
歌詞の様々なところに物語の場面が回想できるような描写を散りばめていった
――今回のシングル「Touch off」ですが、アニメ『約束のネバーランド』のオープニング曲となっています。アニメ側からのオファーで作られた楽曲ですか?
TAKUYA∞:そうですね。オファーをいただきました。2018年の年始に曲作りの合宿をしていた時の1曲目に出来た曲なんですが、オファー自体は夏頃にいただきました。
――原作はご覧になりましたか?
TAKUYA∞:もちろん。
――原作の印象はいかがでしたか?
TAKUYA∞:自分たちがオープニングを担当するのは1巻から5巻くらいまでの物語の部分です、ということで読み始めたんですが、面白すぎて全巻買って読んでいって、それから歌詞を書き出しました。だから、歌詞の様々なところに物語の場面が回想できるような描写を散りばめていったんです。実際、この作品のファンの人たちが歌詞を全部見ていくと、僕がこの物語のどこについてどんなことを言っているのか、ということがわかってもらえると思うし、そこからさらにアニメにもハマっていってもらえるだろうな、と思っています。それくらい作品との整合性の高い楽曲が出来ました。
――この『約束のネバーランド』の中で、ご自身に一番刺さったのはどんな部分だったんでしょうか。
TAKUYA∞:自由を求めるところ。この物語はすごいですよね。展開も。でもその中でも、そもそもは家畜として生まれてきた彼らの、自分の手で運命を変える、という強い想いは刺さりました。

――特に作品側からのオーダーというのはあったんですか?
TAKUYA∞:アップテンポのものを、ということ以外はなかったです。キーワードみたいなものも特にはなかったので、想いのままに書きました。
アニメとの整合性を高めながら歌詞を書いていった
――そんな一曲はどのようにして生まれたのでしょうか。
TAKUYA∞:元々、2018年1月に出来た段階ではアコースティックギターとドラムだけで、もう少しヒップホップ感の強い曲だったんですが、『約束のネバーランド』のお話をいただいてから少し手直しをしていって、アコギのアタック感とドラムでグルーヴを作っていくAメロとBメロがあって、サビではやっぱり疾走感とUVERworldのロックバンドとしての圧を出すためにディストーションをかけて構築していきました。
――でもこの曲はアニメタイアップで、リスナーが最初に受け取るのはオープニングの89秒。その独特の作りに対して苦心したのはどんな部分ですか?
TAKUYA∞:アニメバージョンのために歌い直しをしています。通常のバージョンの方はもうちょっとエッジが効いた、歪んだ音で歌っているんですけど、アニメの方ではアニメの中で、テレビで聴かれる音として改めて歌い直しをしているんです。本来なら、4分かそこらの楽曲をアニメ用につまんで、アニメの中で流すんだと思うんですが、僕らはそこでアニメ用にレコーディングをしました。そこは『約束のネバーランド』のために苦心した部分ですね。

――歌詞も最初に楽曲が生まれたときとは作品との出会いによって変化があったと思いますが、ご自身の中でこの曲が『約束のネバーランド』に出会ったからこその肝として発生したものだと思うのはどんな部分ですか?
TAKUYA∞:「FIRE」というところですね。火が持っている特性であったり、自分たちにとって火の意味合い……心に灯す火であったり、いろいろな意味を持っていますが、原作の中でも火というのはすごく重要な意味のあるもので。もちろん自分たちがオープニングを担当するときにはそこまでの意味にまで到達はしないとは思っていたけど、それでも物語の中でこの「FIRE」がすごく意味があって。この言葉が出て来たときに、彼らの運命を変える瞬間の絵が浮かんできたんですよね。
――今後の展開でももちろんそうですが、第一話でも火や松明、そういったものが非常に印象的に描かれていましたし、エマ、ノーマン、レイたちの心に宿る火も決して消えない強さを思わせますよね。
TAKUYA∞:自分たちの歌っているところではそこまで鮮烈に出てこないまでも、それでも整合性を高めながら描いていきました。きっと作品のファンの人には気づいてもらえるかなと思います。
――記憶が正しければ、ここまでコラボする作品と親和性の高いものというのは珍しい気がします。UVERworldが放つメッセージと作品の持っているテーマとの親和性が意図せずとも強い、というケースはこれまでにもありましたが。
TAKUYA∞:なかったですね。それだけこの作品に想いが重なったのはあります。
――でも『約束のネバーランド』の持つ“生きる”というメッセージと、“生きる”ことを歌い続けるUVERworldというのは絶対的なマッチングだったんだな、と今改めて感じます。
TAKUYA∞:バンドのテーマと。うん。そうですね。

――アニメのオープニングから先の部分は、音源としてみなさんのお手元に届いて初めて知ることになりますが、ここの部分ではどんなことを届けたいと考えられたのでしょうか。
TAKUYA∞:アニメで流れる部分が全てとはもちろん思っていなくて。そこに入りきらなかった想いが4分ちょっとで完成する、というのはあります。

