11月16日に『大恋愛〜僕を忘れる君と』(TBS系)の第6話が放送された。
恐怖「大恋愛」小池徹平の闇に飲み込まれそうな戸田恵梨香は、愛する夫を忘れてしまうのか6話
イラスト/Morimori no moRi

「僕だけじゃない」と願う小池徹平の闇


何をおいても、間宮尚(戸田恵梨香)と同じMCI患者である松尾公平(小池徹平)に触れなければならない。

キラキラした“キラースマイル”の持ち主である公平。
しかし、彼の笑顔からは異様なものを感じる。目が笑っていない。瞳孔が開いているようにさえ思える。

行動も闇が深い。病院の待合室にいる尚と間宮真司(ムロツヨシ)への距離の詰め方は唐突で、2人を戸惑わせている。診察が終わると「僕の前に診察を受けてたご夫婦、どっちがご病気なんですか?」と追及する。2人の後ろ姿を見つめる視線は、どこかじとっとしている。
保育士である公平は、病気を理由に園長から事務の仕事のみに集中するよう促されていた。保育士の仕事は唯一の生きがいだと悲観に暮れる公平。
「先生からも言ってください。僕は大丈夫だって。本当はMCIから認知症に進んでるかもしれないと思うんですけど……。
でも、人には生きる希望が必要でしょ?」
プラス思考でありながらマイナスオーラの濃度も高い。

尚と主治医の井原侑市(松岡昌宏)が食事するテーブルにズケズケと割り込んだ公平。尚の名前など素性を遠慮なく詮索し、メモに残す前のめりの姿勢が不気味だ。診察時間より数時間も早く公平は病院へやって来た。それには理由がある。
「みんな、病気でしょ? 僕だけじゃないって思えるじゃないですか」

尚は侑市の依頼で医学部の学生を対象に講演を行った。公平も聞きに来ていた。尚が喋り始めた瞬間、マイクにハウリングが起こった。卒倒する尚。偶然か否か、スピーカーが設置されているのは公平の席の真後ろだ。教室内がざわついた時に公平の姿が見当たらない。彼の仕業ではないのか。
運ばれていく尚を見て、笑みを浮かべる公平。「キラースマイル」とはそっちの意味でもある。

意識朦朧の尚に真司を装いキスをした公平。単純に、真司から尚を奪いたかった? いや、そうじゃない。自分より病気の進行が遅い尚を悪化させ、「僕だけじゃない」と思いたかった。発症とともに妻に逃げられた公平。彼が見つめる尚と真司への視線は妙だった。「あの夫婦のどっちがご病気なんですか?」と公平は探っていた。もし答えが真司だったら、標的は違っていたかもしれない。「人は生きる希望が必要」と信じているのに希望を失いつつある自分の道連れにしたかった。真司の前で幸せを壊すためのキスを見せ、公平は鼻歌を歌いながら階段をスキップする。生きがいを見つけたようにさえ見えた。


「幸せは描きにくい」と断るムロツヨシの無理解


『脳みそとアップルパイ』の続編が読みたいと言った尚に、真司は「あれはあれで完結している」と断った。
「それに、困難な時代や苦しみは描きやすいけど、幸せは描きにくいんだ」

公平にキスをされ、病の進行速度が増す尚を気遣う真司。「書かなければならないという思いが突き上げてきた」と考えを改めた。幸せだけでは小説にはならない。しかし、目の前には恐怖や悲しみを抱える尚がいる。困難も時には立ちふさがる。公平はその象徴だ。「幸せは描きにくい」と言っていたが、決して幸せのみの2人ではなかった。

いつか、真司のことを忘れてしまう尚。尚の手からこぼれ落ちる砂(記憶)を真司が小説にすることで受け止める、ドラマのオープニングの描写が現実として動き出した。真司にとって尚は、やはり「小説を書かせるために神が使わしてくれた女神」だったのだ。
(寺西ジャジューカ)

金曜ドラマ『大恋愛〜僕を忘れる君と』
脚本:大石静
音楽:河野伸
主題歌:back number「オールドファッション」
プロデューサー:宮崎真佐子、佐藤敦司
演出:金子文紀、岡本伸吾、棚澤孝義
製作:ドリマックス・テレビジョン、TBS
※各話、放送後にParaviにて配信中
編集部おすすめ