吉本新喜劇の座長でフェス主催者・小籔千豊の周りになぜ人は集まるのか

 
吉本新喜劇の座長でフェス主催者・小籔千豊の周りになぜ人は集まるのか

吉本新喜劇の座長で、テレビ等で数多くのレギュラーを抱える小籔千豊。2008年からは、自らの名を冠したフェス『コヤブソニック』を主宰。著名アーティストとお笑い芸人がコラボする、独自のスタイルを確立させた。

同フェスには今年もスチャダラパーやPerfume、きゃりーぱみゅぱみゅをはじめとする人気アーティストが多数参戦。小籔は、バンドメンバーとしても出演するため、常にドラムスティックを持ち歩き、練習にも余念がない。

座長やタレントとして多忙を極める中、フェスを続ける思いとは? 話を伺ううちに、彼の周りになぜ人が集まるのか、少しずつ透けて見えてきた気がした。

取材・文/橘川有子  撮影/川合 泉

編集/田上知枝(エキサイトニュース編集部)


吉本新喜劇の座長でフェス主催者・小籔千豊の周りになぜ人は集まるのか

『コヤソニ』の見どころは? 「ありません」(小籔)


――9月14日から3日間、『コヤブソニック2019』が開催されます。まずは、10回目となる今年の注目ポイントを教えていただけますか?

小籔:取材していただき、ありがとうございます。毎年、『コヤブソニック』(以下『コヤソニ』)の取材で尋ねられるんですが、僕は「見どころはありません。いつも通りです」と答えてるんです。取材者泣かせだと分かっていますが、出演者の方も全員が並列という考え方なので、吉本新喜劇の後輩・今別府直之もPerfumeさんも同じだけ大切です。

ステージを分けずに、1つだけにこだわっているのも、僕は全てのアーティストの方々に出演後に(直接)「ありがとうございました」と言いに行けることが大事だと思っているからです。なので、見どころというのはある意味で「全員」ということになると思います。

――フェスに関わる皆さんへの愛を感じるお話ですね。

小籔:アハハ。そんな、そんな(照)。大型フェスとは違って、『コヤソニ』は身近な人だけで始めたフェス。そこに賛同してくださったアーティストさんや先輩、後輩が出てくださっているので、誰がヘッドライナーかなんて僕に優越は付けられません。

よその大型フェスが、いわば大手チェーンやミシュランの三ツ星だとしたら、僕のは地元の商店街にある居酒屋。ただ、知り合いのルートが多いから、ミシュランのお店と同じ素材を知り合いの漁師から直で手に入れられる(笑)。ですから、「食材」であるアーティストさんの質には自信がありますね。お皿とかお店の雰囲気はどうか分かりませんが(笑)。

『コヤソニ』は、バーターや事務所の力とかは全く排除


吉本新喜劇の座長でフェス主催者・小籔千豊の周りになぜ人は集まるのか

――有名アーティストが多数出演する一方で、おとぼけビ~バ~さんをはじめ音楽ファンが思わず唸る選出も『コヤソニ』の愉しみです。ラインナップにも小籔さんが関わられているのですか?

小籔:はい。『コヤソニ』は、バーターや事務所の力とかは全く排除して(笑)、僕がいいと思った方だけをお招きしています。

おとぼけビ~バ~さんは「関西出身のブレイクバンドまとめ」みたいなのを見て知ったんですが、海外の大型フェス(『コーチェラ2018』)に日本からX JAPANとおとぼけビ~バ~さんだけが出て、盛り上がったらしいですね。気になって聴いてみたら、めっちゃいい。でも、なかなかライブを見に行けそうにない……、だったら出てもらったら生で見られるとオファーしました(笑)。

日向坂46さんは、東京で番組を一緒にやらせてもらっていて、本当にいい子たちなんです。お声がけした当初は、僕の方が保護者みたいな気持ちでしたが……、実はエグイくらい人気がある。お客様をたくさん呼んでくれるので、今ではあの子たちに頭が上がりません(笑)。

ほかのラインナップも、僕のそのときの興味に結構左右されています。フェスをやり始めた当時は僕自身が下ネタラップグループをやっていたこともあり、バンド系はほとんど聴いてませんでした。でも、15年に『コヤソニ』復活に向けてバンドを組もうと思ってから、バンドシーンが気になってYouTubeをめっちゃ観るようになった。そうしたら、「キュウソネコカミ、めっちゃいいやん」「クリープハイプ、やばいな」って(笑)。いつしかめっちゃバンドが好きになって、それで17年からはバンド系が増えたんです。

――主催者でなくバンドメンバーとして出演するときは、どんなお気持ちですか?

