見ると元気になれること間違いなしの大傑作コメディ
米映画評価サイト RottenTomatoesで批評家支持率97%を叩き出し、日本の映画ファンの間でも公開前から話題になっていた『ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー』。
どういう映画かといえば、邦題を読んで字のごとく、ブックスマート(Booksmart=頭は良いけど世間知らずな人物を意味する言葉。スマートと言いつつも、決して褒め言葉ではない)が、卒業前夜にパーティーデビューする話なのだが、最近ちょっと元気ない人は、見たら絶対元気になれること請け合いの大傑作痛快青春コメディである。

8月21日に公開されるやいなや、ツイッターやネット記事では、すでにあらゆる方面で大絶賛。そう。つまり、公開から2週間経って書いているこの記事は、完全に乗り遅れている。まさに今更なのである。映画ファンなら、「そういうの、もう読んだし。」なこと請け合いのレビューなのだ。
しかし! 気になってるけど、見ようかどうか迷ってる人はまだいるはず! いや、むしろ逆にいてほしい! というわけで、このレビューは、そんな人の背中を押したいダメ押し記事である。
いざ、呼ばれてもいないパーティーへ!

主人公はこの2人。遊びやパーティーには目もくれず、高校生活を勉強に捧げ、名門大進学への切符を手にしたモリーとエイミー。意気揚々と高校を卒業していこうとする直前、モリーは知ってしまう。どうせ三流大に行くものと思っていた遊んでばかりのリア充クラスメイト達の進学先が、自分と負けず劣らずの名門大だったのだ。

何ということだろう。モリーが勉強に明け暮れていた間、アッパラパーなパリピだと正直見下していた同級生たちは、遊びと勉強を両立していたのだ。驚愕するモリー。
女の子2人の痛快青春バディムービー

こう聞くと、女の子2人のドタバタ青春コメディっぽいが、見始めるとむしろ女性刑事2人のアクションバディムービーのような印象を受ける。それもそのはず、本作を描いたオリヴィア・ワイルド監督は、女性が男性を追いかけたり、冴えない女の子が外見を変えて人気者になろうとする映画ではなく、女性の友情を描くため、『ビバリーヒルズ・コップ』や『リーサル・ウェポン』を参考にしているのだ。
モリーとエイミーは決して、地味でイケてないタイプのガリ勉ではない。自己肯定感が強く、恋やSEXにも興味津々で、下ネタや毒舌をバンバン吐きまくり、言いたいことはオドオドせずガンガン言う。一方が自虐なセリフを吐くと、もう一方が「私の親友を悪く言うな」とその頬を引っ叩く。目的のためにどんどん行動する彼女達の姿は非常に痛快で、見てるこっちも勇気が湧いてくる。
差別やカミングアウトの遥か先で、思いっきりハッチャけている
これもまた、すでにあらゆる方面で言われていることだが、この映画ではこれまでそれ自体が映画のテーマとして描かれ、重くなりがちだったLGBTQや多様性に関する描写が、そんなことこの社会では当たり前とでもいうようにメチャクチャさらっと描かれている。エイミーは同性愛者だが、映画の物語が始まる遥か前にカミングアウトを済ませており、好きな女の子がいて、モリーはそれを応援している。
加えて、モリーとエイミーが通う学校はアジア系やメキシコ系など人種が多様だが、わざわざそれを話題として扱うこともしない。人種や同性愛に対する差別などとっくのとうに通過し、そんなことでしのごの言うのは前時代的だと言わんばかりに遥か先でハッチャケまくっている。生きづらさとは無縁と思わせる学校だ。

将来地上波で放送してほしい映画今年No.1
この世には、考え方や価値観をアップデートできる映画が何本もあるが、『ブックスマート』は間違いなくその中の一本だと断言できる。
サブスクで映画が前より身近になったと言われる昨今だが、ゴールデンタイムに映画が放送されれば、ほぼ必ずと言っていいほどそのタイトルや関連ワードが、ツイッターにトレンド入りする。
(ウラケン・ボルボックス)
作品情報
『ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー』9月4日(金)から新たに17館の劇場で公開が決定。大ヒット上映中!
劇場情報:https://eigakan.org/theaterpage/schedule.php?t=booksmart

監督:オリヴィア・ワイルド
製作:アダム・マッケイ、ウィル・フェレル
出演:ケイトリン・デヴァー(『デトロイト』)
ビーニー・フェルドスタイン(『レディ・バード』)
配給:ロングライド
2019年/アメリカ/英語/102分/スコープ/カラー/5.1ch/原題:BOOKSMART/日本語字幕:高内朝子
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公式サイト:https://longride.jp/booksmart