『おちょやん』第2週「道頓堀、ええとこや〜」

第6回〈12月7日 (月) 放送 作:八津弘幸、演出:梛川善郎〉

『おちょやん』シズ(篠原涼子)からの大目玉で始まった千代の道頓堀での奉公生活
イラスト/おうか
※本文にネタバレを含みます

「そや」や「はい」やのうて「へえ」 道頓堀のルール

大正5年。継母に追い出され 、道頓堀の芝居茶屋・岡安に奉公に出た千代(毎田暖乃)。岡安を仕切っているのは、ご寮人さん・岡田シズ(篠原涼子)、旦那さんは岡田宗助(名倉潤)、お家さん(シズのお母さん)は岡田ハナ(宮田圭子)


【前話レビュー】妊娠した後妻に要らないと言われ奉公に出される千代 悲しい別れの理由を考察する

華やかな街に来て「道頓堀、ええとこや〜」とすっかり浮かれ気分の千代だったが、シズとの面談で、いきなり失態。「試されてる」とふんだ千代は、逆張りして、実家との関係が良好であることをアピール。だが、そういう親孝行な子はすぐに実家に帰ってしまうから雇わないと言われてしまう。慌てて、家には帰らないと主張するが、ご寮人さんは認めない。「もっと素直で賢い子」を探すと言う。つまり千代が「素直じゃなくて愚か」と思ったのだろう。たしかに、親思いの良い子アピールは姑息であった。

困ってしまったところ、ちょうど宗助と一緒に帰って来たハナがとりなしてくれた。とりあえず1カ月だけいられることになる。

宗助に「おちょやん」と呼ばれ、なぜ自分の名前を知ってる? と思ったら、小さい女中見習いのことを「おちょやん」と言うと聞く。
返事は「そや」や「はい」ではなくて「へえ」。知らない言葉がたくさん存在する新しい世界で、千代の新たな生活がはじまった。


『おちょやん』シズ(篠原涼子)からの大目玉で始まった千代の道頓堀での奉公生活
写真提供/NHK

女中頭のかめの謎さっそく、女中頭・かめ(楠見薫)に任された千代だったが、1カ月しかいないのだからと何も教えてくれない。

仕事を教えてもらえないのも困りもの。なんとか釜を洗うことになった千代は、釜に残ったご飯粒を食べていいかと言うと、走り(流し)のご飯粒も食べろといけずなかめ。でも千代は気にせず、むしろ、喜んで食べてしまう。

「おおきに、おかめさん」と礼を言われたかめは急に、千代の髪の毛をとかしはじめ、あれもこれも仕事を指示する。外では風がびゅーっと吹いて、なにやら怪しい気配に(ちょうどこのとき「大雨警報 東京都小笠原村」という文字情報が出て、あまりのタイミングのよさにそれも演出効果かと思ってしまったほど)。

千代が苦労人であることを察したのだろうか。それとも「おおきに」と礼儀を知っていることを評価したのだろうか。千代は仕事をすることができた。この流れで、芝居茶屋の仕事はものすごく忙しいということがわかる。

千代が岡安に来たとき、バタバタ働いている富士子(土居志央梨)にぶつかった場面も、お茶子の忙しさがわかる描写。お仕事をちゃんと書いてくれそうと期待できる。


かめ役の楠見薫は『あさが来た』で「ほんにほんに」の一言(ふたこと?)だけで圧倒的な存在感を放った名バイプレーヤー。ちなみに、14分頃、壺からなにか食べていたのは「かめ壺」と呼ばれるお菓子の壺だと、『NHKドラマ・ガイド「おちょやん」Part1』に書いてあった。

ハナ役の宮田圭子は『べっぴんさん』でヒロインの母代わりのような忠実な女中役で優しさを振りまいていた。今回も、厳しいシズに対して優しく千代を育んでくれそう。

宗助役の名倉潤は『べっぴんさん』の高良健吾演じる潔の父親役で、亡くなったあと幽霊になって登場した71話は名場面だった。

『おちょやん』シズ(篠原涼子)からの大目玉で始まった千代の道頓堀での奉公生活
写真提供/NHK

失敗は続く

働き始めた千代。ふんどしを洗濯しながら、父・テルヲ(トータス松本)のふんどしを弟・ヨシヲ(荒田陽向)と洗濯したことを思い出す。それが「あかん…この流れはあかん」(黒衣・桂吉弥)と、とんでもない展開に。

