
1月8日より新国立劇場 中劇場にて開幕する舞台『阿呆浪士』。喜劇作家・鈴木聡の代表作である本作は、赤穂浪士の討ち入りのドラマをベースとした、笑いたっぷり、泪ちょっぴりのエンターテインメント時代劇となっている。そこで戸塚祥太(A.B.C-Z)演じる主人公・八の友人、スカピンを演じるのが宮崎秋人だ。これまで数々の舞台を経験し、パルコ・プロデュースの作品は昨年の音楽劇『マニアック』以来2度目となる彼が、今作にかける想いとは?
編集/田上知枝(エキサイトニュース編集部)
パルコ・プロデュース作品のお利口じゃない、その心意気がすごく好き

――舞台『阿呆浪士』への出演が決まった時の心境を教えてください。
2019年の始めにも今回と同じパルコ・プロデュースの作品(音楽劇『マニアック』)で新国立劇場 中劇場の舞台に立たせていただいたんですけど、またこうしてパルコ・プロデュースの作品、新国立劇場 中劇場の舞台に立てるとは思ってもいなくて。これまでずっと“新国”に立つことを目標に役者をやってきた部分があるので、今回の作品のお話をいただいた時は、2年連続でその機会をいただけるのが本当にうれしいというか、もっと頑張ろうって思いました。
――役者にとって新国立劇場というのは大きな存在なんですね。ミュージシャンにとっての日本武道館というか。
そうですね。役者をやっている友達とか、“新国”でやるって言うと「いいな~」って言われる場所ですし、その逆も同じだし。その敷居みたいなものは感じます。
――その舞台に2年連続で立てるというのは、宮崎さん自身も自分の成長を感じるところでもあるのでは?
そう感じる部分はあります。役者の仕事って、これができるようになったから成長したとか、そういうのがないので成長の実感を得にくいんですよね。でも、劇場がすべてではないものの、自分が目指していた舞台に再び立てるっていうのは、自分の成長を実感することにしてもいいんじゃないかなと感じています。


――パルコ・プロデュースの作品はエッジの効いたものが多いイメージがあるのですが、宮崎さんにとってはどういう印象ですか?
自分が出演した作品以外にも、これまでさまざまなパルコ・プロデュース作品を観てきて、収まってない感じというか、お利口じゃない感じがするんですよね。その心意気がすごく好きだなって。でも、そのぶん、(出演の)お話をいただくと、ちょっと恐怖心もあるんですけど(笑)。自分はお利口な人間だと思っているので(笑)、そのカンパニーの中に入って大丈夫なのかなっていう。すごくプレッシャーを感じるんですけど、その一方でやりがいというか、やらねば!という想いも強くなります。
――その中で、今回出演される『阿呆浪士』という作品、そしてご自身のスカピン役についてはどういう印象をお持ちですか?
台本を読んだ時から、すごく好きな作品だなぁと思いました。赤穂浪士をモチーフにしたストーリーですけど、それも勧善懲悪じゃないというか、登場人物たちの義理の貫き方や人情深さが描かれていて。人の温もりっていいなと改めて思いました。
――スカピンは浪人であり、戸塚祥太(A.B.C-Z)さん演じる主人公・八の友人ですが、八が言った「自分は赤穂浪士」という嘘を信じてしまったり、武士の心を忘れていなかったりと、ピュアで熱い男ですよね。
そうですね。僕もわりと熱意一つでどこまでも行ける人間なので、スカピンの信じて疑わない力には共感しやすかったですね。それがスカピンの魅力だと思うし、男が憧れる男っていうか。今の時代、スカピンみたいに生きられることはなかなかないと思うんですけど、彼みたいな人がもっといっぱいいたらいいなっていう想いを抱かせてくれる人だと思います。だから、稽古をしていても、どんどん愛着が湧くんですよ。カッコいいなぁって思うし、だけど、カッコよく演じたくないなぁって。


