第13週「生きてさえいれば」 第75回 12月26日(水)放送より
脚本:福田 靖 
演出:安達もじり
音楽:川井憲次
キャスト:安藤サクラ、長谷川博己、内田有紀、松下奈緒、要潤、大谷亮平、
     桐谷健太、片岡愛之助、橋本マナミ、松井玲奈、呉城久美、松坂慶子、橋爪功、瀬戸康史ほか
語り:芦田愛菜
主題歌:DREAMS COME TRUE「あなたとトゥラッタッタ♪」
制作統括:真鍋 斎
「まんぷく」75話。あの野呂ようやく再登場、コンビーフカレーをふるまう
イラストと文/木俣冬

75話のあらすじ


会社を売ってせっかく手にした12万円があっさり財務局に差し押さえられてしまった。そこまでするのは不当であると、東(菅田将暉)は国を訴えようと提案。萬平(長谷川博己)も同意する。


「あんたのことは他人事とは思えないんだよ」


「抗議の声をあげなければ何もはじまらない」という東。
さすがの萬平もちょっと躊躇するが……

東「僕が守ります 全力で」
萬平「わかりました 訴えましょう」

わりとあっさり。東の気迫勝ちである。

この勝負、どうなるか、剛田に占ってもらうと、「大…凶」といい「このへんが小吉」と誤魔化す。
「自分のことは占えない」「あんたのことは他人事とは思えないんだよ」と言う剛田。
無関係の人だったら客観的に助言できるが、情が移るといいことしか言えないというか、いいことになってほしいと願ってしまうもの。それが人情。
詐欺師ぽい気もするけど、なんか憎めない。それも人情。

萬平が「嬉しいですよ剛田さん」と言ったあと、カメラがあおって空が映る。
閉塞感の強い刑務所のシーンでは珍しく抜け感のある画になった。
演出の安達もじりは、加持谷がハンコで救われたエピソードでは、雨上がりの画を効果的に使っていた。
今回もきっと、空を使って、希望を匂わせたのだと思う。

ただ、その空は青空ではなく、まだ白っぽい。

東の事務所にまで財務局がやって来た。

ところで、12万円という大金が手に入ったとき、東もそれなりの報酬はもらったのだろうか。
当初、お金にならないけどこの案件はやると、手弁当的な活動をしていたようだが、大金が入ったのだから、福子は支払いをするべきだろう。結局お金がなくなったので、支払えなかったとなったらそれはそれで仕方ない。
財務局が東の事務所にも来たのは、今回の件でなんらかの報酬を得たはずと踏んだからなのか。
細かいとこを一切無視して、GHQが萬平をスケープゴートにしているという一点のみで進む力技が凄い。

「僕には何もできない。それが悔しくてたまらないんです」
萬平さんってとにかく守られている。

長谷川博己の芝居がシリアスなので、なんか深いものがあるような気がしてしまい、うっすら…ごくうっすらだが、象徴である天皇と萬平を重ねてしまう。
イッセー尾形は映画「太陽」で昭和天皇を演じていたし。

はあ〜 ふんっ えい!


鈴「私は武士の娘です」
克子「私は武士の娘の娘です!」
タカ「私は武士の娘の娘の娘です!」

はあ〜 ふんっ えい! と薙刀の稽古。今度また財務局が来たら返り討ちにするために。

74話の「私は今大金持ちです」「大金持ちというわけや…」「いやいや大金持ちよ。12万よ」の「大金持ち」三連発は、これの前振りだったのだろうか。

松坂慶子、松下奈緒、岸井ゆきのがじつに溌剌としている。
通常の朝ドラだと主人公が真っ先にこういうことをやりそうだが、福子がそこに加わってないのも面白い。

野呂さん!


75話の見どころはなんといっても、やっと出てきた野呂(藤山扇治郎)。
戦争に行ってからまったく消息がしれなかった、自分の店を持っていた。
出番のあるころ料理人にもかかわらずまったく厨房シーンがなかったが、料理人として独り立ちできたのだ。

福子は町中で牧夫婦(浜野謙太、橋本マナミ)と偶然会い、野呂の店に連れられて、特製のカレーライスを食べる。
カレーにはコンビーフが入っている。そしてテーブルには、缶詰の空き缶に花が挿して置かれ、それをわざわざアップで撮ってみせる。

「生きてさえいれば」(サブタイトル)、どこかで会って旧交を温めあえると思う場面だった。

離れていた人との再会といえば、「ひよっこ」。乙女寮の料理人と再会するエピソード(カレーの味で気づく)というのがあった(153話)。


牧善之助は、貫禄がついたっていうか……と福子に言われるが、この間、きっと大河ドラマ「西郷どん」で伊藤博文を演じていたからであろう。

野呂はまだ独身。好きな子はみんなとられてしまうと言うが、演じている藤山は先ごろ、結婚を発表したからほんとうは幸せいっぱい。

福子と萬平の第二子は幸。幸福の幸だが、野呂の名前は野呂幸吉。野呂から「幸」をもらったと言ってあげてほしかったかも。
元陸軍大将の神宮幸之助(麿赤兒)にも「幸」がついていた。
あと、岡幸助(中尾明慶)にも。

牧善之助の「善」、牧恵の「恵」、世良勝夫の「勝」、三田村の「蔵」と助けてくれる人の名前はわかりやすく吉ぽい漢字がついている。もっとも名前に不吉な漢字を使用することはなかなかないけれど。

「まんぷく」は年内、12月28日(金)まで放送される。年内、あと2回!
(イラストと文/木俣冬)

連続テレビ小説「まんぷく」
◯NHK総合 月~土 朝8時~、再放送 午後0時45分~
◯BSプレミアム 月~土 あさ7時30分~ 再放送 午後11時30分~
◯1週間まとめ放送 土曜9時30分~

朝夕、本放送も再放送も オールBK制作朝ドラ


「べっぴんさん」 BS プレミアムで月〜土、朝7時15分から再放送中。

2016年の朝ドラを振り返っています。あさが来た、とと姉ちゃん、べっぴんさん。
75話

「あさが来た」 月〜金 総合夕方4時20分〜2話ずつ再放送
充実の展開が続きます。
47話
48話
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