにログインを試みる。その過程で徐々に判明したのは、デビッドが全く知らない娘の姿だった。

……というプロセスを、本当に完全に最初から最後までパソコンやスマホの画面から一歩も出ずに描く。
これが『サーチ』の目を引くポイントだろう。いわゆるPOV(一人称視点)ものの映画をさらに一歩進めた変化球と言える手法であり、個人的には『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』を初めて見た時のような驚きがあった。デビッドがグーグー寝てる時に着信があったことがわかったり、彼が電話に出ない時に重要な連絡がきたりしていることが観客にはわかるので、「志村〜! うしろ〜〜!!」的なヤキモキ感でのたうち回りたくなる。

なんせマーゴットが生まれてから高校生になるまでの間のことをパソコン画面上で駆け足で振り返るので、ここ10年ちょっとの間のWebサービス史を見ている気分になる。youtubeのUIが古いやつから段々現在の形に近づいていったり、デビッドがライブストリームのことを全然知らなかったりと、Webの進化の速度をしみじみと感じる。

さらに「SNSにログインするためパスワードを変更するための認証を送らせたが、その認証を送らせたアドレスにログインするためにパスワードが必要で、無限にたらいまわしになる」「行方不明者が出た時にSNSでふざける奴が出てくる」「タンブラーやってる奴はなんとなく少数派っぽい扱い」などなど、インターネットあるあるも山盛り。ネットストーキング的なことを多少なりともやってしまったことがある人なら、身につまされること間違いなしである。

「サーチすること」はサスペンスの王道なのだ


このように、手法についてはトリッキーな『サーチ』だが、実のところサスペンス映画としては本質的なスリルに満ちている。とどのつまりは「いなくなった人を探す話」なのだ。考えてみれば「娘がいなくなる→父親がそれを探す』というストーリーはよくある。デビッドを演じているのがジョン・チョーではなくアーノルド・シュワルツェネッガーだったら、『コマンドー』になるわけだ。

この映画でデビッドがなにか行動を起こす時、執拗に映るのは検索窓だ。
グーグルの検索窓やフェイスブックの検索機能、怪しいアカウントのプロフィール画像を突っ込む画像検索や自分のパソコンの中のデータを探す時まで、ありとあらゆる行動が「検索」から始まる。その意味で、この映画のタイトルが『Search/サーチ』(原題は『Searching』)であることはとても正しい。娘を救うためのデビッドの行動は、常に「検索すること」そのものからスタートするからだ。

さらに「Search」という動詞には、Web上の検索の意味だけではなく「捜す・創作する」「(何かを見つけようとして)厳重に調べる」「じろじろ見る・じっと見つめる」という意味もある。「何かを捜す」という行為そのものを指す単語なのだ。ということは、サーチすること、その過程を見守ることは伝統的なサスペンス映画の面白さの一角を占めている。「Search」という単語には、「事件が起こり、誰かが真犯人を見つける(見つからないこともある)」というプロセス自体が大きく含まれているのだ。

この映画にはパソコンの画面やスマホの画面しか出てこない。にも関わらず、映画全体が緊張感に満ちており、片時も目を離すことができない。映っているのはいつもおれが目にしているグーグルやツイッターの画面なのに、である。恐らくそれは、「検索して何かを探す」「検索した時に何が出てくるかわからない」というスリルから目を離すことができないからだろう。そしてそれは、サスペンス映画の根源的な面白さのはずだ。
つまり『サーチ』は、その手法の目新しさとは裏腹に、ものすごく基本に忠実な面白さを味わわせてくれる映画なのである。

最後になるが、おれはこの映画のソフト発売なり配信なりが早く始まってほしいと強く思っている。恐らく『サーチ』が真の力を発揮するのは、自宅の机の上でパソコンのディスプレイ越しに見た時のはずだ。それはそれで心待ちにしつつ、まずは「映画館のでかいスクリーンにウィンドウズの壁紙が映る」という衝撃の光景を見てほしい。
(しげる)

【作品データ】
「Search/サーチ」公式サイト
監督 アニーシュ・チャガンティ
出演 ジョン・チョー ミシェル・ラー ジョセフ・リー デブラ・メッシング ほか
10月26日より全国ロードショー

STORY
高校生の娘マーゴットと2人暮らしの父親デビッド。ある日勉強会の帰りにマーゴットと連絡が取れなくなったデビッドは、警察に通報することに。見つからないマーゴットの手がかりを探すため彼女のSNSにログインしたデビッドは、自分の知らない娘の姿を目の当たりにする
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