
※本文にはネタバレがあります
奇妙な展開に『先生を消す方程式。』6話
「義経が来たーー」【前話レビュー】主人公不在回をカタルシスを作る構成に落とし込む鈴木おさむのプロの腕力
『先生を消す方程式。
義経が殺されて埋められたことに責任を感じた伊吹命(秋谷郁甫)が、死体蘇生術の本を使って魔術を行うと、土中から義経が現れた。命の美しい涙が効いたようだ。
「死んだのに」「生き返った」「本当に復活した」
意味があるようでないようなセリフを繰り替えす命。
学校では、刀矢に弓が呼び出されていた。朝日(山田裕貴)に言われて刀矢は、罪を警察に話そうと考える弓を殺そうと、学校中を追いかけ回す。『バトル・ロワイアル』パターン。
弓が追い詰められたとき、そこに義経が現れる。
「お前ら、俺を殺した」「俺を殺した」「俺を殺した」
何度も繰り返す義経。
今度は、4人と義経の追いかけっ子に。エレベーターのボタンを「早く早く」と押して、やっと来たと思ったら、そこに絶対、乗ってるパターン。当たり。
その頃、朝日はどんどん調子に乗って、静(松本まりか)のもとへ通い詰めている。キモい。「こわい」とか「キモい」とか単純な感想しか浮かんでこない、ある意味、極めて研ぎ澄まされた内容。ここまでそぎ落とせるってすごい。
調理場に4人を追い詰める義経。
「おれを殺した」「痛かった」
この回、セリフも単純化している。死んで生き返ってプリミティブになってしまったという感じ。
ついでにいうと、朝日に気持ち悪く迫られても微動だにしない松本まりかが地味にすごい。この人たちはホンモノである。生徒たち役の若者たちもがんばっている。
朝日が義経を殺したのは生徒たちだと責任転嫁
さて。ゾンビのパターンで、義経は、刀矢に思い切り殴られても、復活、また追いかけてくる。外に逃げればいいのに学校に留まっているのも、ホラーもののパターン。追いかけてきて窓にべたりと張り付く、パンデミックもののパターン。
「人を不幸にした子供は消えるべき。消えるべき…消えるべき」と義経が呪詛の言葉を吐き続ける。
だが朝が来て、義経は消える。
生徒たちは朝日に、義経が生き返ったと報告。「おまえら東大に行ける頭脳持ってて、ばかだべ」と朝日。このセリフは汎用性がある。政治家や、会社の偉い人たちなんかに言いたい。
朝日は、義経にはまだ脈があったが、それを埋めたのは生徒たちだと責任を押し付ける。ひどい。
「あのとき、脈がありましたー」「君たちが生き埋めにしたんだよ」と言うところで、いつもの主題歌タイム。この主題歌の入り方の破壊力。いい曲をかけることで、いいシーンをさらにいいものに増幅させる効果を逆手にとって、いい曲がかかるとどんなときでも感動してしまうことを笑うことはすでに行われている。例えば、クライマックスで中島みゆきがかかると、ここ感動するところですよ、と面白くなってしまうようなことである。
「せんけす」では、初回から、主題歌かけて感動エンドかと思ったら、そうじゃないというふうに視聴者の感覚に植え付けてきた。だから、今回も感動しないし、もはや、主題歌が入るとがっかりするという気分になるという、主題歌に失礼なくらい主題歌を無効化してしまったことは革命的といえるだろう(無理やり褒めています)。

朝日が、義経がどこかに隠れて復讐する機会を狙っているかもと、あちこちを探すと、排気口から血がぽたり、ぽたり……。天井に凄い形相で張り付いているかもと思ったが、さすがにそんなことはなかったが、天井裏に潜んでいる義経が、もはや人間ではなく怪物のよう。演じているほうは、こういうほうが開き直って楽しいかもしれない。
それにしてもこの奇妙な展開はどうしたことか。
すべて、命の妄想説? もしくは、「傷がうずく」と義経が口走ったことから、朝日の妄想説?
命と朝日が似た感じのいじめられっ子キャラであることから、いじめられっ子の抑圧された復讐心と、未成年であることを武器にしてやりたい放題の子供たちへのオトナの復讐心が懸け合わさって生まれた、妄想の方程式であると予想してみる。あとは、全部、義経の芝居説(小劇場のような展開だから)。
さて、次回、最終章――。このドラマ、嫌いじゃないです、と言わせてほしい。
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木俣冬
取材、インタビュー、評論を中心に活動。ノベライズも手がける。主な著書『みんなの朝ドラ』『ケイゾク、SPEC、カイドク』『挑戦者たち トップアクターズルポルタージュ』、構成した本『蜷川幸雄 身体的物語論』『庵野秀明のフタリシバイ』、インタビュー担当した『斎藤工 写真集JORNEY』など。ヤフーニュース個人オーサー。
@kamitonami
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番組情報
テレビ朝日系『先生を消す方程式。』毎週土曜よる11:00〜
公式サイト:https://www.tv-asahi.co.jp/houteishiki/