『ガキ使』『めちゃイケ』お笑いに情熱をそそぐ高須光聖が新たに見つけた“おもろいもん”は書き下ろし小説

『ガキ使』『めちゃイケ』お笑いに情熱をそそぐ高須光聖が新たに見つけた“おもろいもん”は書き下ろし小説

『ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!』『水曜のダウンタウン』『めちゃ×2イケてるッ!』などのバラエティ番組をはじめ、映画やドラマの脚本、ラジオのパーソナリティ……と、多方面にわたって活躍する放送作家・高須光聖が書き下ろし小説『おわりもん』を上梓した。制約のなか番組を作り続ける高須は、「小説は自由」だと語る。したたかに逞しく生き抜く又兵衛と五郎左衛門の2人組を主人公に据えたこの爽快かつ痛快な新感覚時代小説の話を聞いた。

取材・文/前原雅子 撮影/コザイリサ
編集/田上知枝(エキサイトニュース編集部)

10年くらい前に撮ったショートムービー『賽ノ目坂』が企画の発端


『ガキ使』『めちゃイケ』お笑いに情熱をそそぐ高須光聖が新たに見つけた“おもろいもん”は書き下ろし小説

──『おわりもん』執筆のきっかけから伺えますか。

高須:そもそも10年くらい前に『賽ノ目坂』というショートムービーを撮ったんです(※注)。その時は2日で撮りあげるための設定として、6人の罪人が土に埋まっているという1シチュエーションで撮影して。それが、今回の小説の第1章「賽の目坂」なんです。
※注:吉本興業所属のタレントやお笑い芸人たちが30分程度の短編映画100本を撮るという企画『YOSHIMOTO DIRECTOR'S 100 ~100人が映画撮りました~』で撮影された作品のひとつ。2007年7月7日公開。監督と脚本を担当

──いつか小説にしたいと思われていたのですか?

高須:全然思ってなかったです(笑)。ただ、5年くらい前から、幻冬舎の方から「小説を書きませんか?」というお誘いがあって。でも僕なんかよりすごい方がいらっしゃるから、とてもとてもと思っていたんですけど、何度も何度も来てくださって。ある時、以前撮った『賽ノ目坂』の話になって、「あの人たちはなんで捕まったんですか?」「あのあとどうなったんですか?」と言われまして。そんなことなぁ~んにも考えてなかったんですけど、じゃぁ書くかと思っちゃったんですね。ところが何も考えてないから「お宝は何にしよ?」「どうやって捕まったことにしよ?」って、自分で投げた球を自分で拾いながら広げていくような感じでした(笑)。

『ガキ使』『めちゃイケ』お笑いに情熱をそそぐ高須光聖が新たに見つけた“おもろいもん”は書き下ろし小説

──ショートムービーの『賽ノ目坂』は、何かきっかけがあって思いつかれたストーリーだったのですか?

高須:いや、何もないです。ただ、子供の頃に観た『黄金の日日』というNHKの大河ドラマで、根津甚八さんが土の中に埋められて殺されていくシーンがものすごく怖かったことを思い出して。埋められたのを6人にして、殺す人をサイコロの出た目で決めていくことにしたらどうだろうと思ったのが、きっかけといえばきっかけですかね。埋められているのが何人かいると、死んでいく人と残る人が出てくるから。埋められた者同士の会話も面白いし、ケンカになっても面白いなって想像しながら書いていきました。

──そもそもの始まりが映画の脚本だったからでしょうか、読んでいてもすごく映像が目に浮かびました。

高須:僕はもともと映像を想定しながら書いていくほうなんです。ただ、今回は伝わるかなぁと思いながら書いていました。史実に基づいてしっかり書いているわけじゃないので。“賽の目の刑”なんていう刑罰も、“火洗いの関所”なんていう関所も実際にはないですし。

──首まで地面に埋められた罪人が、振ったサイコロの目に応じて首をはねられる“賽の目の刑”や、焼いた石を飲ませる“火洗いの刑”があまりにリアルに描かれているので、こんな怖い刑罰があったんだと思って読んでいました。

高須:ないですないです、僕の想像です。こんなんありそうっていうことを考えて。(昔の)日本の刑罰はちょっとグロテスクな感じがするので、そういうドロドロッとしたシーンを書いてみたかったんです。でも全体はサラサラっとした会話で進めたかったんですよね。

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テーマは「諦めない」。ギリギリ死の淵に立っても諦めないで飄々と生きている人が好き


──時代小説はお好きなんですか?

