山本耕史(参照画像)はバーのマスター。そこに毎週異なる女性ゲストが訪れ、即興で芝居を繰り広げる。笑福亭鶴瓶が長年やっている即興ドラマ『スジナシ』方式といってしまえばわかりやすいかもしれない。ただ、最後に必ずお決まりのセリフ「私を抱いてくれませんか?」で締めることが決まっているというだけで、同じ即興でもまったく色合いの違うものになる。

見え隠れする女優たちの本音
これまでの5人のゲストを見てみよう。
第1話 高橋メアリージュン:浮気されたセックスレスの女
第2話 若月佑美(元乃木坂46):女優…恋愛経験ゼロの女
第3話 MEGUMI:昔、男だった女
第4話 筧美和子:100人斬りの女
第5話 中村ゆりか:殺してきた女
たとえば第1話の高橋メアリージュン。ずぶ濡れで店に入ってきて、「マスターのシャツを着たい」とせがむ。「浮気された相手に送る」とツーショット写真を撮るタイミングでキスをする。かなりの攻め具合だ。若月佑美は子役あがりで最近仕事が減ってきた女優というはじまりから、『今日から俺は!!』でも見せたお得意のセーラー服に着替え、山本を巻き込んでドラマ内でドラマのワンシーンを演じさせるという変化球。第3話はまさかの元同性の同級生。免許証という小道具まで用意してトライしたが、途中まで山本が設定を理解できず四苦八苦するさまもリアルだった。
第4話は筧美和子があっけらかんと「これまで99人とセックスしてきました」と言う女。
ゲストの女優は「抱いてくれませんか」というゴールに向けて他の回との違いを出し、結果を残そうとするから、どの回もかなり「やってやろう」感が強く伝わって来る。ふだん台本に沿って演技をする姿しか観られない彼女たちが、自分でこの設定を考え、演じているのだ。もちろん明言はしないが、ほかの回と競う気持ちもあるだろうし、そのなかで自分の武器、パブリックイメージとのギャップ、どんな反応でも演じきれる役柄を考えた結果、それぞれの設定を選びとっているはずだ。そのむき出し感がおもしろい。
迎えうち、はっちゃける山本耕史
いっぽう、山本耕史は常に受け入れる側。ドアを開けて入ってくるまで、ゲストが誰かが知らされていない山本。ゲストの女優はバーの「お客さま」だから、常に仕掛けられる側になる。しかしどんな状況も受け入れつつ、さらに自分からも攻めていく感じが見て取れる。若月佑美に「高校の先輩役をやってほしい」と言われるとなぜかコートかけのフックをびよんびよんと指ではじきながら癖のある演技をする。
番組後半、即興ドラマを振り返る反省会での山本の饒舌さ、はっちゃけぶりも見応えのひとつ。「脱がされてうれしかったです」「たまに入るタメ口もキュンとする」と喜び、「結婚してからこう思うようになった」と実際の奥さんの顔がちらつくような話もふつうにし、「(ドラマ内の行動は)リアルが強いですか?」と女優たちの核心に迫ったりもする。
ひとつだけ不満を言うとするならば、山本の多岐にわたる才能と過剰さがまだまだ出し切れていないように思えるところだ。鍛えた体を見せるという部分はあったが、彼の特技である歌や殺陣なんかも観てみたい(得意のギターもいいな、と思ったら第5話で誰が仕掛けるでもなく、オープニングで山本自ら弾いていた)。今後、そんな仕掛け方をしてくる女優は現れるだろうか。
第6話には『ホリデイラブ』『シャーロック』などで悪女役といえばこの人、という存在になりつつある松本まりかが登場。以降も岡本玲、三浦理恵子、佐藤江梨子といったひとくせもふたくせもある面々がラインナップされている。山本耕史と「女たち」の静かで激しい戦いが楽しみだ。
(釣木文恵)
抱かれたい12人の女たち
監督:平岩憲和
出演:山本耕史ほか
プロデューサー:岡本宏毅
チーフプロデューサー:金岡英司
オープニングテーマ:加藤ミリヤ「PARADE」
エンディングテーマ:Teresa「ざくろ」
制作:テレビ大阪、dainaRI
製作著作:「抱かれたい12人の女たち」製作委員会