「ライブへの恐怖心はすぐには変わらない」ACIDMAN大木&ストレイテナーホリエが語る配信ライブの今
撮影/川島彩水

ライブが通常通り開催できなくなってから随分経った――。オンラインライブや人数を絞った形での有観客ライブなど、様々な再開方法が試されているが、第一線のアーティストたちはいまの状況をどう感じているのだろうか。

今回は、11月28日に開催されるオンラインライブ『Fanicon Private Fes. 2020』に出演予定の大木伸夫(ACIDMAN)、ホリエアツシ(ストレイテナー)の二人に、オンラインライブのいまを語ってもらった。

取材・文/まいしろ 撮影/川島彩水

度重なるライブの中止に、まだ気持ちを切り替えられていない


「ライブへの恐怖心はすぐには変わらない」ACIDMAN大木&ストレイテナーホリエが語る配信ライブの今
撮影/川島彩水

――今年に入って、ライブやフェスの中止が相次ぎました。

大木伸夫(以下、大木):誰も予想していなかったことですよね。特に僕らはライブを軸にしているバンドなので、その根本が揺らぐのはすごくショックなことでした。

ホリエアツシ(以下、ホリエ):僕は、初めて中止になったのがちょうど大木くんと一緒に出る予定のライブだったんですよ。

その頃、大木くんが「お客さんを危険にさらすわけにいかない」「自分達も気をつけるべきだ」っていう話をしていて、かなり早いうちから気持ちを切り替えようとしていたのが印象的でした。

大木:2月以降はずっとそのことを考えていましたね。もちろん今もそうですけど、今まで当たり前だったことを、どんどん考えて変えていかなくちゃと思っています。

ホリエ:僕自身は、正直なところ気持ちをまだ切り替えられていないんです。

今後はライブというもののありかた自体が変わっていくというのも、まだ受け止められていない状況ですね。

――ライブがまったくできない間は、どう過ごされていたんでしょうか。

大木:僕は会社の経営もやっているから、毎日リモートで会議をしたりしてかなり忙しかったです。

あとは、ACIDMANはオンラインライブをかなり早く始めたので、その戦略を考えたりしていましたね。

ホリエ:(ライブの自粛が始まってすぐの)3月11日にはもうライブの配信やっていたよね。

大木:そうそう。福島に行ってサプライズでライブの生配信をしたんだよね。準備も大変だったけど、自分の中でもいい経験になりました。
「ライブへの恐怖心はすぐには変わらない」ACIDMAN大木&ストレイテナーホリエが語る配信ライブの今
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――ホリエさんの方はどうでしたか?

ホリエ:ストレイテナーはもともとアルバムを作る予定だったので、そこに時間をかけていました。

ライブがない分、より作品に対してのめり込んで、新しいことをやるぞというモードでしたね。

――ライブがないことで曲作りに影響はありますか?

ホリエ:モチベーション的なところですね。ライブをずっとやっていると、過去の曲をずっと演奏することになるんですね。

その反動で新しい曲を作ったり、逆にライブでやった昔の曲に影響されたりっていうのがあるんですけど、そういうのがなくなりました。

ただ「この曲をライブでやったらどうなるんだろう?」ということも考えなくなったので、ある意味迷いがないというか、大胆なことがやりやすくもなりましたね。
「ライブへの恐怖心はすぐには変わらない」ACIDMAN大木&ストレイテナーホリエが語る配信ライブの今
撮影/川島彩水

大木:僕も同じかな。曲作りって基本的には自分との戦いで、自分のやりたい曲をいかに表現するかが大事だからそれは変わらないですね。

――「自粛の影響で旧譜が聞かれるようになっている」(※詳細は関連記事参照)という話もありますが、普段聴いている曲に変化などはありましたか?

大木:僕はもともと屈折しているので、好きな曲しか聴いていないです(笑)。暗くて切ない曲をずっと聴いている(笑)。

ホリエ:大木くんほどじゃないけど、僕も趣味で聴く曲はけっこう偏っているんですね。

でも、時間ができたことで今年は普段聞き過ごしていたメジャーな曲を聴けました。サビしか聞いたことがなかった曲をフルコーラスでちゃんと聴いたり、メジャーアーティストの曲へのスタンスに影響を受けたりしていましたね。

お客さんからの目に見えないエネルギーがライブをするのに大事だった


「ライブへの恐怖心はすぐには変わらない」ACIDMAN大木&ストレイテナーホリエが語る配信ライブの今
撮影/川島彩水

――ACIDMANもストレイテナーもそれぞれオンラインライブをされていますが、実際にやってみてどうでしょうか?

