ユニクロといえばシンプルでクオリティの高い衣料品をリーズナブルに楽しめるファストファッションの代表的なブランド。しかし、ほんの十数年前までは着ていることを知られると少し恥ずかしくなる、そんなブランドだった。


おばはん、下着姿になって返品する


今でこそ「これユニクロだよ」「ユニクロ好き」と言う人も多いユニクロは、テレビCMも非常にオシャレなものばかりだ。いつからユニクロはこんなシャレオツなCMを展開するようになったのか、筆者は記憶していない。本当に“いつの間にか”オシャレブランドになっていた。

しかし、筆者は忘れてはいない。その昔、ユニクロが展開していた「どんな理由でも返品交換対応する」というCMを。なぜ覚えていたのか? それだけCMの内容が強烈だったからにほかならない。

そのCMは、レジのお兄さんの前にやってきたおばはん(関西弁)が、「ちょっと兄ちゃん、これな、オバンくさいねん。
そんでな、ちょっと替えて、これ!」と言いながら着ている服を脱ぎ捨てるというもの。そして下着姿で「ほかの見てくるわ。替えてな!」と言い放ち、その格好のまま新しい服を選びに行くという恐ろしい内容だ。そして表示される「ユニクロは理由を問わず返品交換いたします」の文字。そんな返品交換対応云々の前に、このCMのあられもない中年女性の下着姿は、筆者の家族団らんの空間の空気を替えた。

おっちゃん、ブリーフ一丁になって返品する



おばはんの返品交換のお願いの仕方も衝撃だったが、さらに衝撃だったのはおっちゃんバージョンのCMも展開されていたことだ。おばはんバージョンではレジ前で服を脱ぎだしたが、おっちゃんはレジに来る前から歩きながら脱ぎだしていた。
おばはんのゆるんだ腹とは違い、少しばかりガッチリした肉体にブリーフ姿というのが妙な生々しさを醸し出す。

「昨日買うてんけど、替えて欲しいねんけどな、どうしても。どうしても替えて欲しいねん。どうしても。」

フレンドリーな印象こそあるものの、やっていることはただただ図々しい交換のお願いだ。ブリーフ一丁で乱れた髪の毛をセットし直しながらお願いする姿に、おばはんとは違って妙なヤバさを感じた。

理由を問わず返品交換対応


おっちゃんもおばはんもやっていることはアウトだが、CMが言いたかったことは「理由を問わず返品交換対応する」ということだ。
これほどわかりやすいメッセージはないだろう。

昔と今では案外ルールは違っているのではないか。今現在はどうなっているのか気になって調べてみたところ、購入して3ヶ月以内であれば返品交換の対応を行っていた。しかもオンライン購入でも、購入店舗以外での返品交換がOKという対応をとっているようだ。ただし、キズや破損・汚損が生じている場合は受け付けてもらえない。

このCMはユニクロにとって黒歴史のような気がしないでもないが、そういう時代があったからこそ今のユニクロがあるのかと思うと、なかなかに感慨深いものだなぁ。


(空閑叉京/HEW)