歌詞の意味に重厚感が欲しかった
――一番出て来るのに苦労した歌詞はどの部分ですか?
TAKUYA∞:最後。語りの部分ですね。歌詞はほとんど自分の中では出来上がっていて、いろんな言葉を蓄えているんですけど、Aメロもメロディよりも詞に重きを置いて書いていくというよりも今回の曲に関してはもっと譜割りだったりアタックの強さとかリズム感が大事だと思いながら言葉を選んでいく中で、曲の重さがもう少し欲しいと思って。曲自体の、詞の持つ重厚感が欲しくなったんですね。それで一番最後に、肝になるようなものをしっかりと書きたくて、言葉を出していきました。
――重厚感。
TAKUYA∞:歌詞の意味に重厚感が欲しかった。何の意味もない歌詞を書くことだってもちろんあるんですけど、この曲に関してはそうで。重すぎない曲にしたいとは思っていたんですけど、この語りの部分がない時点ではまだちょっと重さが足りなくて。この部分が最後につくことによって、この曲にいい重さが出来たなと思っています。
――音の部分ではどんなことを意識されたのでしょうか。
TAKUYA∞:マイナスの美学。引き算の美学です。インストゥルメンタルを聴いてもらえればわかると思うんですが、今回は音数が少ない。しっかりと全レンジ、隙間なく音が入ってはいるけれど、種類が少ないんです。シンプルにした方がわかりやすくなるというか。どんなことを歌っているのかがしっかり伝わるようになるから。
――ライブですでに演奏されていますが、オーディエンスの反応はいかがですか?
TAKUYA∞:ライブで、とてもカッコいい曲が出来たな、と思っていますし、自信作ですし、ライブでやるたびに育っていっている曲でもあります。僕らのファンの人たちは結構、瞬発力があって、反応もいいので、すごく盛り上がってくれます。でもまだまだ育っていくだろうな、とも思っています。もちろん、アニメで流れているところから先の、掛け合いの部分とかはまだ全然、これから盛り上がっていくようになると思うんですが、ライブで聴いて、喜んでやってくれています。発売後にはお客さんが歌う部分がたくさんあるから、その一体感がまたライブをカッコよくしてくれるんじゃないかと思いますね。
――そしてカップリングには「ConneQt」です。こちらの曲はどのように作っていかれた曲でしょうか。
TAKUYA∞:これも「Touch off」と同じ時期に出来ました。2018年の3月くらいにメンバーと北海道に合宿にいったときに作っていた曲ですね。この時期、「ODD FUTURE」と「Touch off」と「ConneQt」と同時に作っていました。サビだけが出来た当時のまま残っていて。綺麗に見せようとしても汚れていくものがあるよね、っていうその歌詞がある上で、どの方向にもいける抽象的な表現でもあるのでかっちゃん(克哉)と相談して、自分たちに今ないもの、詞の幅を拡げるという意味でこういう切ないラブソングにしました。
――楽曲もそのテーマに合わせて?
TAKUYA∞:それは敢えて意識せず、おしゃれな音で、ということで(メンバーに)作ってもらいました。「Touch off」のような曲とはまた違うアプローチでライブを盛り上げたいという想いがあった。このテンポでも僕らはライブを盛り上げたいよね、という話をしているんですよ。自分たちの立ち位置について、僕もスタンドで動かずに歌うのではなくて、このテンポ感でこの音像で盛り上げられるようなものを作りたくて。最近で言うと「ALL ALONE」だったりとか。あそこで盛り下がらない。歪みを使わず、テンポも遅めで。でも空気感が、バラードで休憩、として見るのではないものにしたい、と思いながら作っていました。
昼夜2公演も全然楽勝
――非常にライブを盛り上げる楽曲がまた増えましたが、昨年末には男祭りの前に女祭りをやる、昼間の日本武道館と夜に横浜アリーナという祭り2公演をTAKUYA∞生誕祭で敢行しました。こちらはいかがでしたか?
TAKUYA∞:久しぶりの女祭りでしたけど、誕生日にありがたかったですね。ただ「夜」って言いそうになってしまいましたけど(笑)。でも昼夜2公演も全然楽勝でした。喉の不調もなく。それに、やっぱり女の子はいいですね。ライブをしていても気持ち良かったです。昔の、女性ファンが多いのを嫌がっていたのは何でだったんだろうって今ではよくわからないですから。とにかく楽しかったです。
――そのライブのMCでもおっしゃっていましたが、TAKUYA∞と走るぞ、というランナーたちがすごい数やってきた、とのことでしたが。
TAKUYA∞:武道館には178人来ました。速いヤツがめちゃめちゃいる。箱根駅伝で走る現役のスピード出してくるヤツとかもいる。でも、ランはスピードじゃない。重さと深さですよ。あの日は誕生日だったこともあって、一緒に走ってくれたヤツらに「ありがとう」って言いました。一緒に走ってくれて、ありがとうって。ボクシングのパッキャオ選手がキャンプに行ったときに500人と走ったらしいんですよ。だから僕の178人はまだまだ自慢にもならないし、600人を超えてから自慢したいと思っています。今年中には達成したいですね。舐めた格好とか私服で走ろうというヤツは、僕は「帰れ」って帰していますから。本気で走るやつだけ来い、と。それで600人を達成させたいです。
――もう3月になりましたが、そんな今年はどんな年にしたいですか。
TAKUYA∞:3年くらいウズウズしているものを爆発させたいです。
【特集TOP】UVERworldと『約束のネバーランド』を繋ぐのは“FIRE”――TAKUYA∞の胸に宿る炎