大木:圧倒的にやりづらいですよね。

普段のライブだとミスも良さになったりするんだけど、オンラインだと(観客が)どういう風に聴いてくれているかわからないから、ちょっとのミスがすごく心配になったりします。

だから現場はものすごい緊張感ですよ。普通のライブとは全然違う。

ホリエ:気持ち的には完全にレコーディングなんですよね。とにかくシビアに自分の演奏に向き合うっていう。

――ライブのときは観客に向かって演奏していると思うんですが、オンラインライブのときはどこに向かって演奏している感覚なんでしょうか?

大木:それはもう……「無」ですね(笑)。

ホリエ:すごくわかる(笑)。オンラインライブは自分を試しているような感覚だから、楽しむ余裕はないですね。

大木:歓声とか表情とか、お客さんからでてる目に見えないエネルギーが、ライブをするのにすごく大事だったってことに気付いたよね。

――最近だと人数を減らしての有観客ライブも増えてきましたが、そういうライブはいかがでしょうか?

ホリエ:やっぱりお客さんがいると演奏を楽しめますね。演奏ごとにリアクションが返ってくるし、曲が終わって拍手がもらえたりすると、力をもらっている感じがします。

大木:僕らも20年近くライブをやっているから、目の間にお客さんがいるということが当たり前になっていたんですよ。

それは反省点でもあるんですけど、改めてあのステージからの光景は本当に特別なことで、とても素晴らしいことだったんだなって。だから、できるだけあの日々を取り戻せていけたらと思いますね。

オンラインライブはテレビ収録に近い感覚


「ライブへの恐怖心はすぐには変わらない」ACIDMAN大木&ストレイテナーホリエが語る配信ライブの今
撮影/川島彩水

――オンラインライブはデメリットや、実際のライブと違う点が強調されていますが、オンラインならではのメリットなどはありますか?

大木:生のライブに勝るものはないんですけど、ACIDMANでいうと9月11日にインストのライブをやったんですよ。ああいうインストのような内省的な曲やマニアックな曲は、オンラインライブの方が向いているのかなと思いました。

ホリエ:あとは、オンラインライブって演奏に対して神経質だから、演奏のクオリティは普段より高いかもしれないですね。ただ、一周して生ライブのその日だけの演奏が一番だなって気もしてきているけど。

――オンラインライブで試してみたい演出などはありますか?

ホリエ:オンラインライブってやっぱりやりづらいんですけど、よく考えたら僕たちが憧れてきたアーティストって、最初はテレビで観たものだったりするんですね。

彼らはお客さんのいないテレビのスタジオライブであんなにかっこいい姿を見せてくれていたわけで「自分たちもやらなきゃ、やれるようにならなきゃ」っていうのを思ってます。

大木:確かに、テレビ収録と似てるよね。音楽番組に出ている感じ。

ホリエ:そうそう。カメラ目線とかできないよね。

大木:できない、できない。カメラが来たら目逸らすもん(笑)。

――(笑)。オンラインライブだとファンから直接コメントが来たりすると思うんですけど、そういうコメントで特に嬉しいものはありますか?

大木:もらえたら全部嬉しいですよ。

ありがたいことに僕らは長いことやらせてもらっているので、ファンからの言葉も時代を背負った言葉になっていると思うんです。

そういう意味のある言葉をもらえるのは嬉しいですよ。なんでも嬉しいですね。

――慣れないオンラインライブでどうリアクションすればいいのかわからないファンの方もいると思うので「なんでも嬉しい」という言葉はありがたいです。

大木:あ、でも強いていうならディスらないで欲しいです(笑)。

オンラインって(会話みたいに)イントネーションがないから、言葉が平坦になってしまうんですね。だから、なるべくポジティブな感想を書いて欲しい。

ホリエ:叱るときもなるべく心温まる感じで書いて欲しいよね。
「ライブへの恐怖心はすぐには変わらない」ACIDMAN大木&ストレイテナーホリエが語る配信ライブの今
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大木:いや、そもそも文字のときは叱っちゃダメ(笑)!

