ドラマ24『コタキ兄弟と四苦八苦』。生真面目な兄・一路(いちろう)を古舘寛治、ちゃらんぽらんな弟・二路(じろう)を滝藤賢一が演じる。
ゲストの樋口可南子は意外にもCM以外の映像作品は5年ぶりの出演だ。第4話のサブタイトルは(死苦/死んでゆく苦しみ)。

まるで女王様と従者


「私は兄弟喧嘩を聞くためにあなたがたを呼んだの?」
面談中に口喧嘩を始めるコタキ兄弟をバシッと叱り飛ばす依頼者、島須弥子(樋口可南子)。正論だけど、怖えー。
週2回、期間は3ヶ月。レンタルおやじ業界では珍しい長期の契約だ。
「3ヶ月後なんかあんの?」と聞く弟に須弥子が答える。

「死ぬのよ。あと3ヶ月したら世界は終わるんだもの」
「コタキ兄弟と四苦八苦」4話。樋口可南子「死ぬのよ。あと3ヶ月したら世界は終わるんだもの」の真意
イラストと文/まつもとりえこ

自分はカフェでくつろぎながら、兄弟を買い物に走り回らせる須弥子様はさながら女王様のよう。
一路(いちろう)二路(じろう)という名前すら呼んでもらえない。まとめて「ナニろう」扱い。

「世界は終わる」の本当の意味


兄弟が次に呼び出されたのは医療施設。
「世界は終わる」というのはこういう意味だったのだ。
余命3ヶ月。
マンションを売り、友人や仕事仲間に挨拶を済ませてきた。誰も病気のことを知らない。
これまで築いてきた人間関係や思い出を壊したくない、きれいに逝きたい、と須弥子は願っていた。
「悪態をつくのはお金で雇った無関係のどうでも良い兄弟で充分」

入院後も兄弟と須弥子の交流は続く。相変わらずの「ナニろう」呼ばわりだが、出会った頃の、女王と従者のような雰囲気はない。
完成したジグソーパズルをノリで固めたりトランプをしたり、秘密にしていた思い出話をしたりして昔からの友人のようだ。


須弥子が寂しそうに呟く。「どうして私だけ世界から消えてしまうんだろう」

「ナニろう」から「一路(いちろう)」「二路(じろう)」に


その夜再び、兄弟は須弥子を訪ねる。
トークショー「ナニナニ・ブラザーズ presents★世界の終わりを語るナイト」を開催するためだ(ロフトプラスワンあたりでやってそう)。
須弥子を元気付けようと熱弁をふるう兄弟が愛らしい。
「人類も地球も何度も滅びる。我々みんないつかは滅びる。
滅びる日に多少の誤差はありますけど」
「ふふふふ、一路(いちろう)二路(じろう)もバカねぇ!」

ラストシーンは須弥子のお葬式。亡くなる1ヶ月前、兄弟は突然レンタル契約を打ち切られ、連絡が取れなくなっていた。
ムラタ「須弥子さん言ってましたよ。嫌われてるくらいが良かったのに、って。ナニろうぐらいがちょうどよかったって」

初め他人だったコタキ兄弟は須弥子の「友人」になっていた。悪態をついて、傷つけたくない大切な存在になっていた。

自分のことを思ってくれている友人がいるというのは嬉しいし心強い。最期の1ヶ月間も、須弥子の「死苦(死んでゆく苦しみ)」をラクにしたんじゃないだろうか。
(イラストと文/まつもとりえこ)

ドラマ24『コタキ兄弟と四苦八苦』
テレビ東京 毎週金曜 深夜0:12~
配信:Tver・Paravi・ひかりTV・GYAO

出演:古舘寛治 滝藤賢一 芳根京子 宮藤官九郎 ほか
脚本:野木亜紀子(『逃げるは恥だが役に立つ』『アンナチュラル』『獣になれない私たち』ほか)
監督:山下敦弘(映画『ハード・コア』『リンダリンダリンダ』ほか)
オープニングテーマ:Creepy Nuts『オトナ』(ソニー・ミュージックレーベルズ)←2月5日配信リリース!
エンディングテーマ:スターダスト☆レビュー『ちょうどいい幸せ』(日本コロムビア)
チーフプロデューサー:阿部真士(テレビ東京)
プロデューサー:濱谷晃一(テレビ東京) 根岸洋之(マッチポイント)平林勉(AOI Pro.) 伊藤太一(AOI Pro.)
製作:テレビ東京 AOI Pro.
制作著作:「コタキ兄弟と四苦八苦」製作委員会

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