『姉ちゃんの恋人』4話 真人の凄惨な過去が明らかに…“諦めた”人たちの幸せを願わずにはいられない
イラスト/ゆいざえもん

それぞれの恋が進み始めた『姉ちゃんの恋人』4話

『姉ちゃんの恋人』(カンテレ・フジ系 毎週火曜よる9時〜)第4話。安達桃子(有村架純)市原日南子(小池栄子)のダブルデート、バーベキュー作戦。高田悟志(藤木直人)吉岡真人(林遣都)はOKで、わくわく。


【前話レビュー】他者との触れ合いを律する真人 希望は自分を少しだけ動かして変わることのできた桃子

さっそく、グループLINEで連絡をするが、真人だけは相変わらず返事が遅い。高田がグイグイ返事をせかし、真人はしぶしぶ返事する。でも「固っ」とダメ出しされて、「ちっ」と舌打ちする真人。

真人の気持ちに共感みしかない。高田のLINEはちょっとうざい。演じているのが藤木直人じゃなかったら嫌いになりそう。日南子のはしゃぎっぷりも、小池栄子じゃなかったら苦手かもしれない。でも、高田や日南子のように、グイグイしてくれる人のおかげで、引っ込み思案の真人は救われているのだ。

桃子が3話で言っていたように、真人は拗ねた人ではなく、もともとは社会性のある人だけれど、何かが原因で「(幸せになることを)諦めてる気がする」から、こっちから押していけば、素直な感情が出てくる。きっとLINEで、絵文字を使ったり、軽い文体で返事したりしたいけれど、あえてしないようにしているに違いない。もっともこういう人は、一回、結界が破れると、高田みたいにはしゃぐ可能性もある。

バーベキューを前に、桃子は弟たち、和輝(高橋海人)、優輝(日向亘)、朝輝(南出凌嘉)に恋していると報告。
恋の報告ができる家族って素敵だ。

桃子は、弟たちに、「優しいイケメンでいなさい、ずっと」と言う。

“その(親から)もらったきれいな顔でどう生きるかはあんたら次第。
生き方とか考え方とかきっと顔に出る。
だからずっときれいな顔でいてほしい。
優しい人でいて。
弱い人に優しい人でいてほしい。
弱い人の気持ちがわかる、考えられる人でいてほしい。“

令和のイケメンは顔のきれいな人ではなく、心のきれいな人。平成の頃から本当はそうだったと思うけれど、令和ははっきりと、心のイケメンの時代になるといいと思う。

恋をして仕事でミスする日南子

桃子の恋が進行するのと平行して、和輝の恋も動き出す。桃子の親友・みゆき(奈緒)への想いが止まらない。また駅で待ち伏せ(?)して、3話で行ったカフェに誘う。


手もつないでしまう。このときのみゆきの表情がじつにエモい。最初は年下で恋愛対象に考えられなかった和輝が違って見えてくる心の変化。

ぐいぐい、「付き合おう」と言われて、「受け入れちゃいけない幸せみたいなものがあるのよ」と焦りながら、けっきょく、抗えず、受け入れてしまうみゆき。

逡巡(しゅんじゅん)しているみゆきを見て、『姉ちゃんの恋』の女性キャラクターはなぜ、みんな、過剰な感情を言葉にしてどばどばと吐き出すのだろうかと思う。

そして、日南子もホームセンターの仲間たちに、恋していることを報告。たくさんの仕事のミスは恋しているからと。

繰り返す。なぜ、みんな、過剰な感情を言葉にしてどばどばと吐き出すのだろうか。見れば見るほど、この人たちは、ものすごく哀しい人たちに見えてくる。だからこそ、ちょっとした嬉しさを言葉にせずにはいられないのではないか。

とはいえ、家族にも職場にも報告できる恋はものすごく幸せな恋だと思う。
冗談めかしてペラペラ楽しい話に転嫁できればまだいい。それすらできず、黙って押し込めていることは、よっぽどのことである。

幸せになろうと頑張る人たち

真人が言葉少ない理由の詳細がついに明かされた。

詳細はここには書かないが、平成初期、月9でこんなショッキングなことが……と騒然となった『ひとつ屋根の下』か……と驚いたが、令和はそこまではいかない。いかないが、しかし……。

『姉ちゃんの恋人』って優しい〜ほっこりする〜と思わせてきて、でも真人には何かあると匂わせてきて、ガツン!としたものを用意してきた。やっぱり、これだけの無菌室のような優しさや穏やかさの外側には途方もない凄惨な光景が広がっていることを思い知らされた。

『姉ちゃんの恋人』4話 真人の凄惨な過去が明らかに…“諦めた”人たちの幸せを願わずにはいられない
第4話は11月24日放送。画像は番組サイトより

バーベキュー当日、日南子は、ピンクのパーカーを着て出る。どう着こなすか悩み、車のサイドミラーを見て、運転手に睨まれてあたふた。そういうのを、「イタい」と指摘されることを先回りして、「イタい」って言葉が嫌いだと桃子は、世の中の暴言に、ひとり憤慨する。

幸せになろうと頑張ることを他者があれこれ言うものではない。

桃子、日南子、高田、真人は買い物して、公園に行って、バーベキューをはじめる。
真人もようやく地が出てくる。妙にけろっと明るそうだった高田も心の傷を日南子に語る。

そして、桃子が、自分の過去の話をしつつ、「吉岡さんは、私と付き合ったほうがいい」と告白。和輝と桃子、さすが、きょうだい、アプローチがそっくりだった。

桃子と真人の幸せを願わずにはいられない。

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Writer

木俣冬


取材、インタビュー、評論を中心に活動。ノベライズも手がける。主な著書『みんなの朝ドラ』『ケイゾク、SPEC、カイドク』『挑戦者たち トップアクターズルポルタージュ』、構成した本『蜷川幸雄 身体的物語論』『庵野秀明のフタリシバイ』、インタビュー担当した『斎藤工 写真集JORNEY』など。ヤフーニュース個人オーサー。

関連サイト
@kamitonami
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