――たしかにカッコいいだけのキャラクターではないかも。
台本に書かれている台詞を言えば絶対にカッコよくなるので、そうじゃない、二枚目で終わらないためには違うエネルギーを持って演じないとなって。それは自分でも思いましたし、(共演の)おかやまはじめさんからも2.5枚目に留めておけ、二枚目になりきるなというアドバイスをいただいたりして。そのさじ加減を今、稽古で探っている最中です。
――ちなみに、宮崎さん自身が思わず熱くなってしまうことってどんなことですか?
熱くなること……。なんか、お酒が入っている時とか特にそうなんですけど、役者仲間とか後輩から何か相談されたりしたら、ずーっと相談に乗っちゃいますね。どうしたらいいか、本気で考えます。まぁ、僕に相談するってことは僕の言葉でいいんだなって思うから、とにかく自分の言葉を届けたいと思って。たまに、相談に乗るつもりが、相手が甘えたことを言ってたりすると説教になっちゃいますけど(笑)。自分ができない部分については誰かに甘えるしかないけど、甘えるにはどれだけ自分が頑張るかじゃないの?って思っちゃう。
――宮崎さんもスカピンと同じく武士の心を持っていそうな(笑)。
そうかもしれません(笑)。でも、自分が選んだ道で、そりゃあ楽しいことばかりじゃないと思うんですけど、それでも選んだ以上はそれも込みで楽しまなきゃいけないんじゃないかって思うんです。大変じゃない仕事なんて一つもないと思うし。むしろ、辛いという感情も活かせるのが役者。どんな感情も無駄にはならないでしょって思ったりします。
戸塚くんがいるだけで場の空気が柔らかくなる

――宮崎さんが演じる熱血男・スカピンと劇中でタッグを組むのが、魚屋の八。八を演じる戸塚さんとは初共演だそうですが、一緒にお芝居をされてみていかがですか?
第一印象ではやっぱりカッコいいなぁって思って見てましたけど、稽古が始まってみると、ちょっと変わってるというか(笑)。もちろん、すごく優しいし、戸塚くんがいるだけで場の空気が柔らかくなるというか、不思議な魅力を持っている方なんですよ。それに、この作品での戸塚くんは台詞量も多くて、いろいろ覚えなきゃいけないこともたくさんあるのに、やっぱり完璧に覚えてますし。そういう中で、八は魚屋だからって言って、彼はねじり鉢巻の代わりにバンダナを頭に巻いてるんですけど、それで稽古に来て、帰ったりするので。
――バンダナを外さずに?
はい。細くねじったバンダナを頭に巻いたまま。
――稽古場以外で見かけたら結構目立ちますね(笑)。
そうなんですよ(笑)。ついこの間も、稽古前に戸塚くんがラジオに出ると言っていたのでそれを聞いてたんですけど、MCの方が「そのバンダナは……」って言っていて、えっ、ラジオでもバンダナを巻いてるんだ!?と思って(笑)。
――見えないのに(笑)。
そう(笑)。でも、そうやって体に(役を)叩き込む感じがすごく好きですね。あ~、“阿呆”だなぁって(笑)。
――この作品においての褒め言葉ですね(笑)。
はい(笑)。すごく面白い方なんですけど、そんな戸塚くんのことがみんな大好きなんです。

――宮崎さんとしても、八が戸塚さんでよかったという感じですか?
本当にそう思います。劇中の八とスカピンって、最後までテンションが高い状態なので、稽古場でもお互いを奮い立たせながらやってますね(笑)。稽古ですらしんどい時があるので、本番に入ってからもお互い支え合いながらできればと思っています。
舞台『阿呆浪士』、エネルギーを使い切るつもりで演じます
――戸塚さん以外にも今作には個性豊かな役者さんが揃っています。宮崎さんが共演を楽しみにしていた方はいらっしゃいますか?
共演者のみなさん、素敵な方々ばかりで。いろんなアドバイスをくださる松村(武)さんやおかやまさんだったり、あなたしか投げられませんっていうような球を投げてくる小倉(久寛)さんだったり、素敵なお芝居をする竹内(郁子)さんだったり……。僕はいつも、初めてご一緒する役者さんと芝居をするのを楽しみにしていて。
――そう思う理由は?
とにかくいろんな人と会って、いろんな演技を見て、刺激を受けたり、いいものを盗みたいなと思うんですよね。

