SNSは公の場だ。パーティー会場のイメージでやっていたほうがいい。

しかも、通りすがりの人が乱入できてしまう割とオープンなパーティーだ。
そういった場で、ときどき発言権が回ってきて、みんなに何かひとことを言う。そんなとき、議論をふっかけたり、誰かの非難したりするだろうか。しない。

「オープンなSNSは議論する場ではない」と考えたほうが、スッキリする。

とはいえ、リアクションがあって、それに返信して、対話になることもある。
それは歓迎だ。
だが、対話が議論になったとたんにSNSでやることじゃなくなる。炎上してしまうことにもなりかねない(このあたりの感覚を体験できるカードゲーム『大炎笑』を作った)。
そこで、“引き際”を明確にしておいたほうがいいと考えて、以下の条項を作った。
議論の引き際のための11のルール「文脈事故」を防ぐために

「議論の引き際のための11のルール」

【“悪口言い出した人は泣いてるのでそっとしておいてあげよう”の法則】


「キモい」「バカ」「アホ」「死ね」など錯乱しはじめたら、落ち着くのを(三日以上)待ってあげる。礼を失した人には、頭を冷やす時間をあげよう。
事例:「この人は頭が悪いのか、心が濁ってるのか判別が付かないけど」「へた」「黙れ」「信者だな」「よほど偉いのだろう」「無能」等。


【“常識という「我々」の向こうに逃げ隠れした場合は追い詰めてはいけない”の法則】


「〜は常識だ」「〜は非常識だ」と言い始めたら、もう追い詰めないようにしよう。まとめにはいろう。
類例)「〜のどこがいいんだ? わからん」と言って批難するケース。「〜するのが普通」「〜するのが当たり前」「分かってないなら黙れ」。当事者じゃないのに当事者ぶって「〜に謝れ」も同ケース。

【未来志向でいこう】


言い分が途中で変わっても、「最初は違ったじゃないか」と過去を責めない。意見が変わったことをよろこぼう。


【言ってないことをでっちあげて批難するひとりずもうには……】


引用符でくくりながら正確な引用でない人には、その点だけを指摘してあげて、それ以外はそっとしておいてあげる。
また引用すらせずに、書いてないことを勝手に読み取って反論してくる人は、もっとたちが悪い。
勝手な解釈、拡大解釈をする人は、こちらのテキストに怒ってるのではなく、自分の中にある問題に怒ってる場合が多いので、そっとしておいてあげよう。

【読む力ってけっこう大切】


微妙にズレて解釈されて返信がくると「いやいや、そうじゃないです」と訂正したくなる。だが、訂正を相手にメッセージしても、その訂正を微妙にズレて解釈して、よけいにこじれる。
「言ってるのに等しい」「たいして変わらないことを言っている」「ねじ曲げていっているのではなくて、言い換えているだけ」と言い出す人もいる。
しまいには、相手から絡んできたのにもかかわらず「変なのに絡まれた」などと言い出す。
今後さらにねじ曲げられる可能性が大きいので、読解能力がつくまで(一年以上)待ってあげよう。

事例:「〜と取られても仕方ない」「どう考えても〜だ」「どう見ても〜だ」「~と読めます」「~と書いてますよね」

【勝手に心を読み始めたら】


「あなたは〜と思ってますね」「怒らせてしまったみたいですねぇ」「〜な状況になったらそんなこと言わないくせに」「あなたの想定してる何かがあるはずです」と勝手な妄想で他人の気持ちを読解しはじめたら、超能力妄想がおさまるまで(三日以上)待ってあげる。
勝手なレッテル貼りも、このパタン。「感情的だ」「攻撃的だ」「特別な立場だから」といったレッテルを貼り出すと、これも議論にならない。
超能力妄想がおさまるまで(三日以上)待ってあげよう。

【逃げ道をふさがない】


対話の内容と関係ないことを言い始めたら、そっちにのってあげる。
逆に、「逃げないでくださいよ」「はい論破」「こちらが正しいと分かりましたね」と言う人もいる。対話をして解決するためではなく、言い合いになっているだけなので、「どうぞ、あなたの勝ちですよ」と心の中でつぶやいて、そっとしておいてあげよう。


【急に弱者になる】


公のネットの場で相手の悪口を書いたうえで、それに対してリアクションすると、急に弱者になるケースは多い。「強者の理論だ」「弱者を晒し者にするのは酷い」「想定外の大きな場に出すのは問題」とか言い出すケース。泣きながら逃走して何か言ってる状態に近いので静かに逃してあげよう。

【文脈事故】


RTや引用によって一部分だけを読んで、かっとなって反論してくるケース。感情的な反論で、相手が自分をフォローしていない場合はこのケースを疑ってみよう。文脈がズレてることによる事故だから、文脈事故であることを伝えて、それまでの対話の全文を読んでもらおう。

【原因違い】


異論を唱える原因が実は別のところにある場合がある。Aについて腹を立てたけど、それは言いにくいのでBを批難するというケース。こうなるとBについていくら対話しても虚しい。
その人の過去の発言を読んだり、相手の背景を考えてみよう。相手の気持ちを類推することで解消することがある。

【要因違い】


特別な経験が異論の要因になっている場合がある。包丁で刺されたことがあるので、包丁を見るだけで「わーっ」って言ってしまう人に「包丁が悪いのではなくて刺した人が……」と言ってもなかなか通じない。個人的な要因をもとに一般論として語っている場合も多い。そのような気配をさっしたら、ゆるやかに解散しよう。

【間違いを謝罪しない】


間違いを指摘されて、それを認めても謝罪しないパタンもある。自分が持ちがした話題なのに「そのことは置いておいて」とか言い出して別の攻撃をしかけてくる。相手はもうこちらを屈服したいだけの怒りで視野が狭くなっている状態だ。そっとしておいてあげよう。

【論点がずれたら1日置く】


論点がずれてるやりとりが二往復したら、1日置く。
論点がずれる原因は、視野狭窄になっているか、ずらしたいか、だ。
どちらにしろ続けていてもズレがなかなか解消せず、双方が不愉快になる可能性が高い。
実際の対話だと、表情や、言葉の補足が可能なので、ズレを補正することが容易だが、テキストだとそういった微妙な補正がむずかしい。
読む側も、多様な解釈ができるために、ズレた視点で解釈してしまって、双方が、「なんで、そんなこと言ってるんだろう」って思いながら、テキストをやりとりすることになる。
こういう場合、一日置くと、お互いが、ゆったりと考えることができて、相手のテキストをもうすこし違う視点から読むことも可能になる。

それでもついついやってしまう人へ


「わかっていても、やめられない。ついついリアクションしてしまう」という場合もあるだろう。その場合は、せめて相手のツイートをさかのぼって、じっくり読むことをオススメ。
そうすると、その人が何故、そんなことを言ってくるのかが分かることが多い。
たとえば、
・やたらめったら、だれにでも暴言を吐いているタイプ
・勘違いしやすいタイプ
・読んだり書いたりするのが不自由なタイプ
・過去に別のことで逆恨みしていることがある
などなど。
それが分かれば、少しは心穏やかに対応できる。(テキスト:米光一成