今回はサスペンス回。
いつも以上にユルユルの展開に「何じゃこりゃ!?」となってしまった。

人の顔が識別できない患者
今回の患者は、エステサロンなどを経営する実業家・滝野祥子(原沙知絵)。酒に酔って階段から転落し、頭を強打したことで、人の顔が識別できなくなる「相貌失認」の症状が出ている。
有名どころだと、ブラッド・ピットが「相貌失認」に悩んでいると公表しているが、祥子の場合はそれに加え、若干記憶もあやふやになっているようだ。
彼女の病室には西川(夙川アトム)と池谷(木村了)というふたりの男がお見舞いに訪れていた。しかもこのふたり、服装も髪型もそっくりなのだ。
ここまで同じ格好をしているからには、兄弟だったり、仲良しだったり、さすがに何か意味があるんだろうと思っていたのだが、特に理由はナシ。
「相貌失認」は、服装や髪型から相手が誰なのか推測することはできるため、その対策として“偶然”同じ服装&髪型をしていただけなのだ。
西川か池谷、どちらかが彼氏であることが示唆されているものの、正解を隠して進行していたため、ますます話がややこしい。
結局、祥子が記憶を取り戻して、階段から落ちたのは酒に酔っていたからではなく“誰か”に突き落とされたからだと判明。
逆光だったので顔は分からないが、どうやら犯人は祥子に言い寄っていたものの相手にされていなかった池谷。彼氏は西川ということのようだ。
池谷は、祥子の記憶が戻らないように監視するため、たびたびお見舞いに来ていた模様。……いやいや、何だよその行動!?
突き落としたことを隠蔽したいなら、スキを見て殺すとか、さっさと逃げるとか、もっと色々方法があるでしょ!?
結局、池谷が何を考えているか分からないまま、彼氏である西川のフリをして祥子を地下駐車場へ連れ出してバールでぶん殴るという、ガバガバにも程がある計画を実行する。
しかし、タイミングよく西川が現れ、さらに警察までやって来て……という結末。ホントに何をしたかったのか。
初見では話がよく分からなかった……
西川と池谷がもみ合う中、顔の区別がつかないものの、
「彼のほうが絶対、弱っちいから」
ということで彼氏を見分け、祥子が犯人・池谷に金的を喰らわす。
このクライマックスを描きたいがために、色々と無理のある設定になっていったと思われる今回のエピソード。
西川が地下駐車場にやって来られた理由も分からないし、何で警察が来たのかも謎。そもそも、池谷が祥子を突き落とした経緯もよく分からなかった。正直、初見では話が飲み込めなかったよ!
「相貌失認」の患者が、顔を識別できないが故に犯人に翻弄され……というプロット自体は面白そうなのに、どうしてこうなった!?
自分の顔が分からないという祥子に手を差し出した西川が、
「はじめまして、これからよろしく」
と、再び関係を築いて行こうとする結末は、何となくいいシーンではあったものの、「相貌失認って、そういう問題か!?」とも思ってしまった。
金八先生に清風コンビ……力の入れどころ、そこ!?
次回へと続く患者として、左半分が認識できなくなる「半側空間無視」の前川洋一(金田明夫)も登場していたが、どちらかというと祥子たちのエピソードより、こちらに気を取られた。
というのも、前川洋一を演じる金田明夫と、その妻・純子を演じる原日出子、どちらも「3年B組金八先生」にレギュラー出演していたから(北先生と、カンカンの妻!)。
その上、冒頭で小机幸子(広瀬アリス)に手術されていた患者は、国井先生役の茅島成美だ。
元・金八先生のキャストがTBSの「日曜劇場」に出演しがち(特に「半沢直樹」など福澤克雄演出作品で)というのはお馴染みだが、なぜ関係のない日テレのドラマでこんなに金八キャストが!? たまたまにしては揃いすぎだ。
もうひとつ気になったのが、祥子を取り巻くふたりの男の名字が西川&池谷という、ソウルオリンピックの体操で活躍した「清風コンビ」だということ。
医療ドラマのメイン視聴者層であるおっさん、おばさんの心をつかみに来ているとも言えなくはないが……。
かなり気合いを入れて見比べないと違いが分からないエンディングダンス(一応、毎回違うんです!)といい、力の入れどころが間違ってるんじゃないかと。
中間管理職・天海祐希なんて見たくない!
今回は3人の患者の他、深山瑤子(天海祐希)、黒岩健吾(椎名桔平)それぞれの子どもとの関係問題。今出川孝雄(三浦友和)が進めている医師のリストラ問題。小机が恋しているバーテンダーに女の影が問題などが同時進行していた。
いつもながら詰め込み過ぎ!
おそらく毎回“顔”だったり“才能”だったりと患者側のエピソードに引っかけて、医師たちの抱えている問題を少しずつ浮き彫りにしていくという計画なのだろうが、今のところどちらも消化不良になってしまっている。
天海祐希主演の医療ドラマで視聴者が見たいのは、やはり天才脳外科医・天海祐希がズバズバ手術していくところ。
しかし実際には、中間管理職的なフォローや根回しばっかりやっている。……そんな地味な天海祐希、見たくない!
そもそも深山は「次のトップナイフは私だから」なんて宣言していたわりに、全然手術してない。
このまま「中間管理職・天海祐希」状態で終わってしまうのか、それともサブタイトルにあるように「天才脳外科医の条件」が明かされるのか!?
(イラストと文/北村ヂン)
【配信サイト】
・TVer
・Hulu
「トップナイフ─天才脳外科医の条件─」(日本テレビ)
原作:林宏司『トップナイフ』(河出文庫刊)
脚本:林宏司
音楽:横山克、鈴木真人
主題歌:JUJU 「STAYIN' ALIVE」(ソニー・ミュージックレーベルズ)
医療監修:新村核、岩出康男、谷川緑野、本田俊哉、松本尚、中村光伸
看護指導:石田喜代美
医療CG:奥山正次(デキサ)、横山敦子(GAIN)
医療担当助監督:竹中修
医療協力:セコメディック病院、第一会若葉クリニック
チーフプロデューサー:池田健司
プロデューサー:鈴木亜希乃、茂山佳則
演出:大塚恭司、佐久間紀佳、茂山佳則
制作協力:AX─ON
製作著作:日本テレビ