――今回の作品で、この人のこういうところを盗みたいと思う方はいらっしゃいますか?
今思っているのは福ちゃん(福田悠太/ふぉ~ゆ~)ですね。なんか、すごく独特な魅力を持っているんですよ。天然なように見えて、それだけじゃない、これまでの経験によるテクニックや計算があることも感じるので、そんな福ちゃんの芝居を盗めたらうれしいですね。あと、(佐藤)誓さんもすごく魅力的だなと思います。福ちゃんや誓さん、それから小倉さんもそうですけど、今回の作品でははじめましての方がたくさんいて、そういう意味では“未知との遭遇”が多いんです。なので、稽古をしていても楽しいですし、たくさん勉強させていただいています。
――舞台は間もなく開幕を迎えますが、観に来てくださる方にはどういうところに注目してほしいと思いますか?
この作品には人と人との繋がりが色濃く描かれていて、すごく胸が熱くなるようなシーンもあるんですけど、最後には絶対に笑って帰ってほしいなと思います。僕らも、みなさんが観て良かったな、今年も頑張ろうと思ってもらえるような作品にしたいので、エネルギーを使い切るつもりで演じます。そして、この作品をきっかけに、自分の大切な人や大切なものに気付いてもらえたらうれしいですね。

――最後の質問になりますが、タイトルにちなんで、宮崎さんが我ながら“阿呆”だなと思った出来事を教えてください。
そうだなぁ……。僕、水回りの掃除が好きなんです。例えば稽古が休みの日とか、何も予定がなかったら休めばいいのに、一度始めたら止まらなくなっちゃって、気付いたら夕方になっていたりすると、失敗した~!って思います(笑)。もちろん、その日の夜お風呂に入った時に排水溝がきれいなのを見て、気持ちいい~!って思ったりしますけど、さすがに丸一日を水回りの掃除に費やすのもどうかと思って(苦笑)。なので、休日の過ごし方をもうちょっと上手にしたいですね。
作品概要
舞台『阿呆浪士』

<東京公演>
2020年1月8日(水)~24日(金)新国立劇場 中劇場
<大阪公演>
2020年1月31日(金)~2月2日(日)森ノ宮ピロティホール
【脚本】鈴木 聡
【演出】ラサール石井
【出演】戸塚祥太(A.B.C-Z)
福田悠太(ふぉ~ゆ~)
南沢奈央 伊藤純奈(乃木坂46) 宮崎秋人 堺小春 八幡みゆき 新良エツ子
佐藤誓 おかやまはじめ 松村武
西海健二郎 おおたけこういち 辻大樹 堀田勝 MAEDA 立川ユカ子 安川里奈 木下桜
玉川奈々福
竹内都子
小倉久寛
※1月12日(日)の東京公演及び、大阪公演については、玉川奈々福に代わり真山隼人(浪曲)・沢村さくら(曲師)が代演
【公式サイト】
https://stage.parco.jp/program/ahouroushi/
●ストーリー
時は元禄。とある長屋に住む魚屋の八(はち)は、ある日ひょんな取り違いから赤穂浪士の血判状を手にしてしまう。お調子者の八は、長屋小町のお直の気を引きたい一心で、自分が本物の赤穂浪士だ、と嘘をついてしまう。
一方、大石内蔵助は、風車売りに身をやつし、飄々と暮らしている。大石内蔵助の娘・すずは、いつまでも討ち入りを決行しない父に業を煮やして赤穂から江戸に乗りこんで来る。すずは、お調子者の八を利用し、集まってきたニセモノの赤穂浪士たちと討ち入りを決行しようとするが……。
ミヤザキシュウト
1990年9月3日生まれ、東京都出身。個々の演技活動を通して夢を追いかけ、アメーバのように広がり続ける俳優集団D-BOYSに所属。2016年、松田凌と北村諒の3人で結成したユニット「Unknown Number!!!」で歌手デビュー。舞台『阿呆浪士』のあとには2020年3月20日(金)~3月29日(日)東京芸術劇場 シアターウエストにてunrato#6『冬の時代』、6月30日(火)~7月16日(木)シアタークリエにて舞台『アルキメデスの大戦』が控えている。