三浦貴大、夏帆主演のドラマ25「ひとりキャンプで食って寝る」
(テレビ東京・金曜深夜0時52分~)。ゆるい「ソロキャンプ」をテーマにした趣味ドラマだ。


先週放送された第10話は偶数だから夏帆の主演回。野山で獲物をとって食べるハードボイルドなソロキャンプ女・七子がキャンプ先でなんだかワケありの人たちに出会うのだが、振り返ってみると彼女が出会うのは男女の組み合わせが多かった(祖母と孫の組み合わせなども含む)。

第10話で七子が出会ったのは、同じソロキャンプ女子の冬子(山下リオ)とその恋人・順平(中島歩)だった。ソロキャンプ女子とソロキャンプ女子とついてきた男。これはややこしくなりそうだ……。
「ひとりキャンプで食って寝る」10話。他人のキャンプ趣味を笑うな。リハウスガールの夏帆&山下リオ
イラスト/まつもとりえこ

転がるテントのような男


海辺のキャンプ場にやってきたソロキャンプ女子・冬子と彼女と一緒にいようとする男・順平。雰囲気は明らかに険悪そう。結局、冬子が強硬に主張して、テントも食事も別々に。会話を聞いていると、2人は同棲中の恋人同士だが、どうやら順平がソロキャンプのことを小馬鹿にしてケンカになったらしい。

大切な趣味を他人がとやかく言うのは、2019年においては明らかにルール違反だ。「人のセックスを笑うな」風に言うなら、「人の趣味を笑うな」。いくら恋人同士だからってケンカになるのは当然だろう。

おまけに順平は依存心が強く、冬子との結婚の話さえのらりくらりとかわし続けているらしい。
ペグを打たずに転がり続けるテントのフラフラさまよう感じが、彼を象徴している。テント男と化して気軽に七子に話しかけている様子を見ると、浮気の経験もあるのかもしれない。

「一人」もいろいろ


テント男・順平を冷たくあしらった七子は、釣ったメジナ(第6話で釣れなかった魚)を料理してカレー汁にする。順平が去っていった後、今度は冬子がやってきた。何かを察したのか、冬子には優しい七子。

「こういうときって、あまり知らない女と話したくならない? あたし、たまになるんだ」
「ならないけど、なるかな?」
「なるってことで話戻すけど。名前も知らないのに聞くけど、何かあった?」

ざっくりとした七子の感じがハードボイルドだ。七子が「あまり知らない人」ではなく「あまり知らない女」と言っているのがポイント。やっぱり同性同士のほうが通じ合えるところが多いのだろう。ちなみに夏帆と山下リオは第11代と第12代のリハウスガール。

冬子は七子と話しているうちに泣き出してしまう。順平にキツく当たっていたが本当は好きなようだ。
一方の順平も翌朝、姿が見えない冬子を懸命に探そうとする(でも、結局冬子のテントで眠ってしまう)。やっぱり相思相愛のようだ。

「明日からはあなたなしで生きてゆくのね」

翌朝、キスを釣っている七子が歌っているのは、黒沢明とロス・プリモスの「ラブユー東京」。1966年リリースの大ヒット曲である(なぜ七子がこんな古い歌を知っているのかは謎)。男に捨てられた女の悲しみを歌った歌詞なのだが、男を捨てられない冬子の背中をそっと後押ししているようにも聞こえる。

結局、冬子と順平は仲直りして、一緒に七子が作ったキスのペペロンチーノを仲良くすする。ダジャレ嫌いの冬子と七子がダジャレを言ってしまった順平から離れていくラストシーンは、将来の別れを暗示しているのかもしれないし、そうでないのかもしれない。見る側の想像に委ねるあたりが日本映画っぽい。

ソロキャンプは一人でするものだが、「一人になりたい人」がするものでもあるし、「一人になってしまった人」もするものでもあるし、「一人でいても平気な人」がするものでもある。表面上はすべて「一人」だが、内面は違うこともある。だから、ソロキャンパー同士が集まると、一人になったり二人になったりまちまちなのが面白い。

「ひとりキャンプで食って寝る」も今夜が最終回。
なんと、三浦貴大主演の11話と夏帆主演の12話を連続放送するぞ。年末に年末感がまったくないドラマを見るのもオツなものだ。今夜0時33分から。いつもよりちょっと早いので注意。
(大山くまお)

作品情報
ドラマ25「ひとりキャンプで食って寝る」
監督:横浜聡子(奇数話)、冨永昌敬(偶数話)
脚本:冨永昌敬、保坂大輔、飯塚花笑
音楽:荘子it(Dos Monos)
出演:三浦貴大、夏帆
主題歌:Yogee New Waves「to the moon」
プロデューサー:大和健太郎、滝山直史、横山蘭平
制作:テレビ東京、東京テアトル
※動画配信サービスひかりTV、Paraviで放送1週間前から先行配信
※放送後にTVerで配信中
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