西川貴教、ソロ名義の活動は「もっと自分が磨かれる場所が欲しかった」
撮影/石井 小太郎(C)エキサイトミュージック

西川貴教が、1stアルバム『SINGularity』を3月6日にリリースした。2018年から本格的に本名名義での活動を開始した西川。
以後発表してきた楽曲は、各々従来の彼の活動や音楽性とは一線を画したものばかり。ボーカリストとしての可能性や新しい扉、新たな引き出しを開き、今までの彼にはなかった世界観の数々を伺わせてきた。

そんな多彩さや未知の可能性を楽曲毎に提示してきた彼だったが、よりドラマティックで壮大、オペラティックでヴィジュアライズドされた楽曲の出現も耳を惹く今作。布袋寅泰や澤野弘之といった御大と一緒に作り上げ、新たにその世界観を育んだ楽曲を始め、Fear, and Loathing in Las Vegasやゆよゆっぺなど、新進のアーティストやクリエーターともコラボ。それらは化学変化や相乗効果を魅せ、彼のボーカリストや表現者としての界層をさらに引き上げることに成功している。

そんな西川貴教のさらなる「SINGularity=進化」をその耳で確かめて欲しい。

TMRもバンドも不満はない もっと自分が磨かれる場所が欲しかった


西川貴教、ソロ名義の活動は「もっと自分が磨かれる場所が欲しかった」
撮影/石井 小太郎(C)エキサイトミュージック

――これまで約1年をかけて徐々に現してきた西川さんの本名名義での活動の全貌が、ようやく今作を以って見えた気がします。

西川貴教(以下、西川):当初はもう少し早めにリリースする構想だったんです。昨年は舞台「地球ゴージャス」にも出させていただいき、以降、夏ぐらいから今作の着手を予定していて。ところがそれからミュージカル「サムシング・ロッテン!」の話も加わり……。それが年をまたぐ形になりましたからね。結果、1年の3/4を舞台に費やしていた計算になってしまったという(笑)。

――ではアルバムの制作は2019年に入って一気に?

西川:それもありますが、もちろん各舞台と並行して制作は進めてました。


――その制作期間の凝縮も手伝ってか、今作は凄く世界観や流れでの統一感がありました。各章に分かれた一本の物語的な作品とでも言うか。

西川:タイアップ用の書き下ろし楽曲もありますが、全体を通しての大きなテーマは持たせず作り始めました。結果、今後いろいろなものを芽吹かせていく種を詰め合わせた作品になったなって。西川貴教の音楽性を明確に定義づける前の可能性を色々と探った1枚とでもいうか。さまざまなクリエーターの方とコラボしたし、いろんなタイプの楽曲を違ったアプローチで形にしていくことで、少しずつ自分の声の実態を確かめていく。そんな作品になった感はあります。

――個人的にはその辺りが不思議で。本人名義なのもあり、てっきり自身の詞曲やクリエーター気質で挑んでくる予想をしていましたが、実際はシンガーや作品や各楽曲のコンセプターに徹していたのも意外でした。

西川:バンド等のメンバーなら自分の意志を込めた作品をつくりたいとの意思の下、ソロ作品を出すんでしょう。でも僕の場合、TMR(T.M.Revolution)もバンド(abingdon boys school)も並行して行っていて。どちらにも不満はないんです。
対してもっと自分が磨かれる場所が欲しくて。歌表現やシンガーとしてのスキルを実践的に形で磨いていきたかったんです。それが一番大きかったかな。

――そのキャリアでこの貪欲さとアグレッシブさはすごいです。

西川:ある程度のキャリアを積むと、多くの人は自分の型が完成されて、「それをやる人」と定義づけられちゃう場合も多いじゃないですか。でも自分はそこだけで留まらず、「もっと出来るんじゃないか?」との気持ちが常に強くあって。自分の伸びしろをもっと試してみたいし、以前よりもっと出来ると常に考えちゃう。そんな自分の未知の可能性をさらに伸ばしていく方法として、今回の手法に至った面もあります。とは言え、あまりそこに執着して「これをしなくちゃ」や「これまでとは違ったことをしなくちゃ」もなかったというのが正直なところで。

――でも提供するクリエーターたちは違うんじゃないですか? 各位なりの西川さん像をお持ちのような気もします。

西川:逆に各人には、「僕と一緒にやるなら、こんなことを一緒にやってみたい」「僕のこんな面を見てみたい」そんなことをリクエストしました。その方がお互い50:50で作れるし、そこに化学変化や相乗効果が生まれ、今までの自分には無かったものが生まれる予感があったもので。


――では感覚的には各位に自分の新たな引き出しを開けてもらった感も。

西川:ありました。それこそお互いの切り札を出し合う感覚で。想像を超えたものが来た方が自分の力量も試せるし、スキルアップにも繋がりますからね。そこが醍醐味でもあるし、自分にとっても一番面白い部分でもある。「さて、これをどうやって自分のものにしてやろうか」って。

――実際、参加各位、完全に自分の土俵上の楽曲タイプや世界観で挑んでますもんね。

西川:そうなんです! そのような遊びが出来るので作品として面白いものになる自負もありました。でも、その辺りは、「お芝居にも近いな」と改めて感じましたね。

――それはどの辺りが?