高須:なんとなく斜め読みな感じならありますけど、がっつり読んだ記憶はないですね。ただ、ドラマや映画で時代劇を観るのは大好きです。『壬生義士伝』とか好きですねぇ。大河ドラマも普通に観ますし。子供の頃は『遠山の金さん』が好きでした。そんなだから今回も、だいぶ雰囲気で書いてます(笑)。

──お城の中の様子なども?

高須:調べたわけじゃなく、こんなんじゃないかなぁって考えたお城の構造です。僕に時代考証をしっかりおさえた本は求められてないだろうと思ったので、想像力で書きました。とはいえ、これくらいまでの飛躍はいけるであろうっていうラインは守って書いたつもりなんですけどね。そのなかで嘘をつくっていう。

──その見極めは勘ですか?

高須:勘です。こんなのはありそうっていう勘ですね。あとは自分が面白いと思えるかどうかで書きました。

──すると最初に大枠だけ決めて?

高須:大っきなプロットは考えましたけど、ディティールは考えずに「ま、こんな感じで」ってザックリ進めていましたね。だから最後の最後、どうやって逃げるかで困ったりして(笑)。さすがにこれは逃げられへん、どうやって逃げよ~って思いながら書いているうちに、ふと思いついたことがあったので書いてみて。

『ガキ使』『めちゃイケ』お笑いに情熱をそそぐ高須光聖が新たに見つけた“おもろいもん”は書き下ろし小説

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──うまいこと考えたな、又兵衛と思いました(笑)。また、又兵衛と五郎左衛門がいいですね。『東海道中膝栗毛』に出てくる弥次喜多コンビみたいで。

高須:そうそう、そんな感じにしたくて。知恵とトンチが働く悪いヤツが又兵衛なので。毎回ギリギリの嘘をついてしのいでく。なんとなく、その当時のルパンのように逃げさせたかったんです。

──小説全体のテーマみたいなことでいうと、どうでしょうか。

高須:とにかく諦めないっていうことですかね。自分もそうなんですけど、最後まで諦めないっていうのが基本にあるんです。たとえギリギリ死の淵に立っても諦めないで飄々と生きている人が好きだし、自分もそうありたいし、この2人にもそうあってほしかったので。生き死にが背中まで来てる戦国時代でも飄々と、最後まで踏ん張って粘ってなんとか生きようっていうのがいいなぁと。

──又兵衛と五郎左衛門だけじゃなく、登場人物すべてが逞しいですね。土壇場まで追い詰められたら開き直る強さがあるというか。

高須:そうですね。僕、芸人さんが好きなんですけど、芸人さんと同じで、恥ずかしい辛いことは笑いにすると楽になったりするので。ギリギリのところでの開き直りは必要だろうなぁと思うんです、そのほうがカッコよく映るなぁって。あの2人も最初はとんでもなく欲深いんですけど、しょうがなく巻き込まれた結果、誰かのためになんかやる、みたいになっていくっていう。

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──そういう逞しさが、今の時代感のなかでは本当に爽快でした。

高須:今って淀んでる感じですもんね。でもよかったです、そう感じていただけて。火を飲むところとか、ちょっとグロテスクなシーンをあえて入れてるんですけど、嫌な気分になる方が女性には多いかなと思ったので。

──それも含めたリアルさが印象的でした。例えばお侍さんも「武士は食わねど高楊枝」って言われていますけど、死ぬか生きるかのギリギリの場面では心中穏やかでなかったり。

