ドラマという枠をはみ出したフリーダムな展開がしばしば見られる本作だが、それにしても今週は自由すぎた。

老人格闘大会でジュリー藤尾が歌う
「やすらぎの郷」スタッフたちに苦もなく取り押さえられたことを恥じた秀サン(藤竜也)は、彼らに果たし状を送りつけていた。
秀サンを押さえつけるのに、まったく苦労しなかったというスタッフたちは、勝負に勝っても、わざと負けてやっても、秀サンを傷付けることになると頭を悩ませる。
菊村栄(石坂浩二)が間を取り持ち、秀サンに加え、トレーニング仲間・原田剛(伊吹吾郎)&那須十三郎(倉田保昭)とスタッフたちとで3対3の勝ち抜き団体戦にして、秀サンの出番が来る前に八百長で勝負を決めてしまうという作戦を立てる。
勝負の噂を聞きつけたマロ(ミッキー・カーチス)をはじめとする老人たちは、一大イベントとしてトトカルチョをはじめるし、決戦当日は「老人ホームの中にどうやってあんなリングを作ったの!?」と思うような本気のリングが設置。試合前にはなぜかジェリー藤尾が「マイ・ウェイ」を熱唱というフリーダム。
ガリガリの見た目に反して、まだまだ声量もある素晴らしい歌声ではあったけれど、いきなり本気の歌コーナーがはじまった意味はまったく分からず。
これまでいまいち見せ場のなかったジェリー藤尾に、活躍の場を作ってあげたとしか思えない!
試合は、予定通り秀サンの出番前に老人チームの勝利が確定。リング脇で入念にウォーミングアップをしていた秀サンの、自分の出番がないと悟ってボーゼンとする顔が悲しい。
菊村たちによる大がかりな作戦も、秀サンにはアッサリと見抜かれており、「あんな盛大に人前で恥をかかされたのは生まれて初めてですから……」と大いに落ち込んでいたのもかわいそう。
確かに真剣勝負で敗北する以上に、八百長で勝たせてもらうというのは“男の中の男”を自認していた秀サンとしては非常にショックなことなのだろう。
ただ、試合をする前からおじいちゃんが「死ぬまでやる! 負けたら死ぬ!」なんて周囲に言いふらしていたら、そりゃあみんな気を遣うよ!
もはや恒例、石坂浩二いじり
“男の中の男”秀サンが、気を遣われて勝ちを譲られるほどに老い衰え、マロがぶっ倒れて病院棟に運び込まれるなど、どこか死のニオイが漂ってきた「やすらぎの郷」。
菊村は名倉理事長から、マロが膵臓ガンのステージIVで余命わずかだということを知らされショックを受ける(しかし個人情報とかないのか、この施設は)。
そんな死のニオイを感じ取ったのか、マヤ(加賀まりこ)は自分の死後のことを心配しているという。
「人間は二度死ぬって言葉、聞いたことある? 一度目は肉体的に死んだ時。
ディズニー・ピクサーの映画「リメンバー・ミー」でもテーマとなっていたこの話。マヤは死後も忘れられないために、自叙伝を残そうとしているらしい。タブーなし、実名公開にてセンセーショナルに書き立てることで、人々の記憶に残ろうというのだ。
しかし、その内容がなかなかヤバそう。
「昔、栄ちゃんとちょっとあったじゃな~い?」
「アンタはお嬢(浅丘ルリ子)によろめいたりしたけど」
また石坂浩二いじりがはじまった。本作では、石坂浩二とリアル元妻・浅丘ルリ子&リアル元カノ・加賀まりこを共演させて、ちょいちょい過去を突っつくようなセリフを言わせている。
とはいえ、役の上では元妻や元カノではない設定だったはずだが……。やっぱ関係あったのか。
「そうやって過去を暴くのはよくないんだよ。みんな傷つくじゃないか!」
「アンタ、さんざっぱら周りの人をモデルにしてドラマ書いてきたじゃないの!」
「いやだって、それはあくまでモデルとして書いただけでさ。本人にも気付かないようにさ……」
菊村が書いてきたシナリオは知らないが、倉本聰のシナリオはモデルが丸分かりだよ! 知人をモデルにシナリオを書くだけでなく、それをモデル自身に演じさせるというドエスっぷりだ。
出演者自身の過去の傷に塩を塗り込むようなシナリオを本人に演じさせつつ、「過去を暴くのはよくない」というセリフを言わせるという二重三重のメタ構造。
……これをどういう気持ちで見るのが正解なのか、まだ心の整理がつかない。
吉岡秀隆といしだあゆみが母子役!?
次週予告では、さらに心の整理がつかなくなりそうな展開が明かされた。
倉本聰の超・代表作「北の国から」の純くん・吉岡秀隆が登場することは以前から予告されていたが、なんと役どころは中川玉子(いしだあゆみ)の息子! もうそれ、完全に「北の国から」じゃん!
「中嶋朋子と田中邦衛も出てくるの!?」と気になってストーリーが頭に入ってきそうにない。
(イラストと文/北村ヂン)
【配信サイト】
・Tver
『やすらぎの刻〜道』(テレビ朝日)
作: 倉本聰
演出:藤田明二、阿部雄一、池添博、唐木希浩
主題歌: 中島みゆき「進化樹」「離郷の歌」「慕情」
音楽:島健
チーフプロデューサー:五十嵐文郎(テレビ朝日)
プロデューサー:中込卓也(テレビ朝日)、服部宣之(テレビ朝日)、山形亮介(角川大映スタジオ)
制作協力:角川大映スタジオ
制作著作:テレビ朝日