若宮「嫉妬?」
江藤「獅子雄には敵わないって。普通の我々は、ああいう奴を利用すれば良いんだよ。
10月28日(月)放送のドラマ『シャーロック』(フジテレビ系)第4話。「男の嫉妬」を軸に、殺人事件と過去の因縁、そして獅子雄(ディーン・フジオカ)と若宮(岩田剛典)の変化していく関係を描いた。

事件解決のキーアイテムとなったオレンジ色の傘。ブランド名は「James Phillimore」。今回の事件は、『シャーロック・ホームズの事件簿』の「ソア橋」に登場した語られざる事件「ジェームズ・フィリモア氏(の失踪事件)」がモチーフになっていた。
4話あらすじ
二階級制覇の世界チャンピオンであるプロボクサー・梶山裕太(矢野聖人)が、初めての防衛戦を前に姿を消した。その試合を観戦するはずだった獅子雄と若宮が控え室に向かうと、そこに刑事の江藤(佐々木蔵之介)がやってくる。試合会場の後楽園ホールから近い男坂で、男性が遺体で発見されていた。現場近くで、梶山の目撃情報があったという。
梶山が最後に会話していたのは、所属しているボクシングジムの会長・石橋(金子ノブアキ)。しかし、石橋は行方を知らないと言う。獅子雄は、控え室にあったオレンジ色の女性用の傘に目をつける。傘には、中身のないメッセージカードの封筒がついていた。
遺体の男・村川正輝(コーシロー)は、15年前にアスレチック遊具にいたずらをし、3人に怪我をさせていた。その中で首の骨を折る重傷を負ったのは、梶山と交際していた女性・細谷優子(小島藤子)。潤の母親だ。そして潤の父親は、当時高校生だった梶山だった。
怪我の影響もあり、昨年優子は亡くなった。若宮や江藤は、梶山や潤が復讐のために村川を殺したのではないかと考える。獅子雄は、梶山の目撃情報がはっきりとしていることに違和感を覚え、別の視点で推理を進めていく。
事件とバディの裏に見える「男の嫉妬」
獅子雄「場所わかるのか?」
若宮「さっき見て覚えた。これでも暗記は得意なんだよ」
試験内容の漏洩で不正に医師免許を取得した若宮、渾身の自虐ネタ。こんなことを言い出したのは、先に獅子雄に「犯罪はいつもデータを裏切る」と言われたからだ。「あてずっぽうな推理より、データのほうが正直だ」と考える若宮は、対抗心を燃やしてしまう。
江藤は「嫉妬すんなよ」と、若宮に声をかける。
先述の「ジェームズ・フィリモア氏(の失踪事件)」が登場する「ソア橋」という物語では、金山王ギブスンの屋敷の住み込み家庭教師・グレイスが、ギブスンの妻・マリアを殺した疑いで逮捕されてしまう。しかし、マリアは殺されたのではなく、グレイスへの嫉妬心から、殺人に見せかけて自殺したことが明らかになる。
ドラマでは、「失踪」を事件のモチーフとして、「嫉妬」を4話全体のテーマとして持って来ている。妻から家庭教師への女の嫉妬を、本作では「男の嫉妬」に変えた。それは、若宮の変化と呼応させるためだろう。
村川殺人事件は、石橋が梶山をおとしいれるために起こした。好きだった優子の心を掴み、ボクシングの才能も豊かな梶山に、石橋は嫉妬していた。
石橋「一番身近にいる勝てない相手に、嫉妬したんだ」
石橋の自白のあと、画面には梶山でも獅子雄でもなく、石橋をじっと見つめる若宮が映る。
獅子雄「細谷優子はなぜ、『傘を取りに行く』と言っていなくなったのか。もっときれいに別れる方法があったはずだ」
若宮「あんたにはわかんないだろうなあ」
獅子雄「お前にわかるのか?」
ラストシーンでそう問われた若宮は、革ジャンのジッパーを上げてバイクに乗る準備をしながら、何も言わずに去っていく。間近で見た梶山のかっこよさを踏襲し、“大人になった”若宮の顔には笑みが浮かんでいた。