西川:お芝居も正直、台本の字面だけを読むと違和感を覚えるシーンやセリフもあるんです。役は基本、最初から明確なキャラクターの設定があるわけで。でも実際の現場で発してみたり、みんなと一緒に作り上げることにより、ようやく辻褄が合ったり納得できたりする。
逆にそれをキチンと演じる能力も試されたり。歌もそれに近いなって。彼らが思う自分に歌ってもらいたい像に一度なりきり、そこでその奥にあるものを見つけることで自分を再発見する。それが今作では出来たかなと。

――まさにセルフディスカバーですね!

西川:より自分探しが出来た作品という意味では、TMRやバンド以上に自分名義にふさわしい1枚になったかもしれません。ソロと言うと自分の最もパーソナルな作品にしがちなところを、今までの自分にない新しい自分が最も現れた。そこは面白いですよね。一つひとつの楽曲が全く違うし、独立している面もあるので、各曲全く違った主人公になり、違った表情や表現で臨みましたし。じゃないと、この広大なミックスは表現できませんでしたから。逆にこれらを1枚のアルバムにまとめたり、落とし込む作業が大変で(笑)。

――各曲音像もすごいですもんね?

西川:音像も今回は重視しました。これまでの自分のキャリアの中で最もマスタリングに注力を入れたかも。
まさに各曲性質の違う別々の惑星を巡って、それを一つの旅物語として成立させていく、そんな感覚でした。

大御所から新進のアーティストやクリエーターとコラボした作品


西川貴教、ソロ名義の活動は「もっと自分が磨かれる場所が欲しかった」
撮影/石井 小太郎(C)エキサイトミュージック

――今回は若手のフックアップも目立ちます。

西川:海外のトラックメイカーも含め、その辺りも意識しました。もちろんイナズマを通して知り合い、その際、「いつか一緒にやりましょう」との約束が果たされたアーティストも多いんですが。それらも含め、彼らが思う西川貴教像や彼ら自身の世界観、彼らが持っている若い感性にどれだけ自分がコミット出来るか?への期待や挑戦もありました。

――なかでもFear, and Loathing in Las Vegasの楽曲であれば、故Keiさんの意思も入ってるでしょうし。

西川:彼に際しては本当に残念です。でも、だからこそ残してくれた楽曲はちゃんと僕が繋いでいきたいし、彼が残してくれたもの、また残されたメンバーたちが立ち上がって次を目指して進む時には少しでも僕が協力できればなと。そういった関係性もイナズマが生んでくれたものでした。

――布袋寅泰さんとのコラボはいかがでしたか?

西川:これまでもお互いの作品への参加はありましたが、一つの楽曲をお互いゼロから作っていくのは今回が初で。せっかくなので挫組も含め今までになかったものを提示したく、自分からお声をかけさせていただきました。自分としても布袋さんのこれまで無かった面を見たかったですし。

――結果いかがでしたか?

西川:いい意味で、どんな切り口で、どんなアプローチをしても「布袋寅泰」という絶対的なものがある、そんな強さを感じました。
僕からも布袋さんのフレーズ等へのリクエストをしたり、布袋さんからも「どうしてもこのキーやメロディで歌って欲しい」等の強い希望もあったり。お互い引き出し合い昇華し合えました。お互い前に出ながら一つの作品が作れた。それが嬉しくて。これぞコラボレーションって実感がありました。

――それらも含め、新たな西川さんの側面や可能性がさまざまな形で垣間見れる1枚でした。

西川:合わせて、「次は何をやるんだろう?」との期待感も持ち合わせた作品にはなったかなと。これからも西川貴教というシンガー像の新たな面を探っていったり、見つけていく日々は続いていきますから。

取材・文/池田スカオ和宏 撮影/石井小太郎

リリース情報


1stアルバム『Singularity』
2019年3月6日(水)発売





ツアー情報


Takanori Nishikawa 1st LIVE TOUR [SINGularity]
4月13日(土) 福岡・Zepp Fukuoka
open17:00 / start18:00
4月20日(土) 広島・CLUB QUATTRO
open17:00 / start18:00
4月26日(金) 東京・Zepp DiverCity TOKYO
open18:00 / start19:00
4月27日(土) 東京・Zepp DiverCity TOKYO
open15:00 / start16:00
4月30日(火・祝) 宮城・SENDAI GIGS
open17:00 / start18:00
5月01日(水・祝) 宮城・SENDAI GIGS
open14:00 / start15:00
5月02日(木・祝) 大阪・Zepp Osaka Bayside
open18:00 / start19:00
5月03日(金・祝) 大阪・Zepp Osaka Bayside
open14:00 / start15:00
5月10日(金) 愛知・Zepp Nagoya
open18:00 / start19:00
5月11日(土) 愛知・Zepp Nagoya
open15:00 / start16:00
5月18日(土) 新潟・新潟LOTS
open17:30 / start18:00
6月07日(金) 東京・EX THEATER ROPPONGI
open18:00 / start19:00
6月08日(土) 東京・EX THEATER ROPPONGI
open15:00 / start16:00
※開場・開演時間は変更になる場合があります。
▼チケット
¥6,800 (税込/ドリンク代別) ※3歳以上有料
※西川貴教オフィシャルファンクラブ[turbo]会員限定先行予約は会員向けに別途ご案内いたします。

フェス情報


イナズマロック フェス 2019
2019年9月21日(土)滋賀県草津市 烏丸半島芝生広場
2019年9月22日(日)滋賀県草津市 烏丸半島芝生広場
※滋賀県立琵琶湖博物館西隣 多目的広場
出演アーティスト:後日発表
チケット詳細:後日発表
主催:イナズマロック フェス 2019 実行委員会

西川貴教 official web site