
(→前回までの「オジスタグラム」)

今回は結婚を考えてる方々は必見でございます。
人間はみんな皮をかぶって生きている。
冒頭から下ネタだと思った人は恐らく疲れているので、旅行にでも行った方がいい。
みんなある程度取り繕って生きているとゆう意味だ。
一日二日いい奴に見せるなんて簡単だ。
面接でいいと思って採用したけど全然ダメだった。
付き合う前はいい人だったけど、付き合ったら本性が糞だった。なんて事だらけである。
相手の本性を知るには時間がかかるのだ。
なので、世の女性達はわざと待ち時間の長いアトラクションに並んで相手の本性を見抜こうとする。
涙ぐましい努力である。
回転寿司に行ってみて
しかし、女性達!
もうそんな事はしなくていいのだ!
なんと、おじさんはものの10分で相手の化けの皮が剥がせる場所を発見したのだ。
人間の本性が出るのは、遊園地でもなければ給湯室でもない。
回転寿司屋なのだ。
本性を知りたい相手と、タッチパネルじゃなくて口頭で注文するタイプの回転寿司に行くだけで、大体いい奴か悪い奴かは見抜けるのだ。
結婚しようか迷ってる相手がいれば、まず回転寿司に行ってみて欲しい。
週5くらいで回転寿司に通ってる僕が言うのだから間違いない。
今回は本当にいい事を言うので、僕が「借金」の対義語である「寿司」を週5で食べてる事は不問にして欲しい。
回転寿司屋は本当に総合力を必要とする。
自分の欲しいものが回ってるとは限らないし、頼むにしてもみんながみんな自分のタイミングで頼んでも職人さんは聖徳太子の末裔じゃない。
空気を読む力、頼み方、適切な声の大きさ、お会計のしやすい皿の積み方……。色んなものが求められる。
回転寿司屋は寿司が回ってるから回転寿司と呼ぶのではなく、お客同士の思いやりによって店が回るとゆう意味の回転寿司なのだ。
は?
それでは気を取り直して、何点か化けの皮チェックポイントを紹介しよう。

お茶をかけて帰ってよし
まず簡単な判断基準として、
注文の際に「ブリー!ハマチー!」とか敬語も使えないやつは、いつかあなたを「オマエー!キサマー!タコー!」と呼ぶので、その時点でお茶をかけて帰ってよし。
他の注文がいっぱい入ってるのに、職人さんの事を考えずどんどん注文するやつにもシンプルにお茶をかけよう。
逆にモジモジして、職人さんへの注文の声も届けれないやつは、隣の家に回覧板も届けられない可能性が高い。
お会計の時に値段別に皿を分けないやつは、ゴミの分別も出来ない旦那になるし、20皿くらい食べるやつは単純に食費がかかる旦那になるので覚悟しよう。
意外と忘れがちなのが、えびの尻尾を置いた皿を別にせずに、積んだ皿の間に挟むやつはあなたの他に違う女も挟むので注意して頂きたい。
今回は女性目線で言ったが、回転寿司はどんな人間の化けの皮も剥がせるので、企業の方も是非寿司面接を取り入れて欲しい。

さて、では本日のスシスキグラムにいきましょう。
わからない時は笑うに限る
本日のおじさんは総一さん。
カウンターだけの小さな居酒屋で知り合った180くらいの大きなおじさんだ。
僕が友人と飲んでたところに、総一さんはいらっしゃった。
この店の常連らしく、名物ママっぽい店主と100万回やったであろう挨拶をかわす。
「ママー、ハイボールちょうだい!」
「あら!そうちゃん! もう酔ってるじゃない!」
「ちょっとだけな」
「どこの店で浮気してたの!?」
「うるせぇ。こっちの店が浮気なんだよ!」
「ガハハハ!」
こうゆう会話はよくあるが、これは本人達が楽しんでるのか、他の客への見せ物なのかが未だにわからない。
店の客は我々だけだ。
わからない時は笑うに限る。
「ヘケケケ!」
どうやら正解だったみたいだ。
「ガハハハ! なぁ、兄ちゃん達。可笑しいだろ?」
「ヘケケケ!はい!」
「いっつもこの調子よ!嫌になっちゃうよな!」
「こっちのセリフよ! ガハハハ!」
「ヘケケケ!ヒー!ヘケケケ!ヒー!」
母さん、今日も日本は平和です。
僕が留学生なら祖国に送る手紙に真っ先にそう書いただろう。

じゃあ、ストレスって何か
ママと総一さんの愉快なトークを肴にビールが進む。
僕の仕事を知ってる友人は、総一さんが来て少しして、明日が早かったのもあるが気をきかせて帰っていった。
ゆきずりのおじさんと僕をいい感じにする為に気をきかせて帰る友人。書いていてよくわからないが、いい友人を持ったものだ。
総一さんは二件目とゆう事もあり、そこそこ出来上がってらっしゃる。
新しい客の相手をしてるママは、その人無視していいからねと言うが、これが意外と興味深い話なのだ。
「人間、ストレスをいかに無くせるかって事が豊かな人生の第一歩なのよ」
「確かにその通りですわ」
「じゃあ、ストレスって何か。基本、やらなきゃいけないって思う事がストレスになるのよ」
「わかりますわぁ」
「こうゆう自分でいなきゃいけない。明日までにこれしなきゃいけないって。でもよく考えてみ? 実際世の中に絶対やらなきゃいけない事なんて何一つないんだ」
なんの流れでこうなったかはわからないが、僕も非常にストレスに弱い生き物なので、総一さんに深く共感した。
自分で楽しくやってるうちは大丈夫なのだが、少しでも義務感が出てくると嫌になるのだ。
楽しい予定ですら、日にちが決まるとめんどくさくなる。
あんなに楽しかったドラクエウォークも、やらなきゃとゆう義務感に支配され始めそうだったので、楽しい内に引退した。
確かに極論になるが、世の中にはやっちゃいけない事はあっても、絶対やらなきゃいけない事なんて何一つないのだ。
みんながみんな、これを心から思うようになったら、仕事を辞める人が続出して、世の中がえらい事になってしまうが、ストレスに殺されそうな人はこんな考えをしてもいいんじゃないかと思う。
ママの真似!ガハハハ!
豊かな人生の話を終えた総一さんは、もうベロンベロンだ。
「ママ~、ママ~? おかわりー!」
「そうちゃん、もうやめときなよ!」
「もうやめときなよ!! ママの真似!ガハハハ!」
「そんな顔してないでしょ!」
「そんな顔してないでしょ! ガハハハ!」
「糞じじい!」
「糞じじい! ガハハハ!」
総一さんの教え通りストレスを減らして、豊かな人生にする為に僕はこのタイミングで帰る事にした。
母さん、今日も日本は平和です。

(イラストと文/岡野陽一 タイトルデザイン/まつもとりえこ)