今回の主役は、制作Dチーム課長の大崎結(板谷由夏)。
案の定、大崎は抱え過ぎていた。家に帰るとふさぎ込む息子がいるし、子を丸投げして浮気する夫もいる。職場に行けば、中間管理職としてもうキャパオーバーだ。

見ていられず占うアタル、言葉が届かない大崎
本社から遥か遠く離れた倉庫への出向という名目で、Dチームからリストラ候補者を1名選べ。部長の代々木匠(及川光博)から大崎に非情な指令が下った。
酷である。選べる状況じゃない。みんな、見るからに団結力と働く意欲が増しているのだ。上野誠治(小澤征悦)がいつものように難しげな横文字を使うと、神田和実(志田未来)は「このインクルージョンってどういう意味ですか?」と本人へ質問。昔だったらこっそりスマホで調べてたのに、聞き返しても大丈夫なくらい距離は縮まっていた。
アタル(杉咲花)に占われたことで、Dチームに一体感が生まれつつある。全員の目がキラキラしている。この中にもう、リストラ対象者なんていなかった。
変わったのは、正社員だけじゃない。
「よかったら、飲みに行きませんか?」
大崎1人だけがDチームの上昇気流についていけていない。それどころか、深く思い悩んでいる。アタルは珍しく、自分から大崎を飲みに誘った。
アタルは人の心を読む能力を持っている。大崎を見る彼女の表情が、なぜか普通じゃない。他愛ない話をしているだけなのに、泣きそうな目になってる。
「大崎さんは、人の上に立つ才能があると思います」
中間管理職としていっぱいいっぱいの大崎。今の彼女は「人の話を聞いてあげなきゃ」という意識が強くなり過ぎている。このとき、彼女にアタルの言葉は届かなかった。自分は与えるほうで与えられる側ではないと思い込んでいる。もう、決壊寸前だった。
初めて占いでダメを出さなかった
神田をリストラに指名しろと、代々木から大崎にメールが届いた。それを見て、遂に大崎はパンクした。そして、電車へ飛び込む寸前まで思い詰めてしまった。
見てられないアタルは、「あなたを見ます」と自分から大崎に声を掛けた。
今までに、アタルは5人の社員を占ってきた。相手の問題点にダメを出し、指摘するのが彼女の役目だった。
「デスクにあったサボテンみたいだよね、あんた。サボテンの花言葉って知ってる? 『偉大』、『温かい心』、『燃える心』、『枯れない愛』だよ。全部、あんたそのものじゃん」
「コツコツ努力続けたら、それ本物だから。周りの人を幸せにするために毎日毎日頑張ってきたら、それ、もうあんたにしかできないオリジナルだから」
大崎は自己肯定感が低過ぎる。彼女は、誰よりも悩み抜く良きリーダーだ。だけど、自信が足りない。だから、激励した。母のキズナ(若村麻由美)とは全然違う言葉で、大崎の背中をアタルは押してあげた。
後日、リストラ問題の結論を確認するため代々木がDチームへやって来た。もう、大崎は答えを用意していた。
「出向するのは……神田さんにします。
「でも、部長。逆に言えば、年間300万円の利益を伸ばせばその必要はなくなるわけですよね? うちのチームには神田さん以外に5人の社員がいます。その1人1人が毎月25を5で割った5万円ほどの利益を伸ばせば、神田さんは辞めなくて済むことになるはずです」(大崎)
このドラマは、前回アタルに救われた者がキーマンになる。リストラ候補に悩む大崎が各スタッフを個人面談したとき。「6人乗りのボートに1人だけ乗れないとしたらどうする?」と質問された田端は、以下のように答えていた。
「全員、裸にします。全員が服や靴を捨てるだけで何キロか軽くなるはずです。あとはボートにある無駄なものを捨て、交代で泳いで時間を稼げば救助の船がやって来る確率も上がってくるのでは?」
田端の答えが凄過ぎる。リストラ問題の解決法をそのまま示しているのだ。Dチームには、数学的思考でチーフをサポートし、アイデアを二つ返事で実行するチームメイトがいる。大崎の凛々しきリーダーシップと団結力で、Dチームは代々木をギャフンと言わせた。
予告によると、次回、アタルは代々木を占うらしい。
「部下の気持ちなんて無視して、権力振りかざす奴がリーダーなわけ!? 困ったときは部下に丸投げ。結果が出なければ人のせい。うまくいったら『自分がやった』って自慢する奴がリーダーなわけ? そいつらこそ偽物だから」
これが代々木のことを指しているのは明白である。アタルは代々木を「偽物」と断罪した。そんな相手をどのように占うのだろう?
実は、代々木が占われる回を筆者はずっと待っていた。絶対、何かを抱えていそうなのだ。この男はアタルに見てもらってほしい。
(寺西ジャジューカ)
木曜ドラマ『ハケン占い師アタル』
脚本:遊川和彦
主題歌:JUJU「ミライ」(Sony Music Associated Records)
音楽:平井真美子
ゼネラルプロデューサー:黒田徹也(テレビ朝日)
プロデューサー:山田兼司(テレビ朝日)、山川秀樹(テレビ朝日)、太田雅晴(5年D組)、田上リサ(5年D組)
演出:遊川和彦、日暮謙(5年D組)、伊藤彰記(5年D組)
制作協力:5年D組
制作著作:テレビ朝日
※各話、放送後にビデオパスにて配信中