高須:人間臭さを出したかったんですよね。結局、立場が変われども人は同じようなところで悩むし、同じようなところでゴロゴロ転がってるんだろうし。それは山賊だろうが武士だろうが同じで、右に転ぶか左に転ぶかで人生が変わるという場面で、逃げずに踏ん張れるかどうかだけなんですよね。なんかね、歴史も教科書に載ってるのは本当にあったことの一部だけって気がするんです。他のことは語られてないだけじゃないかって。そう思うと、僕が書いたようなもこともなかったとは言い切れないなと。だったら嘘つきがいがあるなと思ったんですよね。

放送作家と小説家とは全然違うもの


──同じ書くということでも、放送作家と小説家とではかなり違いがあるものでしょうか。

高須:全然違いますね。コントはちょっと近いかな。あとアニメーションの原案も1話1話は短いですけど小説に近いです。何も考えずに自分が面白いものを書いていますから。やっぱりテレビの仕事は自分がイメージしてたものより面白くなるときもあれば、想定したような出来上がりじゃないときもあるので。僕が書いたものや企画したものを台本にして、演者が演じて、それを演出が手直しして、現場でディレクターが演出して、最後に編集して仕上げるものなんで。100%自分のものじゃないんです。

──逆に小説は100%自分のイメージで成り立っているから。

高須:そうなんです。だから細かく書いちゃうんですよね。こういう状況ですよ、こんな感じですよって。現代劇だったら「六本木の交差点」と言ったらわかってもらえるでしょうけど、時代劇はどこの道かわからへんし、いろんなもののサイズだってわからないので。できるだけその空気とイメージを伝えようと思って、どんどん書き足してしまって。もうちょっと読む人に隙間をあげてもいいんじゃない?と言われたくらい(笑)。

『ガキ使』『めちゃイケ』お笑いに情熱をそそぐ高須光聖が新たに見つけた“おもろいもん”は書き下ろし小説

──コントなどを書く場合も、隙間は意識されますか。

高須:年末の『笑ってはいけない』シリーズとかは、事細かく「こう演じて」「こういう顔で」「こんな言い方で」というとこまで一語一句作りますけど。日々の台本は、そこまで細かく書かないです。バラエティ番組なら基本のルール説明と「こんなふうにイジって回して、こういうとこを触りながら展開して」ってイメージの流れを書いていく感じなので、結果、隙間はできているんだと思います。

──最後に今後のことですが。次作のご予定はどうでしょうか。

高須:せっかくなんでスピンオフとか、いろいろ考えてますが。でもいまだに自分が小説を書けるとは、と思ったりしていて。だいたい僕、こんな長いもの書き切れるわけがないんです、飽き性なんで。

──飽き性なんですか?

高須:めちゃめちゃ飽き性、だからすぐ嫌になってきますね。

──これを書くなかでも、何度かそう思われました?

高須:何度どころじゃないですね(笑)。も~やめたくて逃げたくて。1カ月に一回、編集の人が事務所に来てくれたから書けたんだと思います。その人が来てくれなくって、「1年後に書き上げてくださいね」ってことだったら、絶対書けてないです。だって会ったときはテンションあがってるんで「書きますよ!」とか言うし、実際、その日はちょっと書いたりするんです。でも、あとが続かない。で、次に会う日の1週間くらい前にそわそわし始めて、3日前からは必死こいて、あかん! どうしよう! ストーリー考えな!って慌てふためいて。また、その人がいい方なんですよ。なんにも文句を言わないんです。毎回「面白い、面白い」と言ってくださるんで。その人に、1カ月経ったのに3ページじゃ申し訳ない、さすがに何十ページかは書かないとなぁと思って、書いてたんですね。

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――書き切った達成感はすごかったのではないですか?