ぶつかってきた人を口汚くののしったり、流しにこぼれた米粒まで食べたり、ふんどしのニオイをかいだり、最近はデオトラントされがちな猥雑感を残そうとする心意気に注目したい。ただ、ねずみだけはかわいいイラストで処理されて、ある程度の配慮はされているようだ。

前口上は毎週あるのか

本編の前に、出演者が並んで挨拶する前口上。「これ、毎週やるの?」と天海一平(成田凌)が疑問を呈すと、千代(杉咲花)が首を横にふる。

たぶん、今週いっぱいであろう。というのは、最初の2週間は、子役の毎田のターンのため、杉咲花も成田凌も出てこない。
彼ら目当ての視聴者をつなぎとめるために、ふたりを事前に出す工夫をしていると考えられる。芝居仕立てにしたことで、上方喜劇の女優になる千代らしさもアピールする一石二鳥の名案だ。

第1週のハイライトも芝居仕立てで振り返る。これを見ると、父と子の別れのくだりなどは、あえて舞台向けの内容にしているように感じる。実際にあったことが、語り継がれ、お芝居仕立てになると、ずいぶんと様変わりするもので、

栗子(宮澤エマ)におはぎを食べられてしもた千代ちゃんは彼女を絶対にお母さんと認めませんでした」(黒衣)

え。おはぎの恨みだったの? とびっくりした。

栗子役の宮澤エマは舞台慣れしているので、目線や体の動かし方が達者であることが、こういう舞台形式になるとよくわかる。

【関連記事】『おちょやん』4回 千代の継母追い出し作戦「追い出される前に追い出したらあ」
【関連記事】『おちょやん』3回 人間の本質を見つめる物語と名優たちの人間力でドラマを見せる心意気
【関連記事】『おちょやん』2回 2週間描かれる千代の子供時代 子役豊作の近年、神回誕生に期待

Writer

木俣冬


取材、インタビュー、評論を中心に活動。ノベライズも手がける。主な著書『みんなの朝ドラ』『ケイゾク、SPEC、カイドク』『挑戦者たち トップアクターズルポルタージュ』、構成した本『蜷川幸雄 身体的物語論』『庵野秀明のフタリシバイ』、インタビュー担当した『斎藤工 写真集JORNEY』など。ヤフーニュース個人オーサー。

関連サイト
@kamitonami

■杉咲花(竹井千代役)プロフィール・出演作品・ニュース
■成田 凌(天海一平役)プロフィール・出演作品・ニュース
■名倉潤(岡田シズ役)プロフィール・出演作品・ニュース
■篠葉涼子(岡田宗助役)プロフィール・出演作品・ニュース
■宮田圭子(岡田ハナ役)プロフィール・出演作品・ニュース
■楠見薫(かめ役)プロフィール・出演作品・ニュース
■土居志央梨(富士子役)プロフィール・出演作品・ニュース
■仁村紗和(節子役)プロフィール・出演作品・ニュース
■桂吉弥(黒衣役)ニュース


※次回第7回のレビューを更新しましたら、以下のツイッターでお知らせします。
お見逃しのないよう、ぜひフォローしてくださいね。

【エキレビ!】https://twitter.com/Excite_Review
【エキサイトニュース】https://twitter.com/ExciteJapan

番組情報

連続テレビ小説『おちょやん

【放送予定】
2020年11月30日(月)~

<毎週月曜~土曜>
●総合 午前8時~8時15分
●BSプレミアム・BS4K 午前7時30分~7時45分
●総合 午後0時45分~1時0分(再放送)
※土曜は一週間の振り返り

<毎週月曜~金曜>
●BSプレミアム・BS4K 午後11時~11時15分(再放送)

<毎週土曜>
●BSプレミアム・BS4K 午前9時45分~11時(再放送)
※(月)~(金)を一挙放送

<毎週日曜>
●総合 午前11時~11時15分
●BS4K 午前8時45分~9時00分
※土曜の再放送

:八津弘幸
演出:梛川善郎
音楽:サキタハヂメ
主演: 杉咲花
語り・黒衣: 桂 吉弥

主題歌:秦 基博「泣き笑いのエピソード」
編集部おすすめ