「第20話 征服されざる人々」が今日11月22日(木)25:05より、フジテレビ”ノイタミナ”ほかで放送。

今回は原作13巻から14巻冒頭までを一気に駆け抜けたため、多数カットが入っている。しかし衰弱していくアッシュなどの、キャラクター描写と物語に重要なシーンやセリフは丁寧に押さえている。
アッシュ、錯乱する
今回は、原作でも屈指のNGワード連発シーンを、ある程度整理はしているものの、ほぼ全てアニメで再現していた。
このシーンは、アッシュがいかに絶望的だったか表現される部分。絶対欠かせないパートだ。
前回、エイジを救うためならと月龍の言われるがままに人生を捨てたアッシュ。それはエイジに愛情を注がれ、幸せだと初めて感じたからだった。
ディノや月龍には、お前はひどい目にあうからな、と散々言われていたアッシュ。
もっとも彼は幼い時から誰にも救われることなく、レイプされ虐待にあいポルノ撮影され男娼として食いつなぐ、という地獄を味わってきたのだから、それ以下までは考えていなかったのだろう。
ところがディノはアッシュを男娼にしなかった。
彼に与えられたのは、バナナフィッシュについて、お偉いさん方を言葉でやり込める仕事。
この時のアッシュの顔が完全な悪党で、周りからは悪魔と言われるほど。
嫌悪してきた大人の真似を、演じている。肉体を痛めつけられるより、アッシュとしては遥かにきつかったようだ。
アッシュ「あんたはオレを男娼に戻してやると言った。頭がいかれるまで客を取らせてやると……だったら早くそうしろよ!その方がよっぽどましだ!」
これだけで拒食症になるほどなのに、ディノが「お前を養子にする」と言ったもんだから、アッシュもさすがに錯乱。一生逃げられない奴隷にしてやる宣言だ。
ここから、心も身体も衰弱しきったアッシュが、過去の境遇を撒き散らす。
アッシュ「あんたは俺をただのセックスの道具としか思ってなかったんじゃなかったっけ?」「めちゃくちゃレイプされた。その時やつが何て言ったと思う?『痛いか?小僧、痛いか?』傑作だろう、痛みすら感じないと思ってたのさ、人間どころか生き物ですらない!」
彼のトラウマである、自分が人間として扱われなかった、という苦悩が一気に言葉になる場面だ。
性的玩具程度にしか見られてこなかったから、彼は自分を人間として、大事にしなくなった。それをエイジが、本来の自分も汚れたところも全て受け入れ、愛してくれたことで、人間らしさを取り戻したばかり。
なのに、ディノの精神的な強要を受け、あっという間に自分の価値を見失ってしまった。
「その気になったときに精液を流し込む、便所と同じだ」「頭脳労働ができなくなったらまた肉体労働に?生きた便所に戻されるわけかな、父さん」
今回のセリフを見るに、アッシュの悲惨な人生は、今までチラ見えしていた内容以上だったようだ。
多数の大人から性的な玩具としてアッシュが扱われ続けてきて、それこそ自分を便所だと思うほど傷ついていたのなら、彼が全ての大人に心を閉ざすのも無理はない。
それに対してのディノの発言。
「生まれながらのゲスな男娼だ貴様は。時間をかけて仕込んでやる、貞淑な妻にな」
ようは心を支配してやる、という発言だ。
単語自体はアッシュの方が、「これ放送していいの?」とぎょっとするほど下品。
しかしディノの「ゲスな男娼」「貞淑な妻」という言葉の方が、遥かに暴力的だ。
「1つだけ条件があります」
心理合戦でエイジに負けてカップを投げつけるなど、月龍がだいぶ揺らぎ始めた。
今回の彼は色々うまくいかなくなり、子供っぽい部分がボロボロ出ている。
それに対して「若様」というシンの、正々堂々した動きが気持ちいい。
彼はここから先、アッシュの次の世代として大活躍してくれるはず。月龍への「べー」が、彼らしい。
月龍から用心棒としての要請を受ける、ブランカの「見守る人」としての安定感がまた一段と引き立ちはじめた。
ブランカは仕事に対しては絶対の態度を取るプロだ。でも愛弟子でもあるアッシュの不幸もわかっている。
ブランカ「1つだけ条件があります。私が契約するのはあくまでもあなたの命を守るため、不要な殺生はお断りします。ただしあなたに危害を加える者には一切容赦しません」
この意味ありげな一言が、後の流れを変える。月龍は「アッシュでも容赦しない」と受け取ったようだ。
加えてブランカは、シンがいる時にわざわざ「20日のパーティーは」と具体的数値を出して月龍と話している。月龍はよほどブランカが要求を飲んだのが嬉しいのか、ここに全然気づいていない。
ブランカも複雑な過去を抱えた人間の1人ではあるものの、かなり俯瞰して物事を見ている人物だ。
彼が手を出したら、そのさじ加減で全員の運命はかなり変わるだろう。けれども、実際に運命を選択して動くことは、少年たち自身に全て委ねている。
最終回までで終わるんだろうか?と思っていた内容も、かなりいい具合に進行している。
以降アクションもガンガン増えるはず。相当面倒そうな背景のシーンも多いので、どう再現してくれるのか楽しみ。
(たまごまご)