今週はまさかの丸々、菊村栄(石坂浩二)の脳内ドラマ「道」パート。
「やすらぎの郷」の続編「やすらぎの刻」パートと、脳内ドラマ「道」パートが入り乱れる構成となるとは聞いていたが、どっちか片方だけの週もあるのか。
正直……「やすらぎの郷」の老人たちが待ち遠しいです!
今週の「道」
山梨の集落に暮らす養蚕農家の四男・根来公平(風間俊介)は、浅井家から根来家に引き取られてきた浅井しの(清野菜名)に初恋をした。兄の三平(風間晋之助)と妙に仲よさそうに見えるしのにモヤモヤし……。
そんな彼らが通う分校の教師・室井(真山勇樹)が特高警察に逮捕された。仲間内で作っている文集に反戦的な文章を寄稿していたということで、危険思想を疑われ取り調べを受けているらしい。
室井先生と親しくしていた三平は、大地主の息子・犬山(澄人)たちに「お前もアカじゃないのか」と絡まれるが、そこにしのが現れ、モップの柄をなぎなたのように使って金玉に強烈な打撃を与える。
そんな頃、養蚕業がダメになった、しのの実家・浅井家は家も桑畑も放棄し、集落から出て行ってしまう。しのは正真正銘、ひとりぼっちになってしまったのだ……。

情けない公平と、戦争に前のめりなしの
しのに恋をしつつも、何事にもダメダメな公平の情けなさが際立っていた今週。
兄が危機に陥っていても見てるだけ。しのが助けに来ても見ているだけ。いじめっ子たちに脅されたら嘘をついて兄を呼び出す……。
なぎなたの達人であるしのの強さを目の当たりにし、自分も剣道でもはじめてみようかと決心するが、すぐにへこたれて「しのちゃんにうんと取り行ってそばで守ってもらう方が早いか」という結論に落ち着いたのは、さすがにクズすぎて笑ってしまった。
しのが叩きのめした犬山家に謝罪しに行った帰り道。
それでいて噂話が好きでデカイ口を叩く。やたらと金玉情報に詳しい。悲しいまでの情けなさ……。
クズといえば、室井先生のクズ感もなかなかのものだった。
共産主義あたりにかぶれた教師なんだと思われるが、「アカだ」と特高警察ににらまれたため、危険思想とされる書籍を焼こうと思うも「なんとも惜しい」ということで、書籍を隠すのを生徒である三平に依頼する。これだから口ばっかで立派な政治思想を語る人は……。
結局、三平はこの依頼を引き受け、下請けとして公平にも手伝わせようとする。
「やだよぉ~ボク、後で面倒になるのぉ~。他の誰かに頼めばいいじゃない。それとも兄ちゃんがひとりでやるかぁ~」
公平は公平で、清々しいまでの情けなさ。
しかし、数々の情けなエピソードを思い返した公平は決心する。
「ボクももう14なのだ。
情けなさが爆発していた公平が「男」に目覚めた! ……が、そこは「ツイテナイ男」公平。何かよからぬことに巻き込まれる予感全開だ。
一方のしのちゃんは、何かトラブルが起こるとどこからともなく現れ「鞍馬天狗のように」なぎなたの技を駆使してガキ大将たちをなぎ倒していく。公平が憧れてしまうのも分かるカッコよさ。
しかし、当時の大部分の日本人たちがそうだったように「日本は戦争に勝つ」と信じ込んでおり、戦争協力に前のめり。「戦争はいけない」と生徒に教えている室井や、その思想に感化されている三平には反対の立場だ。
いかにも、これからの歴史の荒波に翻弄されそうな性格……。彼女は彼女ですごくつらい運命が待っていそうで心配!
老人たちの活躍もお願いします
「道」のシナリオを書いている(という設定の)菊村にとって「原風景を描く」というのが大きなテーマであるように、倉本聰が考えている本作のテーマも「原風景」なのだろう。
倉本聰は東京出身ではあるが、戦時中、山形県や岡山県への疎開経験がある。今週のエピソードは当時の思い出も活かされているのかも知れない。
戦時中の貧しい村、反戦思想を教える教師、特高警察、戦争に賛成するいじめっ子……それぞれ丁寧に描かれてはいるのだが、正直、戦時中を描いたドラマや映画で何度も見たエピソードでもある。
倉本的には、「やすらぎの郷」の続編よりも「道」の方を書きたかったんだろうな……と感じさせるものの、さすがにこの地味な物語では企画が通らなかったのではないだろうか。
苦肉の策として、ヒットした「やすらぎの郷」の続編という体を取って、劇中劇で自分の本当に書きたかったドラマを描いているのだろう。
今のところ、よくある戦時中ドラマ……という印象が強い「道」だが、その中にあって、とにかく「ツイテナイ男」公平と、やたらと格好いいしのというキャラクターはやはり輝いている。
……とはいえ、「やすらぎの郷」の老人たちの特濃なキャラクターと比べてしまうとまだまだ薄味。「道」もいいけど、もっと老人たちも登場させて欲しいッ!
【配信サイト】
・Tver
『やすらぎの刻~道』(テレビ朝日)
作: 倉本聰
演出:藤田明二、阿部雄一、池添博、唐木希浩
主題歌: 中島みゆき「進化樹」「離郷の歌」「慕情」
音楽:島健
チーフプロデューサー:五十嵐文郎(テレビ朝日)
プロデューサー:中込卓也(テレビ朝日)、服部宣之(テレビ朝日)、山形亮介(角川大映スタジオ)
制作協力:角川大映スタジオ
制作著作:テレビ朝日