「スカーレット」35話、喜美子、故郷で火鉢の絵付けに魅せられる。いよいよ陶芸道のはじまりか
連続テレビ小説「スカーレット」35話。木俣冬の連続朝ドラレビューでエキレビ!毎日追いかけます

(これまでの木俣冬の朝ドラレビューはこちらから)

連続テレビ小説「スカーレット」 
◯NHK総合 月~土 朝8時~、再放送 午後0時45分~
◯BSプレミアム 月~土 あさ7時30分~ 再放送 午後11時30分~
◯1週間まとめ放送 土曜9時30分~
「スカーレット」35話、喜美子、故郷で火鉢の絵付けに魅せられる。いよいよ陶芸道のはじまりか

『連続テレビ小説 スカーレット Part1 (1)』 (NHKドラマ・ガイド)

第6週「自分で決めた道」35回(11月8日・金 放送 演出・鈴木航)


「おはよう日本 関東版」で高瀬アナがふいに過去の朝ドラ(大阪制作)のタイトルをきれいに盛り込んで「スカーレット」を語った。きっと「スカーレット」のなかに過去の朝ドラの要素が融合していることを感じ取っているのだろう。
35回は、喜美子(戸田恵梨香)が、陶芸の絵付け作業を見る場面が「カーネーション」で糸子がミシンをはじめて見る回に似ているものを感じた。


喜美子は大阪から信楽に。
いろんな葛藤をぐちゃぐちゃと表明せず、すきっと自分の道を決めて、ちゃっちゃと荒木荘を辞めて帰郷する。この潔さが清々しい。でも彼女の無念はちゃんとわかる。
少ない荷物のなかに、例の旅のお供・信楽焼のかけらは入っているのだろうか。最近、あまり見かけないが、そのかけらが喜美子を信楽に引っ張っているのかもしれない。


お酒、週8日


帰ってきた喜美子は、肉入りの肉じゃが(彼女の貯めてきたお金で買ったのだろう、泣ける)をつくっていると常治(北村一輝)が帰ってきて、ほんとは凄く嬉しいのに素直じゃない態度をとる。しかし、こんなにも娘が好きなのか。ただただ本能のまま。ものすごく野生の動物的な人物として北村一輝は役を造形していて、こういうふうにできるのが北村一輝なんだよなあと思う。

喜美子は経済状態と父の健康を心配して、お酒は週末のみにと提案。週3日まで範囲を広げるも、常治は「週8日」と言い出す。「一週間に10日来い」って歌詞の歌があったけどそういう感じか。


絵付け作業を見る


年明け。3年前(4年前?)、就職するはずだった丸熊陶業に改めて就職する喜美子。陶工のお茶やお昼の支度をする仕事をする。父と母と三人で挨拶しに行った翌日、さっそく働き始めることに。喜美子のほかに女性がふたり。以前、男ばかりの工場に女が入れなかったとき、食事の支度は誰がやっていたのだろう。当時より人が増えて手が足りないってことなのか。
新たにできた絵付け係の作業場分、人出が増えたってことか。でも、仕事は荒木荘のときより簡単で、ふたりの女性はくっちゃべっている。給料もそれなりにいいらしく、丸熊陶業、ずいぶん余裕である。

信楽、大阪、信楽と目先を変えてドラマにメリハリをつける必要があるのだろう。おそらく6週間ずっと信楽だけだったら登場人物も同じでまったりしてしまっただろう。現に大阪編はいいキャラがたくさん登場して盛り上がった。
そんな制作の事情と、物語のなかで喜美子が大人の事情に振り回されているのがうまいこと重なった気がして面白い。

ともあれ火鉢に絵を描くことで新しい商品を生み出す。それが喜美子の人生を変えていきそうだ。
「えつけとは?」と聞く喜美子に、仕事に関係ないから知らなくていいと言う従業員が悪気はないんだろけど、こういうふうに勝手な判断で可能性を閉ざすことって罪だなあと思う。まあ、それによって、喜美子がよけいに興味をもって自ら確かめようとする行動につながるのだろうけれど。

絵付けの作業を見て心をざわつかせる喜美子(絵を描くことが好きだから当然興味を持つという自然な流れ)を、ピアノと管楽器がぶつかりあうドラマチックな劇伴だけで見せた。
「スカーレット」は劇伴がとっても良い。

やっぱり感じ悪い直子


家族がそろった食卓で「毎日、芋芋芋」とキレる直子(桜庭ななみ)。やはりヒステリックなところは直ってなかった。
彼女は学校を卒業したら東京に行くと言う。喜美子は冷静に「何をしたいのか」と問う。でも直子はそれに答えらない。キレることもできず黙ってしまうのだった。

そういうことを言うのが、喜美子であって、母も父も何も言わないところ(父は「行くな」の一点張り)が川原家らしい。
(木俣冬 タイトルデザイン/まつもとりえこ)

登場人物のまとめとあらすじ (週の終わりに更新していきます)



●川原家
川原喜美子…戸田恵梨香 幼少期 川島夕空  主人公。空襲のとき妹の手を離してトラウマにしてしまったことを引きずっている。 絵がうまく金賞をとるほどの腕前。勉強もできる。とくに数学。学校の先生には進学を進められるが中学卒業後、大阪の荒木荘に就職する。やがて、美術学校に進学を考える。

川原常治…北村一輝 戦争や商売の失敗で何もかも失い、大阪から信楽にやってきた。気のいい家長だが、酒好きで、借金もある。にもかかわらず人助けをしてしまうお人好し。運送業を営んでいる。家に泥棒が入り、
喜美子の給料を前借りに行く。

