多部未華子『私の家政夫ナギサさん』もやもやもナギサさんの笑顔と「お食事にしましょう」で吹っ飛ぶ特別編
イラスト/ゆいざえもん

すぐに会えたね、『私の家政夫ナギサさん』特別編

メイ(多部未華子)ナギサさん(大森南朋)の結婚エンドを迎えた『私の家政夫ナギサさん』(TBS系 毎週火曜よる10時〜)。夫じゃなくて家政夫のままでもよかった派と夫になってよかった派の意見がきれいに分かれながらも、終わりを惜しむ気持ちは同じ。そこへ特別編のおかわり来た! 

『「私の家政夫ナギサさん」新婚おじキュン!特別編2Hスペシャル!」は、メイとナギサさんたちの後日談少しを全9話の総集編に絡ませながらの2時間。
新婚生活1カ月。朝、ささいなことで喧嘩してしまったメイとナギサさん。ふたりの出逢いとここまでの歩みを振り返る形での総集編。視聴率は14.9%

冒頭は、新婚風景。一緒に暮らし始めてから1カ月。お互い、いまだに丁寧語。でも結婚前のほうが優しかったとナギサさんに対してやや不満を感じるメイ。恋愛においても結婚においてもあるある。結婚という現実と恋愛というファンタジーは違う。ましては、仕事で家事をやっていたナギサさんと、夫になったナギサさんとはやはり別だったのか。「潔癖おじさん」「いびきおじさん」「小言おじさん」とメイはぷりぷり。

ナギサさんはメイのHard Rockの目覚ましが苦手。
メイはナギサさんのいびきが苦手。ナギサさんはメイに洗濯物の出し方やペットボトルの捨て方などを伝えるが、メイはなかなかできない。たぶん、洗濯するのもゴミ捨てもナギサさんがやる代わりに、せめて作業がしやすいようにメイが歩み寄るべきなのだが、そんなにすぐにはできないメイには共感しかない人も多いのではないだろうか。

ナギサさんはメイさんの生活リズムを乱すようで……と反省を田所(瀬戸康史)に語るが、田所はそれをノロケだと感じる。

田所は最終回で家政夫を雇うようになった。なぜ、田所のもとにも家政婦でなく家政夫? 田所と家政夫・粟野(栗野心平)とは今後、進展があるんだろうか。ちなみに、栗野心平が『ナギサさん』の料理監修をしていた。出てくる料理はみんな美味しそうだったなー。最終回のルーロー飯。点心、春巻き、肉と野菜の炒めものもあって、こんなの毎晩、夕食に食べていたら絶対太る。

朝ドラのように、『サザエさん』のように、ずっとあってほしい

一方、メイの会社の同僚・薫(高橋メアリージュン)は、まったくノーマークだった同僚“サスペンダー坊主”の堀江(岡部大/ハナコ)と急接近。薫は「結婚するなら、私のことちゃんと見てくれる人がいいな」と言っていたら、最終回で、堀江が薫のことをよく観察していたことを知って、お?という感じだったが、特別編ではまだ同僚のままで、会話していて、改めて“私のことちゃんと見てくれる人”と気づいて、好きスイッチが入った。

天保山製薬横浜支社はにわかに恋だらけ。
福岡支店に転勤になった瀬川(眞栄田郷敦)は前からなんとなく匂わせていた天馬(若月佑美)と遠距離恋愛で、上司・松平(平山祐介)にバレてしまう。天馬の「あかり〜んビーム」。

どの場面もほのぼの。でも時々、凝った撮影をしている。瀬川と松平の鍋シーンも妙にぐる〜んとカメラが回り込んでいた。第1話でもおそらくドローンを社内で飛ばしていたと思う。誰もが気楽に見られることが最大の長所である『ナギサさん』だが、誠実に楽しんで作られていることをカメラが教えてくれる。

28歳の誕生日、メイがナギサさんと出会って、家事を代行してもらうようになったことで、仕事も家のなかも快適に回るようになって、そうしたらモテキも到来して、営業先の医師・肥後(宮尾俊太郎)や営業のライバル会社の田所に好かれて、でもなんとなくナギサさんが気になって……。

ついにナギサさんの過去を知り、ますますメイとナギサの信頼関係は深まっていく。でもこのまま家政夫として雇っていれば、家を片付けてくれて、夕飯を作ってくれて、それを食べながら相談できて……それで十分だったが、あるときナギサさんが異動になることになり、結婚の道にまっしぐら。

なんとなく2時間のスペシャルドラマや映画でもまとめられそうな話で、実際、今回の総集編で過不足なかったのだが、そうはいっても、毎週毎週、メイがナギサさんに癒やされていく繰り返しが良かったわけで。朝ドラのように、『サザエさん』のように、ずっとあっていいドラマだった。


メイとナギサさんのおままごとみたいなやりとりを見ていると、性生活はどうなっているんだろうと気になってしまうし(寝室にはベッドと布団)、メイとナギサさん結婚反対派では決してないのだが、リアルにはやっぱりあんまり考えたくないなあと思ったりして。リアルに考えるほうが間違っているのかもしれないし。

部屋もメイの好みのままで、ナギサさんの落ち着く場所はあるんだろうか。たまに息抜きに実家に戻るんだろうかとかまで考えてしまったのだが――。

喧嘩したその夜、お互いが反省を語り、けっきょく「お食事にしましょう」というキラーワードで、もやもやを水に流す。ナギサさんはあくまで世話のやきがいのあるメイが好きなのだろう。自分がサポートすることでメイが仕事に励めて、かつ、少しずつ家事に協力的に育っていけば心が満たされるのだろう。そういうふたりの形もあっていい。

ふたりでオムライスを食べるときのナギサさんのひだまりのような笑顔で、すべてのもやもやが吹っ飛んでしまった。大森南朋、ハードボイルドな役もソフトな役も確実に的に当てていくスナイパーのような俳優。

朝起きて眠そうで食器洗うのが大変で般若のようにキッとした目をしたり、あれとこれとしないといけないとん〜〜と困り顔したりする多部未華子があくまでもナチュラルな感じも心地よい。

多部未華子『私の家政夫ナギサさん』もやもやもナギサさんの笑顔と「お食事にしましょう」で吹っ飛ぶ特別編
2021年1月31日にBlu-ray & DVD発売! 画像は番組サイトより

コミックシーモア、ダスキンメリーメイド等、効果的な企業宣伝につながったであろう『ナギサさん』、多部未華子と大森南朋にとっても最高の高感度アップにつながった。
ふたりが共演する映画『空に住む』(10月23日公開)も見たい。

ところで、靴下は裏返して洗うほうが傷まないとなにかの番組で見たのだが、ナギサさんの表説が正解?
(木俣冬)

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番組情報

TBS 火曜ドラマ『私の家政夫ナギサさん』
毎週火曜よる10:00〜10:54
※放送終了

公式サイト:https://www.tbs.co.jp/WATANAGI_tbs/
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