2017年に放送され、大きな話題を呼んだドラマ『やすらぎの郷』の続編『やすらぎの刻~道』(テレビ朝日系・月~金11時30分~)がいよいよ放送開始となる。

脚本家・倉本聰の「シニア向けのドラマ枠を」という呼びかけでスタートした「帯ドラマ劇場」枠。
『やすらぎの郷』に続き『トットちゃん!』『越路吹雪物語』とシニアのハートをガッチリつかむドラマが放送されていたが、その後、充電期間に。今回の『やすらぎの刻~道』で1年振りの復活となる。

前作の放送が2年前だっただけに、どんなドラマだったのか覚えていない人も多そうなので、放送開始直前にざっくりと振り返っておこう。

『やすらぎの郷』ざっくり振り返り


舞台は、長年テレビや映画の世界に貢献してきた者だけが無料で入れる老人ホーム「やすらぎの郷 La Strada」。

数々のドラマをヒットさせてきた脚本家・菊村栄(石坂浩二)は、認知症となった妻・律子(風吹ジュン)を看取った後、「やすらぎの郷」に入居することを決めた。

「やすらぎの郷」では、往年の大女優・「お嬢」こと白川冴子(浅丘ルリ子)や水谷マヤ(加賀まりこ)、菊村の妻・律子の親友だった井深涼子(野際陽子)、歌手から女優へ転身した三井路子(五月みどり)、戦前からの大スター・「姫」こと九条摂子(八千草薫)などなど、かつて菊村と一緒に仕事をしてきた面々と再会する。

「人生の最終回」ということでヒマを持て余している老人たちと共に、色恋沙汰や嫉妬、遺産問題、詐欺事件、幽霊騒動などに巻き込まれ、慌ただしくも楽しく暮らす菊村。
しかし、ふとした時に思い出すのはやはり、亡き妻・律子のことだった。

律子との間にはひとつ苦い思い出が。

若き日の菊村は、自分を慕ってくる若手女優・安西直美(清野菜名)に心奪われていた時期があり、そのことが原因で妻・律子は自殺未遂を起こしていたのだ。

そんなある時、菊村は、彼の大ファンだという脚本家志望の少女・榊原アザミ(清野菜名)と出会う。直美と生き写しの彼女は、なんと直美の孫だったのだ。

アザミから、直美が東日本大震災の津波で亡くなっていたことを知らされ、ショックを受ける菊村。


ビーチで水着ギャルをのぞいたり、秀サンこと高井秀次(藤竜也)がチンピラたちの金玉を潰したりと、老人たちのドタバタな日々を描くとともに、戦争や震災、原発、芸能人の孤独死など骨太なテーマも扱っていた『やすらぎの郷』。

最終週には、直美が被災した東北へと旅に出た菊村が、現地で落ち合ったアザミに対し「やれるかも!?」な期待感でテンションを上げまくった挙げ句、泥酔してお漏らしをするという衝撃的な結末を迎えた。

八千草薫の代役に風吹ジュンって年齢差ありすぎじゃないか?


老人たちそれぞれのエピソードが細切れに描かれ、「で、アレはどうなった?」なことも多く残されたまま最終回となった『やすらぎの郷』だけに、待望の続編となる『やすらぎの刻~道』だが、単なる続編というわけではないようだ。

『やすらぎの郷』の続きとして、老人ホームの面々のその後を描く『やすらぎの刻』。そして、菊村が手がける新作脚本『道』の脳内ドラマ。このふたつが交錯しながら進行していく。

ドラマの中で劇中劇が繰り広げられるのは珍しくないが、『道』は昭和から平成まで80年間に渡る超壮大なドラマになるという。
そんな劇中劇は前代未聞だろう。

『道』の昭和編で、メインとなる根来しの・公平夫婦を演じるのは清野菜名と風間俊介。平成編で夫婦を演じるのは風吹ジュンと橋爪功だ。

当初、平成編の根来しの役は八千草薫が演じると発表されていたが、八千草のがん闘病にともなう降板により、風吹ジュンへと交代している。

倉本聰は、前作で八千草演じる九条摂子を殺してしまったことを後悔しており、八千草を再登場させるための苦肉の策として「脳内ドラマ」という形態を考案したと語っていた。八千草の降板で気落ちしていないか心配だ。


ただ、八千草の代役として風吹ジュンというのは、さすがに年齢差がありすぎる(88歳と66歳!)。

1年間続くドラマだけに、風吹の代役で間をつなぎつつ、八千草の復帰を待って、しの役をもう一段階歳を取らせて再登板させる計画なんじゃないかと踏んでいるのだが、どうだろうか?
「やすらぎの刻~道」本日スタート。前作「やすらぎの郷」をざっくり振り返ってみたら凄まじかった
イラストと文/北村ヂン

常盤貴子や松岡茉優のその後はどうなった!?


『やすらぎの刻』の方では、前作でお馴染みの面々に加え、新規キャストが増えている一方、なぜかいなくなっているメンバーも。

認知症がひどくなり別の介護施設に移されていった及川しのぶ(有馬稲子)や、亡くなった野際陽子が演じていた井深凉子あたりがいないのは仕方ないとしても、三井路子(五月みどり)がシレッといなくなっているのが気になる。……スケジュールの都合だろうか?

「やすらぎの郷」スタッフでは、コンシェルジュの松岡伸子(常盤貴子)、バー・カサブランカのバーテンダー・ハッピー(松岡茉優)もいなくなっている。

伸子は、マロこと真野六郎(ミッキー・カーチス)と超・年の差婚をするのしないのでモメていただけに、その後をキッチリ描いてもらいたいところだが……寿退社したってことか?

ハッピーにしても、前作でレイプをされた上に、老人たちからデリカシーのないことを言われまくるというヒドイ目に遭っていたので、元気に立ち直っている姿を見せてもらいたいのだが。

ちなみに、ハッピーの後釜として、バー・カサブランカのカウンターに入っているのがホッピー(草刈麻有)というのには笑った。
何だそのネーミング。

新規キャストで気になるのはやはり橋爪功だ。

『道』平成編で根来公平を演じるとともに、『やすらぎの刻』の方でも水沼六郎という新入居者を演じるようだ。

『やすらぎの郷』といえば、石坂浩二と元嫁・浅丘ルリ子&元恋人・加賀まりこを共演させるなど、えぐいキャスティングをブチ込んでくることでも話題となったが、橋爪功の起用もある意味えぐい。

前作『やすらぎの郷』には橋爪功の息子・橋爪遼が介護士役で出演していたものの、覚せい剤取締法違反で逮捕されて途中降板しているのだ。

橋爪功は、そんな因縁のあるドラマに、どんな気持ちで出演するのか……。


現段階では、どんなドラマになるのかまったく予想がつかないが、とにかく「これが最後」と語る倉本聰、渾身の作品(前作の時も「これが最後」って言ってたけど)。

月~金の帯ドラマであることに加え、放送期間も1年間を予定している。NHKの朝ドラや大河ドラマ以上の超大作だ。

一年間、じっくり楽しませてもらいたい。
(イラストと文/北村ヂン)

【配信サイト】
Tver

『やすらぎの刻~道』(テレビ朝日)
作: 倉本聰
演出:藤田明二、阿部雄一、池添博、唐木希浩
主題歌: 中島みゆき「進化樹」「離郷の歌」「慕情」

音楽:島健
チーフプロデューサー:五十嵐文郎(テレビ朝日)
プロデューサー:中込卓也(テレビ朝日)、服部宣之(テレビ朝日)、山形亮介(角川大映スタジオ)
制作協力:角川大映スタジオ
制作著作:テレビ朝日