高須:達成感ありますねー。書いているときは苦で苦でしょうがなかったんですけどね。これだけ長いものを書きあげる癖が、今回ちょっとだけ身についたというか。放送作家の仕事は1日でバンと書くようなことが多いので。なんかこう少しだけ遠泳ができる気になったし、またどんどん書きたいなと思うようになりました。

──例えばどんなものを?

高須:絵本とかも出したいなぁと思いますね。実は昨日も絵本のストーリーを考えていて。

──そういう興味は以前から?

高須:ありましたけど、こんなん書きたいなと思っても、書き切る前に飽きて終わっちゃうんで。だから今回の「書き切れた!」っていうのを機に続けて書こうって決めて。今年中に2冊くらいは書こうと思ってるんです。1冊は絵本だとして、もう1冊、なんか簡単なやつを書かれへんかなぁって。

──今年中というと、あと3カ月ですが。

高須:僕は基本的にグワーッとじゃないと書けないんで。まぁそれも誰かに来てもらわないとダメですけどね(笑)。

テレビはテレビで、制約のなかで遊べるようになってくる


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──放送作家としてはどうですか? 今後の抱負ということでは。

高須:最近、動画という意味ではテレビ以外でけっこう作らせてもらっていて。Yahoo!はこう、GYAO!はこう、Amazonはこうって自分のなかで振り分けながら書いてるんですけど、そういうことが楽しいですね。

──テレビというメディア自体が昔とは違ってきましたから。

高須:地上波では、そこまでお笑い番組がないので。だったら自分で作ったほうが面白いかなと思って。テレビは基本、スポンサーさんがいるビジネスですから。昔はテレビが強かったので、なんでもできたんですけど。今はクレームはスポンサーさんにいくので、スポンサーさんにダメだって言われたら僕らはやれない。となってくると、作るものがだんだん消極的になりがちで。もっと言うとコンプライアンスも昔ほどゆるくはないので、「この表現はどうなんだ」と一個一個言われちゃいますからね。そうなるとだんだん「地上波でやれるのはこういうもの」になっていきますよね。

──制約がいろいろ増えてくる。

高須:そうですね、でもその制約のなかで遊べるようになってくるんで。昔は観ている側と作っている側の認識は全然違ったんですけど、今は視聴者と作り手の認識はそうとうニアなところにあるので。あえてギリギリのコントや企画を考えて、ギリギリをわからすような細かいニッチなところをやっていく、みたいな。『水曜日のダウンタウン』はそういう番組なんですけどね。世の中の人が思う「これ、大丈夫?」「こういうのをイジっていいの?」っていうライン上で、いかに遊ぶかっていう。ある種の共犯意識を視聴者と持ち合いながら作る、そういうのはテレビでやったらいいし、そうじゃない迫力を観せるものを作るなら他でやったらいいし。で、小説は明らかに後者のほうですよね、自由ですからね。

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──その小説ですが、『おわりもん』に続く作品をぜひ読みたいです。本当に面白かったので。

高須:わ~嬉し~。よかった~、女性の方にそう言ってもらえるのは、数少ないことなんで(笑)、嬉しいです。よそで言ってほしいくらいですね。

──言っておきます、書いておきます(笑)。

高須:ありがとうございます(笑)。



Profile
高須光聖(たかすみつよし)

1963年12月24日生まれ、兵庫県出身。幼少の頃より親交のあったダウンタウン松本人志に誘われ24歳で放送作家デビュー。28歳より拠点を大阪から東京へと移し、「ダウンタウンのガキの使いやあらへんで」「めちゃ×2イケてるッ!」「ロンドンハーツ」「水曜日のダウンタウン」「IPPONグランプリ」大晦日の「笑ってはいけないシリーズ」など、バラエティー番組を中心に、現在も十数本のレギュラー番組を担当。その他にTOKYO FM、渋谷のラジオなどでラジオパーソナリティーを現在も務め、映画の脚本、アニメの原作から環境省のCOOL CHOICE推進チーム参加まで、その活動の幅は多岐にわたる。


関連サイト
オフィシャルサイト『御影屋』
@mikageyahijiri


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