
これぞ日本のドラマだという感動も 『24 JAPAN』
ピッ・ピッ・ピ今週も規則正しくはじまった『24 JAPAN』(テレビ朝日系 毎週金よる11時15分〜)。総選挙前夜に起こった総理大臣候補を狙うテロ事件を追う24時間をリアルに24時間で描く、第2回は、深夜1時〜2時までの出来事。
【前話レビュー】唐沢寿明 『24 JAPAN』と元祖『24』の決定的に異なる重要ポイント
主人公・テロ対策ユニットCTUの第一支部A班の班長・獅堂現馬(唐沢寿明)が追う日本初女性首相候補・民生党の朝倉麗(仲間由紀恵)暗殺計画。
暗殺を企てるテロリスト側の行動。
獅堂の娘・美有(桜田ひより)の夜遊び問題。
それを心配する母・六花(木村多江)の追跡。
朝倉麗とその家族と選挙スタッフの忙しさ。
……等々が並行して描かれる。たった1時間の間に事件がてんこもりだ。
初回から思っていることだが、「24時間戦えますか」のバブル時代じゃあるまいし、深夜にこんなにみんなが活動的ってどういうことなんだろう。現に、夜中に麗の娘・日奈(森マリア)と息子・夕太(今井悠貴)と義母・滋子(水野久美)が手製のアップルパイを持って応援に来ると夫で選挙スタッフでもある遥平(筒井道隆)から聞いた麗は、「こんな夜中に」とけげんな顔をする。しごくまっとうな反応である。でも「タクシーで来るし」ということで了解するが、やってきた娘が嬉々として差し出したホールのパイを麗は「あとでいただくわ」とさらっと流してしまう。
いろいろ心配事があるからの行為だが、夜中にアップルパイなんて食べたら、胃もたれするし肌にもよろしくないと思う。なにしろ、麗の歴史的瞬間を写すため、ニューヨークから敏腕写真家・皆川恒彦(前川泰之)がやって来るのだから。
機密事項をみんなで共有するホームドラマ的世界観
だがその皆川は、テロリスト・氷川七々美(片瀬那奈)の仕組んだ旅客機爆発に巻き込まれていた。いや、巻き込まれたのではなく、彼こそが狙いであったのだ。神林(高橋和也)率いるテロチームの作戦は、皆川のプレスIDを盗みだし、整形して彼に成りすましたスナイパー(前川泰之二役)に麗を狙わせるというものだった。余談だが、「みながわ」「みながわ」と音で聞くと、「にながわ」に聞こえて、写真家・にながわ →蜷川実花を想像してしまった人も少なくないのではないだろうか。
この写真家偽装作戦。元祖『24』では、真っ暗な砂漠に爆破した旅客機からパラシュートで降下して、炎を焚いて、なにかをじっと待つ女テロリストの場面の雄大さにシビレたものだが、『JAPAN』 にはそれがなくて残念。女性のパラシュート降下は、今はやりの『愛の不時着』みたいだしやってほしかった。

そういう場面がない『JAPAN』は、本家と比べるとドメスティック――“任務遂行”の傍ら、切っても切り離せない“家族”に重きが置かれているように見える。テロを防ごうとする獅堂まわりと、テロを知らずに明日の総選挙を前にした朝倉まわりの家族関係にフォーカスが当たって見えるのだ。本家では男性だった大統領候補を、『JAPAN』では女性に変えたことによってその印象が強くなったように感じる。
義母「忙しい麗さんに代わってしっかり家のことやってから来たわよ」
麗「いつもありがとうございます」
などという嫁姑の会話がどこか橋田壽賀子ドラマみたいにすら聞こえてくる。夜遅くに眠い目で見ていると、夕太がえなりかずきに見えてくる。
機密事項だと言いながら結局、子供も聞いている前で、麗の暗殺計画があることを話してしまうSPたち。
女の嘘がドラマのサスペンス性を盛り上げる
一方、獅堂は、NY発羽田行きの旅客機が謎の爆発をして、朝倉麗を狙ったテロと関連があるのではないかと部下に調べさせていると、CTUの本部長・郷中(村上弘明)がテロがらみで最大のピンチに陥る。こんなときに、娘の問題が勃発して妻からじゃんじゃん電話がかかってきて、娘が心配じゃないの? と責められても、極秘任務だから詳しく話せないという困り顔の獅堂。救いは、妻・六花の口調がキツくなく、のんびりしていること。耳元でヒステリックに騒がれたらいやになるだろう。ただ、六花はのんびりどころかやる気がなさそうに見えるのだが、それはかつて夫と半年間、別居していたことに起因するのであろうか。
現馬のケータイが留守電になってしまい、六花がCTUに電話すると、夫と過去わけありだったらしいA班のチーフ・水石伊月(栗山千明)が出る。お互い、なにか知っているのか知らないのか。微妙な空気が流れているような……。この、正妻と愛人、女性同士の静かに火花散らす感じは向田邦子ドラマふう。
本家もそうだが。男くさい世界に見えて、女性がしっかり描かれているのは、『24』が幅広い人気を誇った所以であるだろう。
また、軽い夜遊びのつもりが危険な目に追い込まれた美有(桜田ひより)が六花に電話して心配しないように言わされているとき、「ママ大好き」と言い残したことで、普段の彼女ならそんなこと言わないと、なにか重大事が起こっていることを六花は察知する。
麗が家族に言えない秘密を抱えているのも、男性から女性に本家から変更したことで、いっそう女の嘘のドラマ性が際立った。
が、第2話で最も盛り上がるのは、獅堂は水石の秘密を知って動揺するところである。
女の嘘がドラマのサスペンス性を盛り上げる。本家があれだけ盛り上がったのも、大統領候補暗殺というショッキングな題材とノンストップサスペンスという新機軸と、アクションの痛快さのみならず、こういう人間描写の密度が支えていたからであろう。
(木俣冬)
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番組情報
テレビ朝日系『24 JAPAN』
毎週金曜よる11:15〜
番組サイト:https://www.tv-asahi.co.jp/24japan/
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