川原マツ…富田靖子 地主の娘だったがなぜか常治と結婚。体が弱いらしく家事を喜美子の手伝いに頼っている。あまり子供の教育に熱心には見えない。
川原直子…桜庭ななみ 幼少期 やくわなつみ→安原琉那 川原家次女 空襲でこわい目にあってPTSDに苦しんでいる。それを理由にわがまま放題。
川原百合子…福田麻由子 幼少期 稲垣来泉 

●熊谷家
熊谷照子…大島優子 幼少期 横溝菜帆 信楽の大きな窯元の娘。「友達になってあげてもいい」が口癖で喜美子にやたら構う。兄が学徒動員で戦死しているため、家業を継がないといけない。婦人警官になりたかったが諦めた。高校生になっても友達がいないが、楽しげな様子を書いた手紙を大量に喜美子に送っている。喜美子とは幼いときキスした仲。

熊谷秀男…阪田マサノブ  信楽で最も大きな「丸熊陶業」の社長。
熊谷和歌子… 未知やすえ 照子の母

●大野家
大野信作…林遣都 幼少期 中村謙心 喜美子の同級生 体が弱い。高校で友達は照子だけだったが、ラブレターをもらう。
大野忠信…マギー 大野雑貨店の店主。信作の父。戦争時、常治に助けられてその恩返しに、信楽に川原一家を呼んでなにかと世話する。
大野陽子…財前直見 信作の母。川原一家に目をかける。

●滋賀で出会った人たち
慶乃川善…村上ショージ 丸熊陶業の陶工。陶芸家を目指していたが諦めて引退し草津へ引っ越す。喜美子に作品を「ゴミ」扱いされる。

草間宗一郎…佐藤隆太 大阪の闇市で常治に拾われる謎の旅人。医者の見立てでは「心に栄養が足りない」。戦時中は満州にいた。帰国の際、離れ離れになってしまった妻・里子の行方を探している。喜美子に柔道を教える。大阪に通訳の仕事で来たとき喜美子と再会。大阪には妻が別の男と結婚し店を営んでおり、離婚届を渡す。

工藤…福田転球  大阪から来た借金取り。  幼い子どもがいる。
本木…武蔵 大阪から来た借金取り。

…中川元喜  常治に雇われていたが、突然いなくなる。川原家のお金を盗んだ疑惑。
博之…請園裕太 常治に雇われていたが、突然いなくなる。川原家のお金を盗んだ疑惑。

●大阪 荒木荘
荒木さだ…羽野晶紀 荒木荘の大家。下着デザイナーでもある。マツの遠縁。
大久保のぶ子…三林京子 荒木荘の女中を長らく務めていた。喜美子を雇うことに反対するが、辛抱して彼女を一人前に鍛え上げたすえ、引退し娘の住む地へ引っ越す。女中の月給が安いのでストッキングの繕い物の内職をさせる。

酒田圭介…溝端淳平 荒木荘の下宿人で、医学生。妹を原因不明の病で亡くしている。喜美子に密かに恋されるが、あき子に一目惚れして、交際のすえ、荒木荘を出る。

庵堂ちや子…水野美紀 荒木荘の下宿人。新聞記者で不規則な生活をしていて、部屋も散らかっている。
田中雄太郎…木本武宏 荒木荘の下宿人。市役所をやめて俳優を目指すが、デビュー作「大阪ここにあり」以降、出演作がない。
静 マスター…オール阪神 喫茶店のマスター。静を休業し、歌える喫茶「さえずり」を新装開店した。

平田昭三…辻本茂雄 デイリー大阪編集長 バツイチ 喜美子の働きを気に入って、引き抜こうとする。
不況になって大手新聞社に引き抜かれた。

石ノ原…松木賢三 デイリー大阪記者
タク坊…マエチャン デイリー大阪記者
二ノ宮京子…木全晶子 荒木商事社員 下着ファッションショーに参加
千賀子…小原華 下着ファッションショーに参加
麻子…井上安世 下着ファッションショーに参加
珠子…津川マミ 下着ファッションショーに参加 
アケミ…あだち理絵子 道頓堀のキャバレーのホステス お化粧のアドバイザーとしてさだに呼ばれる。

泉田工業の会長・泉田庄一郎…芦屋雁三郎 あき子の父。荒木荘の前を犬のゴンを散歩させていた。
泉田あき子 …佐津川愛美 圭介に一目惚れされて交際をはじめる。

ジョージ富士川…西川貴教 「自由は不自由だ」がキメ台詞の人気芸術家。喜美子が通おうと思っている美術学校の特別講師。
草間里子…行平あい佳 草間と満州からの帰り生き別れ、別の男と大阪で飯屋を営んでいる。妊娠もしている。

あらすじ


第一週 昭和22年 喜美子9歳  家族で大阪から信楽に引っ越してくる。信楽焼と出会う。
第二週 昭和28年 喜美子15歳 中学を卒業し、大阪に就職する。
第三週 昭和28年 喜美子15歳 大阪の荒木荘で女中見習い。初任給1000円を仕送りする。
第四週 昭和30年 喜美子18歳 女中として一人前になり荒木荘を切り盛りする。
第五週 昭和30年秋から暮にかけて。喜美子、初恋と失恋。美術学校に行くことを決める。

脚本:水橋文美江
演出:中島由貴、佐藤譲、鈴木航ほか
音楽:冬野ユミ
キャスト: 戸田恵梨香、北村一輝、富田靖子、桜庭ななみ、福田麻由子、佐藤隆太、大島優子、林 遣都、財前直見、水野美紀、溝端淳平ほか
語り:中條誠子アナウンサー
主題歌:Superfly「フレア」
制作統括:内田ゆき