<第30話あらすじ>「殺人のような金がかかる無駄はしない」
公園で女性の殺害遺体が発見され、臨場する科捜研メンバーたち。状況から殺害現場は他の場所と考えられた。被害者はブログで人気を誇る“節約の達人”柴崎佐江(菊地美香)だと判明。だが実は贅沢が大好きな佐江は、儲けるためにブログを書いていた“ビジネス節約家”であり、節約情報を提供していた“ゴースト”の存在も浮上する。
一昨日、夫婦喧嘩をし、家を出て行ったきりだという被害者。直接の死因は、後頭部を鈍器で殴られたことだが、背中や両腕にも亡くなった後についた奇妙な線があった。胃にはパン、卵、タマネギ、牛脂、胡椒が残っており、節約料理と見られたが、何の料理かまでは不明だった。遺留品の指紋から、“本物の節約の達人”園田逸子(松岡依都美)を見つけ出す科捜研メンバーたち。逸子は、佐江と半年ほど前に出会って以来、節約の知恵を無償で提供しブログに協力していたという。家出した佐江を自宅に泊めたことを逸子は認めるが、「殺人のような金がかかる無駄はしない」という驚きの理由で殺害は否認した。
そんな中、新たに浮上した容疑者は、逸子の実母で別居中の園田志乃(筒井真理子)。20年前、愛人の桐生康介(西村匡生)を殺害した前科があり、なんとその罪を娘の逸子になすりつけようとしていたという。そのときの様子を目撃、証言したのが佐江だった。
8年前に出所した志乃は喫茶「もと一」で働いており、同店には佐江の胃の内容物で作れる「パンの耳ステーキ」なるメニューが出されていた。このステーキは逸子も作れるとのこと。志乃と逸子、それぞれが作ったパンの耳ステーキを鑑定すると、胃の内容物と成分が一致したのは志乃が作ったステーキだった。さらに、店内からは佐江の血痕が付着したストッキングが見つかった。
志乃は容疑を認めるが、このストッキングには榊マリコ(沢口靖子)の指紋が付いていた。つまり、事件後に志乃が逸子の家から持ってきたストッキングである。土門薫(内藤剛志)は「娘を守るために悪い母親を演じているのでは? 20年前の事件と似ている」と志乃に指摘した。
逸子の家を捜索するも、証拠は発見されない。しかし、マリコたちは遺体の背中に残る痕を元に、大きなタライ2つとシャワーホース等で遺体を運び出せると証明。でも、逸子は「遺体は運んだが殺してはいません」と佐江の殺害を否認した。彼女は志乃の犯行と思い、志乃をかばうために遺体を運び出していたのだ。
パンスト小銭貯金に入っていた硬貨を調べると、「もと一」オーナー・山元一史(日野陽仁)の指紋が検出された。
科捜研の法則に当てはめると犯人はバレバレ
母・志乃と娘・逸子がお互いのことを殺人犯だと思い、かばい合うというのが今回の構図だ。なので「はい、私がやりました」と罪をあっさり認める志乃は犯人ではないし、だからといって逸子が犯人でもない。
前回のレビューで「最近の科捜研はいつもモブが犯人」という“科捜研あるある”を紹介した。それをこの30話に当てはめると、犯人は山元しかいなくなる。クローズアップされた途端、土門から“お前”呼ばわりされるわかりやすさだ。
ここで、『科捜研の女』で犯人を導き出す法則を今一度まとめたい。
・犯人は20時12〜13分くらいにチラッと出てくるモブキャラの可能性が高い
・20時30分頃の時点で犯人と強く怪しまれる者は九分九厘犯人ではない
今回は登場人物が少な過ぎたので、バレバレだった。
また、この山元が最悪なのだ。
「好きな女を守りたかったんじゃないのか!?」(土門)
山元がみっちり土門に怒られている。いつもマリコを守っている土門だけに、言葉に重みがある。
サスペンスであり、情報番組でもあった
今回はサスペンスでありながら、節約術を特集する情報番組のようでもあった。
逸子の家の浴室にはシャワーがない。
「水の使いすぎを防ぐためシャワーを外したんですね」(マリコ)
プラスチック製の大きな桶を使って洗濯する逸子。
「やはり、洗濯の基本はお風呂の残り湯ですよね」(マリコ)
確かにそうだが、この桶(2つ)とシャワーホースで作る大きな箱で佐江の遺体は運ばれた。こんなのゴロゴロ転がしてたら目立ち過ぎるし、誰かしらに目撃されてると思うのだけど……。よく通報されなかったものだ。
伝線したストッキングには小銭を入れ、貯金箱にしていた逸子。確かに貯金なのだが、佐江が撲殺された際の凶器はこのパンスト小銭貯金である。(「パンスト小銭貯金」というパワーワード!)
大量の小銭でぬかを購入していた逸子。コツコツ貯金してきた賜物であるが、その小銭には犯人の指紋が残されている。
マリコはパンの耳ステーキを逸子に作ってもらい、払った材料費のおつりとして5円を受け取っていた。なんと、その5円に山元の指紋が残っていたのだ。相変わらず、マリコが持っている。今回は証拠まで引き寄せていた。もっと言えば、30話は無駄なシーンが一切なかった。節約術も、おつりをもらうのも、小銭での買い物も、全てが伏線!
この5円硬貨に血液反応があるか調べる際、橋口呂太(渡部秀)が手を合わせて祈っている。
「ご縁がありますように……!」(呂太)
凶器とご縁があるなんて嫌過ぎるだろう。
実は、これも“科捜研あるある”の1つだ。
領収書が落ちず、最中を落とすマリコ
どうやって佐江の遺体を運んだか検証するため、ロープや桶など目ぼしい物を大人買いしてきたマリコ。すると、彼女は日野所長(斉藤暁)から釘を差された。
「言っとくけどね、あれ全部経費で落ちないからね。科捜研も年々厳しくなってるんだよ」(日野)
ショックのあまり「ガーン!」という表情で固まり、食べている最中を落としてしまったマリコ。
エンディング、恒例のどもマリデートでマリコは言った。
「予算も年々厳しくなってるの。鑑定も節約の時代なの」
ドヤ顔のマリコ。でも、25話では事件を解決するため、日野所長が引くくらい高価なキャリーバッグを無断購入し、当たり前のように領収書を日野所長に押し付けていたはずだ。
(寺西ジャジューカ イラスト/サイレントT@ワレワレハヒーローズ)
木曜ミステリー『科捜研の女』
ゼネラルプロデューサー:関拓也(テレビ朝日)
プロデューサー:藤崎絵三(テレビ朝日)、中尾亜由子(東映)、谷中寿成(東映)
監督:森本浩史、田崎竜太 ほか
脚本:戸田山雅司、櫻井武晴 ほか
制作:テレビ朝日、東映
主題歌:今井美樹「Hikari」(ユニバーサル ミュージック/Virgin Music)
※各話、放送後にテレ朝動画にて配信中