小籔:吉本新喜劇ィズという無名のバンドで3日間出演させてもらいますが、こんなビッグネームと並べるなんて……という嬉しさと申し訳ない気持ちになりますね。また、番組の企画で生まれたジェニーハイとして出るときは、「間違えんとこう」という一心ですね。「あそこに誰かおるな」とよそ見をしたり、「ここは客席、広げられるな」とか考えたら失敗しますんで(笑)。余計なことは何も考えずに集中してます。

結婚してからは自分のためではなく、誰かのためにやるほうがうまくいくんです


吉本新喜劇の座長でフェス主催者・小籔千豊の周りになぜ人は集まるのか

――そもそも吉本新喜劇の座長であり、テレビのレギュラーなども多い。多忙にもかかわらず、なぜフェスを続けるのでしょう?

小籔:『コヤソニ』は、僕がやっていた下ネタラップグループで1,000人のお客さんを前に歌いたいというところが出発点。初回の大阪野音(大阪城音楽堂)で、3,000人のお客さんが来てくださった時点で夢が叶いました。なので、1回きりのつもりでしたが、スチャダラパーさんが「アーティストと同じ数だけ芸人が出てきて、トークで絡むフェスなんて見たことがない。こんな面白いフェスはほかにないから、続けたほうがいい」と言ってくれたんです。

ただ、そのラップグループの活動が終わったので、理由もないのに続けるのは違うなと思い、2014年に『コヤソニ』を閉じることに。ありがたいことに、続けてほしいというお声をたくさんいただきました。それで、その年の打ち上げでアーティストの皆さんの前で、「ここで1度閉じますが、2017年に復活させます。予定を空けておいてください」と宣言しました。

2015年にバンド活動をスタートし、バンドのためのインスタもはじめました。ドラムをやりたいと思ったわけじゃなく、すべては『コヤソニ』のため。さらに、僕がMCをさせてもらってる番組『BAZOOKA!!!』の企画でジェニーハイというバンドを結成することになりました。番組スタッフさんは、川谷絵音さんや新垣隆さんなどの一流どころを集めてくださった。もう後には引けません(笑)。正直、ドラムレッスンでくじけそうになることもあるんです。そんなとき、スタッフの顔を浮かべて、「あの人らにがっかりさせられない」と思ったり、「一流の人たちとやらせてもらっているんだから、一番下手な自分は練習するしかない」と考えるようにしています。

――自分のためでなく、“誰かのため”のほうが頑張れる?

小籔:不思議なんですが、結婚してからは自分のためではなく、誰かのためにやるほうがうまくいくんです。仕事だけでなく趣味もそうですね。カメラ、ダンス、ドラムは何となく始めたけれど、長続きしています。逆に、ビリヤードはうまくなりたくて自前のキューを買って、野生爆弾のロッシーとお昼の12時から夕方4時まで打ち放題千円のところにバイクで25分かけて行き、突きまくってもうまくならんかった(笑)。フェードインしたもののほうがいいんです。

――『コヤソニ』も、“みんなのため”を思いながら作られているのですね?

小籔:『コヤソニ』は好きでやらせてもらっているものなので、僕の願いは1つ。すべての人に気持ちよく、全員平等に楽しんでもらいたいと思っているんです。そのためには、責任の所在をはっきりさせておく必要があります。ほとんどのフェスでは主催者の顔は見えませんが、『コヤソニ』に限っては主催者の顔が分かります(笑)。フェスに来てくれた女子が、トイレが足りなくて「膀胱パンパン。小籔、どうしてくれる!」って僕に対して怒れるんです(笑)。

また、僕が『コヤソニ』をやりたいと言わなければ、休日出勤せずにすむ社員もいると思うんです。実際、昔から知っている方は着ぐるみで会場の誘導をしてくれたり、若い時に一緒にやっていた社員は、僕より先に来て関係者の駐車場で誘導していてくれています。ここまでやらせて申し訳ないなと思うけど、僕が自腹を切るのもなんか違う。そのためにも、平和で関わる人みんなに楽しんでもらえるものにしたいですね。

この仕事を自分の金儲けの道具としか見てなかった時期もある


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――「責任は自分にある」と言い切る。優れたリーダーならではの言葉だなと感心しますが、小籔さんがそう思えるようになったきっかけは何ですか?