ホリエ:そうだね(笑)。でも、自分たちでは気づかないことにも気づかさせてくれるコメントとかはありがたいですよ。もっと聞きたかった曲とか、どのアングルが見たかったとか、そういうのはすごく参考になるし。

ライブへの恐怖心はすぐには変わらない


「ライブへの恐怖心はすぐには変わらない」ACIDMAN大木&ストレイテナーホリエが語る配信ライブの今
撮影/川島彩水

――まだしばらくは普段通りライブができない時期が続くと思われますが、この状況の中で今後やっていきたいこと、試していきたいことはありますか?

大木:やっぱりリアルのライブを取り戻していかないと思っています。僕らでいうと、7月のライブでオンラインでできる演出はいろいろ試したんですね。

だから次は、オンラインライブを充実させるというよりも、リアルのライブを自分たちで取り戻していかなくちゃいけないと思っていて。たとえ社会状況が変わったとしても、それぞれの心の中にある恐怖心ってすぐには変わらないと思うんですよ。

ライブに不安を感じているファンの方がいる中で、どうやって安心できるライブをやっていくか、この状況をどう生き抜くかっていうのを考えないといけないと思っています。

ホリエ:僕はまだ今のライブの現状に気持ちがついていけてないんですけど、やっぱり参加してくれているファンの方の想いが伝わるやり方を探したいとは思っています。

あとは、まだライブで演奏できていない曲を早くやりたいですね。新しい曲をステージ上で鳴らしたいというのが、いま一番思うことです。

――ありがとうございます。最後に、今回の「Fanicon Private Fes. 2020」はどんなライブにしたいですか?

大木:そうですね、タイトル通りプライベートなフェスなので、普通のオンラインライブといい意味でもっとゆるくやりたいと思っています。

それぞれのアーティストの個人としての良さが出せるフェスだと思うので、素のところも含めて「個人」を見れるフェスにしたいですね。

――アーカイブが残らないので、通常のオンラインライブとは違う雰囲気が楽しめそうですね。

大木:そうですね。今回のアーカイブを残さないスタイルは、僕もすごくいいなと思っていて。

ファンがいつでも見られるっていう意味ではあった方がいいと思うんだけど、「その日しか見られない特別なもの」っていうライブらしさが強く出せる気がしています。

あと、このフェスの売上は僕ら出演陣にゆかりがあるライブハウスに寄付されるんですね。各アーティストの血の通ったお金がライブハウスに流せるという意味でも、期待したいです。

ホリエ:僕としては、新しいアーティストを知ってもらう場になればいいと思っています。

今ってライブハウスでのライブがなかなかやりづらくて、新しくこれから世に出ていくアーティストの人たちがすごく難しい状況だと思うんですね。

だから、このフェスが今後も開催されて、新しいアーティストが知られるきっかけになったり、そこからアーティスト同士が繋がったりする場になっていけばいいと思う。

本来だったらライブハウスで繋がっていたものが、ひょっとしたらこのフェスを通じてもっと遠い人とも繋がっていくかもしれない。そういう可能性を持っているフェスだと思います。

――お二人のリアルなお話が聞けてよかったです! 今日はありがとうございました。
「ライブへの恐怖心はすぐには変わらない」ACIDMAN大木&ストレイテナーホリエが語る配信ライブの今
撮影/川島彩水


■まいしろ
社会の荒波から逃げ回ってる意識低めのエンタメ系マーケターです。音楽の分析記事・エンタメ業界のことをよく書きます。

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応募方法は下記の通り。
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(エキサイトニュース編集部)

開催概要


Fanicon Private Fes. 2020
日時:2020年11月28日(土)17:00~21:00
ライブ終了後21:00~22:00には打ち上げ風景もお送りします。
チケット料金:3,000円(税別)
視聴方法:Fanistream(スマートフォン、タブレット、PC等の端末)
視聴条件:Faniconアプリをダウンロードしチケットを購入した全ての人
チケット購入:https://fanicon.net/web/live/ticket/310
販売期間:2020年10月28日(水)18:00 ~11月28日(土)21:00
視聴可能期間:2020年11月28日(土)22:00まで

注意事項:
※生配信のため開始時間が多少前後する場合がございます。予めご了承ください。
※配信時間の途中から視聴した場合に巻き戻しはできません。
※アーカイブ配信はございません。
※配信映像の撮影・録音・録画および宣伝行為などの商用利用、私的使用は禁止です。
※Fanicon利用者以外の視聴も可能です。