柏木「愛を知らないお前に」
小夜子「愛なんか信じてへんあんたに」

1月22日(火)よる9時スタートのドラマ『後妻業』(フジテレビ系)。原作は黒川博行の同名小説だ。
2016年には、大竹しのぶ主演で『後妻業の女』とタイトルを変えて映画化している。

ドラマ版で主人公・小夜子を演じるのは木村佳乃だ。小夜子とバディを組んで後妻業を推し進める結婚相談所の所長・柏木役に高橋克典。小夜子と柏木の悪事を暴こうとする朋美と本多を、木村多江と伊原剛志が演じる。

『僕のヤバい妻』(2016年/フジテレビ系)、『あなたには渡さない』(2018年/テレビ朝日系)に続き、またしても木村佳乃がヤバい女を演じる。(『あなたには渡さない』レビュー記事はこちら
資産家の老人の遺産目当てに結婚する「後妻業」木村佳乃VS木村多江のヤバイ戦いのドラマが始まっている
黒川博行『後妻業』(文藝春秋刊)

45歳、若すぎる後妻業の女


死期が近そうな資産家の老人を狙い、遺産相続目当てに結婚する「後妻業」。それを生業とする小夜子は、柏木が運営する結婚相談所で紹介された老人・中瀬耕造(泉谷しげる)と結婚した。


小夜子「優しくし過ぎたらあかん。じいさんがうちに情が湧き過ぎたら、かわいそうや」

遺産目当てのくせに、変なところにこだわりを見せる小夜子。しかし小夜子は、寒空の下、耕造を大阪中連れまわして脳梗塞を引き起こした。老人に「かわいそう」と情を寄せた女とは思えぬ非道っぷり。

耕造にはふたりの娘がいたが、耕造のもとにはあまり寄り付かなくなっていた。姉の尚子(濱田マリ)は大阪に住んでおり、妹の朋美は東京で事実婚の夫・司郎(長谷川朝晴)と一緒に建築事務所を開いている。


耕造が倒れたと聞き、朋美は大阪の病院まで飛んでくる。そこで小夜子と出会い、すぐに結婚詐欺を疑う。展開が早いなと思ったが、原作の小夜子は69歳、映画版では63歳、ドラマ版ではいきなり若くなって45歳だ。若すぎる。そりゃ出会ったその日に結婚詐欺を疑うわ。

ネタばらしを早めるドラマ版


原作やのどぶから這い上がってきたような情念のある小夜子と柏木に比べて、ドラマ版のふたりは違和感を覚えるほどにスマート。
華麗な怪盗一味のように、木村佳乃と高橋克典はシュッとしている。『後妻業“の女”』とタイトルを変えて大竹しのぶのためにあて書きされた映画版とこのドラマ版では、軸が違っているからだ。

映画版ではハードボイルドに生きる「小夜子という女」が際立っていた、対してドラマ版は、後妻業という悪事が引き起す人間模様が迫ってくるんじゃないか。

1話から小夜子の「情」への考え方や執着心がほのめかされた。朋子と本多や、司郎と建築事務所の新人スタッフ・絵美里(田中道子)の関係が変化していきそうな雰囲気も強く出している。

スピード感のある映画版を知っていると、連続ドラマにして勢いが失われるのではと心配してしまう。
けれど、45歳の美人後妻業という明確なうさん臭さによって、ネタばらしを早め、登場人物たちの感情や変化をじっくり描くというなら、それはそれで楽しみだ。

耕造「としえ、はようお前んとこ行きたい……。としえ」
小夜子「としえって、最初の奥さんかいな」

自分ではなく最初の妻の名を呼ぶ耕造の寝言を思い出し、小夜子は目の色を変えて殺人を決意する。名前を呼ばれる妻を少しだけうらやましく感じた自分に気づき、その「情」を振り切るために耕造を殺すのだ。小夜子の心の弱さと強さが切り替わる。

次回は、耕造の遺産を手に入れるため、小夜子と柏木の金庫破りと殺人計画が動き出す。
第2話は、今夜9時から放送。

(むらたえりか)

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チェインストーリー(GYAO!)

ドラマ『後妻業』(フジテレビ系)
毎週火曜 よる9時〜
出演:木村佳乃、高橋克典、木村多江、葉山奨之、長谷川朝晴、篠田麻里子、平山祐介、田中道子、河本準一、濱田マリ、とよた真帆、泉谷しげる、伊原剛志、ほか
原作:黒川博行『後妻業』(文藝春秋刊)
脚本:関えり香、阿相クミコ
演出:光野道夫(共テレ)、都築淳一(共テレ)、木村弥寿彦(カンテレ)
音楽:眞鍋昭大
主題歌:宮本浩次「冬の花」
企画・プロデュース:栗原美和子
プロデュース:杉浦史明(カンテレ)、萩原 崇(カンテレ)、水野綾子(共テレ)
制作:カンテレ、共テレ