東日本大震災で行方不明になっていたしのぶ(清野菜名)の結末が描かれた。
まさかの令和編に突入
安否が分からないままのしのぶを探しに山梨から福島までチャリで(……と思いきや、どこかでクルマに乗り換えていたようだが)向かった翔(菅谷哲也) 。
結局、しのぶを探すどころか被災地の邪魔をしただけですごすごと帰ってきた。
さらに数日後、しのぶの母親・里子(菅野恵)が福島から歩いて(!?)小野ヶ沢に逃げてくる。
福島を見てきたこのふたりから語られる被災地の状況は、相変わらず再現映像などを一切使わずにセリフだけでの表現ではあったが、そのすさまじさがひしひしと伝わってくる、言葉の力を感じさせるものだった。
結局、しのぶはほんの少しの差で津波に飲まれてしまったという。
前作「やすらぎの刻」では、アザミ(清野菜名)が祖母とともに津波に飲まれ、祖母の手を離してしまったことで生死が別れたというエピソードが描かれていたが、今回の清野菜名はわずかな差で亡くなってしまったのだ。
……とはいえ、何だかんだで生きていて、再会を喜び合って「道」パート終了という展開なんじゃないかと予想していたのだが、画面が突然暗転。一気に9年の時が過ぎて、まさかの令和元年に突入した。
大正・昭和・平成という3つの時代の物語じゃなかったのか!?
さすがに9年も経ってしまうと「実は生きてました〜!」という可能性はほぼゼロだろう。
「あれから10年たたんのに、皆もうケロッと忘れとる。忘れてウキウキ浮かれとる。日本列島どこへ行く、わしらを置いてどこへ行く~」
夕暮れの部屋で、令和になっても相変わらずふたりで縄をないながら、チョボクレをうなっている老夫婦。
翔や里子が詳細に語った被災地の状況以上に、絶望的な気持ちが伝わってくる。
「道」パートはもうこれで完結でもいいんじゃないかという、重く印象的なシーンだった。
……しかし「道」はまだ続く。

90代になった公平たちの“老い”演技がスゴイ
震災から9年、しのぶの行方は分からないまま。
翔はいまだに、しのぶの父親・堺俊一(聡太郎)とともに月に一度は福島を訪れて、しのぶを探し続けているようだ。
「きれいな姿じゃ。誰も止められん」
気持ちは分かるけど、妻子がいるのに昔ちょっとイイ感じの仲になった女従兄弟を9年間も探し続けているというのは、妻側からすると結構イヤじゃないだろうか。
そんな浮世離れしている翔をよそに、根来家には色々と問題が。
次男・竜(駿河太郎)は架空の土地取引で金持ちの老人を騙し、警察に追われていた。
四男・圭(山村憲之介)は、様々な事業に手を広げすぎて農協からの借金がかさみ、「離農勧告」を受ける可能性があるようだ。
公平としのはそれぞれ95歳&96歳。息子たちも70歳前後にはなっているだろうに、なんちゅう親不孝……。
一方、“出来の良い”息子である長男・剛(田中哲司)と三男・健(青柳信孝)は、高齢で心配な公平たちを「自分が引き取る」とお互いに主張していた。
「たまには長男を立てろ!」
「兄ちゃんも年だしさ……」
老老介護を嫌がって、親を押しつけ合ってもおかしくないところ、メチャクチャ孝行息子!
家族からドロップアウトしてしまった息子がいるかと思えば、家族の絆を大事に守る息子もいる。
公平は、故郷を捨てて満州に渡った村人、故郷に残った村人とが分断された戦時中の小野ヶ沢を思い出すのだった。
それにしても、90代の老人を演じる橋爪功と風吹ジュンの“老い”の演技がすごかった。
目の前で竜を逮捕され、しのが感情を爆発させて泣き崩れたかと思えば、認知症がさらに悪化した公平の方は逮捕を知らされてもポカーンとしていた。
演技をする上では、その場その場で適切な感情表現をするというのは重要な要素だが、「適切な感情表現ができない」という演技もあるとは。
「道」パートはホントに橋爪功・風吹ジュンの老優ふたりの演技に引っ張られている。
なんとラスト一週!
さて、一年間続いてきた「やすらぎの刻〜道」も残すところあと一週間とのこと。……あと一週で終わるか!?
「道」の方はまだしも、だいぶストップしたままの「やすらぎの刻」パートはどうやって収拾をつけるつもりなのか。
倉本聰自身にとってもはじめてとなる一年間続く帯ドラマ。しかも(今のところ)人生最後の連ドラと語っている本作がどんな結末を迎えるのか見届けたい。
(イラストと文/北村ヂン)
【配信サイト】
・Tver
『やすらぎの刻〜道』(テレビ朝日)
作: 倉本聰
演出:藤田明二、阿部雄一、池添博、唐木希浩
主題歌: 中島みゆき「進化樹」「離郷の歌」「慕情」「終り初物」「観音橋」
音楽:島健
チーフプロデューサー:五十嵐文郎(テレビ朝日)
プロデューサー:中込卓也(テレビ朝日)、服部宣之(テレビ朝日)、山形亮介(角川大映スタジオ)
制作協力:角川大映スタジオ
制作著作:テレビ朝日