前週は、梅宮辰夫演じる幽霊に向かって石坂浩二がこれまでのあらすじを説明するという、アバンギャルド過ぎる総集編に驚愕させられたが、今週は「道」パートでのシリアスな展開。
しの(清野菜名)、公一(佐藤祐基)の元恋人・紀子、熊のフミコ、いとこの鉄兵(平山浩行)……様々な人&熊との別れが描かれた。
無邪気な女の子が軍国少女化してしまった悲しみ
かねてより「お国のために、たとえば従軍看護婦のような、直接的に貢献できる仕事をしたい」と言っていたしのが家を飛び出してしまった。
しのは失踪する前、三平(風間晋之助)とこんな話をしていた。
「もしも前線でお前の目の前に傷ついた敵兵がいて、助けを求めたらお前、助けるか? 放っとくか?」
「助けないわ、だって敵なんでしょ」
「敵も人間だぞ」
従来の、戦争をテーマにしたドラマや映画では、戦時中でありながら主人公たちは「戦争はよくないもの」「敵も人間」と主張しているケースが大半。戦争協力に前のめりで「敵なら助けない」とまで言い切っちゃうのはかなり斬新なヒロイン像と言えるだろう。
ただ、当時のリアルな雰囲気は「敵も人間」なんて言えるような状況ではなかったはずだ。もともとは「敵も味方」的な考え方を持っていたとしても、時代の空気に流されて「敵なら助けない」と言っちゃう人がほとんどだったんじゃないだろうか。
思い返してみると初期のしのちゃんは、無邪気でちょっとおバカなだけの女の子だった。それが戦争に突入した前後から、どんどん暗く、思い詰めたような表情を浮かべるようになり、ネトウヨ的な発言が増えていった。
時代の空気に思いっきり影響された結果、軍国少女・しのが形成されたのだ。
反戦思想を持つ三平は、好きになった女の子がどんどんヤベエ軍国少女と化していくのを見るのはつらかったことだろう。
ちなみに、暗くてアレなかんじになったしのの代わりにバカを担当するようになった、根来家の次女・幸子(木下愛華)は今週も相変わらずいいキャラをしていた。
殺された熊のフミコの肉を食う時に「フミコ、おいしいよ。
真っ昼間のテレビドラマで「人間のお肉もおいしい」なんて言わせるとは、倉本聰、スゴイことをさせよるわ。

鉄兵兄ちゃん、徴兵から逃げる
しのとは逆に、まったく時代の空気を読まず、とことんマイペースを貫いていたのは根来家のいとこ・鉄兵だ。
届いた赤紙をその場で破り、「殺すのもイヤだし、殺されるのもかなわん。わしゃ逃げる」と山奥に逃げて行った。
鉄兵は常々、「食うためでもないのに生き物を殺すのは性に合わん」と語っていた。
長年のライバルであり、親しみも感じていた熊のフミコを殺した際にもキッチリ食べていただけに(唐突に生肉を持って根来家に出現した姿は若干、サイコパス感があったけど)主張が一貫しているとも言える。
ただ、ちょっと前に徴兵検査が近いて不安になっていた三平が逃げ出す相談をしてきた時には、
「家族にどえらい迷惑がかかる!」
「俺は力を貸せん!」
と説教をかましていたのに、いざ自分に赤紙が届いたら逃げるんかいと。
結果、根来家にメチャクチャハードな取り調べが入るなど、思いっきり家族に迷惑がかかっている。
公平以上に「ついてない」三平
鉄兵の徴兵拒否で一番被害を被ったのが三平だろう。
「ついてない」というのは公平(風間俊介)の口癖だが、どちらかというと「ついてない」のは三平じゃないだろうか。
仲良くなった女の子は軍国主義にかぶれていくし、尊敬した室井先生は特高警察に取り調べを受ける。その室井から危険思想とされる書籍を隠す厄介な頼み事をされたり、室井の嫁・小夜子から「本を焼け」というさらに厄介な指令を受けたり……。
で、今回はいとこの鉄兵が徴兵拒否をしたせいで、室井との交流をほじくり返され、特高警察に取り調べを受けることになってしまった。なんなら鉄兵の代わりに三平が徴兵されるんじゃないかという勢いだ。……ついてない!
取り調べの中で、小夜子と鉄兵がかつて男女の仲であったことも発覚。世捨て人みたいな顔してるけど、そんな感じだったのかよ、鉄兵兄ちゃん!
次週予告では、しのちゃんが「戦争っていうのがどんなに怖いものか、やっと少し分かったの」と泣きながら語っていた。やっと分かってくれたのか! 三平との仲は修復できるのか、公平とはいつ結婚するのかも気になるところだ。
(イラストと文/北村ヂン)で
【配信サイト】
・Tver
『やすらぎの刻~道』(テレビ朝日)
作: 倉本聰
演出:藤田明二、阿部雄一、池添博、唐木希浩
主題歌: 中島みゆき「進化樹」「離郷の歌」「慕情」
音楽:島健
チーフプロデューサー:五十嵐文郎(テレビ朝日)
プロデューサー:中込卓也(テレビ朝日)、服部宣之(テレビ朝日)、山形亮介(角川大映スタジオ)
制作協力:角川大映スタジオ
制作著作:テレビ朝日
【配信サイト】
・Tver
『やすらぎの刻~道』(テレビ朝日)
作: 倉本聰
演出:藤田明二、阿部雄一、池添博、唐木希浩
主題歌: 中島みゆき「進化樹」「離郷の歌」「慕情」
音楽:島健
チーフプロデューサー:五十嵐文郎(テレビ朝日)
プロデューサー:中込卓也(テレビ朝日)、服部宣之(テレビ朝日)、山形亮介(角川大映スタジオ)
制作協力:角川大映スタジオ
制作著作:テレビ朝日