ドラマの支柱となる俳優ディーン・フジオカ
どん底にいた若宮が、獅子雄に突っかかりながらもかっこよく成長していく。
獅子雄はいつでも浮世離れし、自分だけのかっこよさを突き詰めている。
プロボクサーとファンがたくさんいる後楽園ホールでも、獅子雄は構わずシャドーボクシングをしながら考えごとをする。プロに見られるかも、と思ったら恥ずかしくてできない。そんな感覚は獅子雄にはない。
石橋が犯人だとわかり対峙する場面では、「しかし、現場に着いたらすでに村川は死んでいた!」と言いながら、村川の死ぬところを模して目をつぶりリングのロープに思いっきり体を倒す。推理シーンでのこんな白々しい芝居(ドラマの中の芝居だが)、様になるのはいまディーン・フジオカか木村拓哉くらいじゃないか。
気づいたのは、ディーンも木村も演技に対して「ディーンっぽさ」「木村っぽさ」を持っている俳優ということ。そして、他に影響されない自分の考え方を持っているということだ。
ディーン ずっと変わらない芯の部分でいうと、ちゃんと責任を負える人がいいなと思いますね。背負える人、というか。昔は、気ままにふらっと自由に生きてる姿をかっこいいと思っていたときもあったけれど、そういうのは一種の錯覚かもしれないな、と。
今は、一個人という単位を越えた意識を持って社会にコミットし、それゆえに個人としてなんらかの行動が生まれている人に「かっこよさ」を感じます。そういう人を見ると自分も気が引き締まるし、そうなれたらいいな、と思います。
(ディーン・フジオカ「社会に対してコミットして行動している人に、かっこよさを感じます」 より)
この記事の中だけでも、ディーンは「芯にあるものが変わったかというとそうじゃない」「変わらない芯」と、自分がブレないことを繰り返し語っている。過去の主演作『モンテ・クリスト伯 ─華麗なる復讐─』や『レ・ミゼラブル ─終わりなき旅路─』(ともにフジテレビ系)や本作のような、海外古典を日本版に構築し直す入り組んだドラマ。そこには、ブレない一本の支柱が必要だ。
芯となるディーンの周りで対照的に揺れ動く若宮を演じるのが、EXILEや三代目J SOUL BROTHERSの中で求められる役割に合わせ自分の振る舞いを変えてきた岩田剛典。ますますぴったりの配役であると感じてしまう。
3話では「いよいよモリアーティ(守谷)の話が出た!」とワクワクしたが、今回は関係がない事件だった。次回は、被害者のいない殺人事件。葉山奨之、若村麻由美らがゲスト俳優として登場する。推理、語られざる事件、キャスティングやゲスト俳優、バディの関係性と、見どころは増えるばかりだ。
(むらたえりか)
=配信サイト=
FOD:https://fod.fujitv.co.jp/s/genre/drama/ser4l20/
TVer:https://tver.jp/corner/f0040635
=作品情報=
『シャーロック:アントールドストーリーズ』(フジテレビ系)
10月7日(月)スタート 毎週月曜21:00〜21:54
出演:ディーン・フジオカ、岩田剛典、山田真歩、ゆうたろう、佐々木蔵之介ほか
原作:アーサー・コナン・ドイル『シャーロック・ホームズ』シリーズ
脚本:井上由美子
プロデュース:太田大
音楽:菅野祐悟
オープニングテーマ:DEAN FUJIOKA「Searching For The Ghost」(A-Sketch)
主題歌:DEAN FUJIOKA「Shelly」(A-Sketch)
演出:西谷弘、野田悠介、永山耕三
制作著作:フジテレビ
公式サイト:https://www.fujitv.co.jp/sherlock/