小籔:下っ端のころ、いろんな先輩を見てきましたが、言うだけでいざというときに責任を取らない人には誰も付いてこない。「あれはないな」と思っていたことをしたくないだけです。

そんな僕も、この仕事を自分の金儲けの道具としか見てなかった時期もあります。結婚してすぐに吉本新喜劇に入ったんですが、当時はめちゃめちゃ貧乏で「お客さんを笑かすから、ギャラをあげてくれ」という考えでした。そんなある日、一人で昼飯を食いに出たら、60代の老夫婦が声をかけてこられたんです。おじいさんは、「小籔くん、ありがとうな」とぎゅっと僕の手を握りながら、半泣きだったので驚きましたね。

実は、おばあさんは足が悪くて何年も外に出なかったけど、テレビの新喜劇で僕を見てから息子のように思ってくださるようになったそうです。それで、おじいさんから「一緒に新喜劇を観に行こう」と誘ったら、出かけると言ってくれたと。この2人の老夫婦に出会うまで、僕が新喜劇に出ることで誰かに元気になってもらえるなんてこれっぽちも思ってませんでした。僕の考えが大きく変わった出来事でしたね。

その後、新喜劇の座長になる少し前、大阪でテレビに出させてもらうようになった頃にも転機がありました。ロケですごく大きな団地に行ったんですが、子供らがぶわっと集まって僕をキラキラした目で見るんですよ。僕が「勉強せえや」と言うと、元気よく「はーい!」って言うし、「初任給はお父さん、お母さんに渡すんやで」と言うと、意味も分からず「はい!」って返事をしてくれる。それを見て、僕は知らん間にどえらい仕事に就かせてもらったんだなと気が付きました。

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――小籔さんの中でパラダイムシフトが起きたのですね?

小籔:この2つはほんまに大きな出来事でした。それもこれも、吉本新喜劇の歴史があるからこそなんですよね。街中で声をかけられるようになった僕を見た同期が、「お前、よかったな」と言ってくれました。きっと僕が漫才師だったら、素直に「そうやねん」と言えたかもしれない。けど、僕は全然自分の手柄だと思えなかったんです。先人たちの盛り上げがあって、そこにたまたま僕がいただけ。そう考えたときに、テレビの向こうの人のことも考えて台本も考えなあかんなと思うようになりました


『コヤソニ』は僕の個人的なパーティーのようなものなので、全員がハッピーになってもらいたいですが、新喜劇は野球で言えば巨人や阪神みたいに日本を代表する存在。なので、全員が幸せになる必要はないと思っているんですね。サッカー日本代表でも1度も試合でプレーできない選手はいますよね。くじ引きでまんべんなく全員にプレーさせようとして負けてしまったら意味がない。全員を幸せにしようとすると、かえって全員が不幸せになるのかなと思うんです。新喜劇も厳選して出していくこと、精鋭で勝っていくことでより注目を集めることができていくと考えています。60周年を経てこれから100年続けていくことを考えると、勝ち続けるためにある意味でシビアな決断もしなければならないと思っていますね。

新喜劇を見た外人さんが「どうして一番面白いところで全員がコケるの?」


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――勝ち続けるために、新たに考えていることはありますか?

小籔:もう10年くらい前から思っていることなんですが、いまだ英語で新喜劇をやった人はいないんですよ。なかやまきんに君の友人でオーストラリアの方が、新喜劇を見て「すごくおもしろかった」と言ってくれたことがあって。外人さん特有のお世辞かなとも思ったんですが、よくよく聞いてみるとちゃんとオチも分かってました。片言の日本語でも通じるんだなと手ごたえを感じましたね。ただ、「どうして一番面白いところで全員がコケるの?」と、そこは分からないようでしたが(笑)。

あの時の印象が残っているので、英語で新喜劇はいつかやってみたい。実は英語の台本も出来上がってますが……、ドラムの練習が忙しくて英語のセリフまで覚える気になれない(笑)。川谷君はきっと僕でも叩けるよう、かなり簡単にしてくれているはずですが、それでも1曲覚えるのはかなりしんどい。今は『コヤソニ』に向けて精一杯練習して、ミスなく終えられることに集中したいです(笑)。



小籔千豊さん直筆サイン入りポラをプレゼント!


『KOYABU SONIC 2019』の開催を記念して、小籔千豊さんの直筆サイン入りポラを2名様にプレゼントいたします。

応募方法は下記の通り。
(1)エキサイトミュージック(@excite_music)の公式ツイッターをフォロー
(2)エキサイトニュース(@ExciteJapan)の公式ツイッターをフォロー
(2)下記ツイートをリツイート
応募受付期間:2019年8月14日(水)~2019年8月28日(水)



<注意事項>
※非公開(鍵付き)アカウントに関しては対象外となりますので予めご了承ください。
※当選者様へはダイレクトメッセージをお送りいたします。その際、専用フォームから送付先に関する情報をご入力いただきます。
※当選した方に入力いただく情報はエキサイト株式会社がプレゼント発送に使用するものです。また、提供された個人情報は、同社サービスに関する連絡に限定して利用されます。
※DMでお伝えした期日までに返信をいただけなかった場合は、当選無効とさせていただきます。
※一部の地域では配達が遅れてしまう場合がございます。予めご了承ください。

公演概要


【KOYABU SONIC 2019】
公演日:2019年9月14日(土)15日(日)16日(月・祝)
会場:インテックス大阪 5号館・4号館
時間:9:30開場 / 10:30開演

出演:
■14日(土)
<アーティスト>
おとぼけビ~バ~、キュウソネコカミ、ゲスの極み乙女。、サンボマスター、ジェニーハイ、DADARAY、 tricot、八公太郎、水谷千重子、吉本新喜劇ィズ、ほか

<芸人>
池乃めだか、今別府直之、麒麟、シソンヌ、シャンプーハット、ずん、トムブラウン、中川家、爆乳三姉妹、Mr.シャチホコ、見取り図、矢野・兵動、ほか

■15日(日)
<アーティスト>
カジヒデキ、コレサワ、ザ・コインロッカーズ、the peggies、曽我部恵一、ニガミ17才、Perfume、日向坂46、ホフディラン、吉本新喜劇ィズ、ほか

<芸人>
アインシュタイン、アキナ、今別府直之、かまいたち、ギャロップ、霜降り明星、千鳥、チョコレートプラネット、爆乳三姉妹、ポセイドン石川、ゆりやんレトリィバァ、ロバート、ほか

■16日(月・祝)
<アーティスト>
尾崎世界観、きゃりーぱみゅぱみゅ、くもゆき、SCANDAL、四星球、スチャダラパー、TOKYO No.1 SOUL SET、吉本新喜劇ィズ、ほか

<芸人>
今別府直之、空気階段、スーパーマラドーナ、ジョイマン、ショウショウ、ダイアン、天竺鼠、テンダラー、とろサーモン、爆乳三姉妹、藤崎マーケット、吉本新喜劇、笑い飯、ほか

チケット(税込・スタンディング):
[1日券]大人¥8,500、子供¥2,000
[前半2日通券]大人¥15,000、子供¥3,500
[後半2日通券]大人¥15,000、子供¥3,500
[3日通し券]大人¥21,000、子供¥5,000
※未就学児入場無料。子供料金は小学生が対象

チケット一般発売日:8月10日(土)10:00~
※チケットぴあ、ローソンチケット、CNプレイガイド、イープラス、LINE TICKET、チケットよしもとにて

問い合わせ:キョードーインフォメーション(TEL. 0570-200-888 / 10:00~18:00)

プロフィール


小籔一豊(こやぶかずとよ)
1973年9月11日生まれ、大阪出身。1993年に結成した漫才コンビ「ビリジアン」で、「NHK上方漫才コンテスト」第28回(1997)優秀賞、「BGO上方笑演芸大賞」第2回(2006)脚本賞、「NHK上方漫才コンテスト」第28回(1997)優秀賞を受賞。コンビが解散した2001年に吉本新喜劇に入団し、現在、川畑泰史、すっちー、酒井藍と共に座長を務めている。タレントとしても多くの番組に出演するほか、吉本新喜劇ィズ、ジェニーハイのメンバーとして音楽活動も行なっている。


関連リンク


▼吉本新喜劇 オフィシャルサイト
https://www.yoshimoto.co.jp/shinkigeki/
▼『KOYABU SONIC 2019』オフィシャルサイト
http://www.koyabusonic.com/

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