Netflix『返校』強姦未遂が大問題に! 変態教師に正義の鉄槌は降るのか<5〜6話レビュー>

クズを抜群にうまく描く『返校』

Netflixで配信されているドラマ版『返校』連続レビュー、今回は12月19日に更新された5~6話についてである。

【前回レビュー】Netflix『返校』台湾ホラーゲーム発で描かれる、白色テロ時代の台湾で起こったある悲劇<1〜4話>

Netflix『返校』強姦未遂が大問題に! 変態教師に正義の鉄槌は降るのか<5〜6話レビュー>

1話から4話までで、主人公の少女ユンシアンの翠華中学への転校、さらに彼女が徐々に追い詰められ、そしてユンシアンにだけ見える幽霊のレイと心を通わせていく様が描かれた。

ユンシアンは家庭にも居場所がなく、立ち入り禁止の涵翠楼に入ったことで学校でも「幽霊」という札を首からぶら下げさせられるという息苦しい境遇で生活している。
唯一の拠り所となりそうなのはシェン・ホア先生と彼が運営する詩社だったものの、シェン先生自身が強烈なコンプレックスの持ち主だった上に、その点を指摘したユンシアンに対して逆上。ユンシアンはあわや強姦されかけるという事態となった。

5~6話では、この強姦未遂が大問題になるところから話がスタートする。校長の息子であるシェンは親と一緒にユンシアンの証拠不十分をあげつらい、対してユンシアンには久しぶりに家に戻ってきた父親が味方となる。

一時はユンシアンの被害の訴えが聞き入れられるかに見えたが、しかしユンシアンの持病である精神的な病、そしてそれに伴って妄想を見る点を突かれ、ユンシアンと父は次第に追い詰められていく。

打つ手を失ったユンシアンはある行動に出るが、その影響で幽霊として姿を現していたレイと入れ替わり、30年前のレイが果たしてどのような罪を犯したのか、自ら追体験することになる。

Netflix『返校』強姦未遂が大問題に! 変態教師に正義の鉄槌は降るのか<5〜6話レビュー>

このドラマの登場人物全員に言えることなのだが、とにかく人間の多面性を描くのがうまい。ユンシアンの父は一見すると娘思いのいいお父さんなのだが、なんだかんだでユンシアンと母を見捨てて別の場所に逃げている男である。「こんないいお父さんがなんでそんなことを……?」と思わせておいて、後からじんわりとクズっぽい行動を見せてくる。

そのクズっぽさも「まあ、人間そういうこともあるよな……」という範囲なのが絶妙なバランス感覚。「偉そうに自由を語るけど実はそれはコンプレックスの裏返しで、実のところ詩人としては大したことがなかったし親に守ってもらわないと何もできない」という人間だったシェン・ホア先生にしてもそうだが、ドラマ版『返校』はクズを描くのが抜群にうまい。

もうひとつうまいのが、ゲーム中の要素の取り込み方である。
特に6話にはゲーム内でも印象的に登場したラジオや、レイの部屋に置いてあった貯金箱など、やり込んだ人なら「あったな~!」と思うようなアイテムがさりげなく散りばめられていて、ゲーム版に対するリスペクトが強く感じられるのも好印象。

また、ゲームでも序盤の主人公だったウェイ・チョンティンがレイを知るキーパーソンとして登場するのも嬉しい。内容的にはドラマオリジナルの展開が大半ながら、ちゃんと原作で描写されていた白色テロの不穏さや台湾における城隍神への信仰といった要素が詰め込まれているのもこの作品の魅力だろう。

Netflix『返校』強姦未遂が大問題に! 変態教師に正義の鉄槌は降るのか<5〜6話レビュー>

プロセスの組み立てがとにかくうまい、少女を追い込むねちっこさ

5~6話で印象的なのが、とにかく少女を追い詰めていくプロセスのねちっこさ、醜悪さである。進歩的で優しい教師かと思いきや、ただのコンプレックスをこじらせたキモい奴だったことが明らかになったシェン先生。

そして不出来な息子であるシェンに激怒しながらも、権力で身内を守ることに躊躇しない校長と、学生を締め上げることに躊躇がないバイ教官。彼らの動きによって、極限までユンシアンは追い詰められる。

追い詰められたユンシアンに、幽霊であるレイは心を寄せる。しかし自分の力を使えば周囲の人間を皆殺しにできると説得するレイを、ユンシアンはあくまで拒絶する。このあたりのプロセスに全く無駄がなく、見ている方をちゃんと納得させるだけの説得力がある。

ものすごく頭の悪い登場人物が出てきてイライラさせられたり……という展開がなく、あくまで「この状況だったらそうなるな~」という展開を積み重ねて5話ラストのユンシアンのある行動につながるのだ。脚本の運びの見事さと、それゆえの残酷さが5~6話の大きな見所だと思う。

とはいえ、レイは復讐という目的を持って現世に戻ってきた幽霊である。
ユンシアンと共鳴しつつも、なにやら腹には相当異なる考えを持っているらしく、6話まで見てもその目的はなんとなく恐ろしそうだな~というところまでしかわからない。

そして迫る翠華中学の創立記念日。多くの人が集まったところで、レイは一体何をするつもりなのか。そして、たった一人だけ真面目にユンシアンのことを心配しているチョン・ウェンリアンは、果たしてユンシアンを救えるのか。どう考えてもロクなことにならなさそうな最終2話、今から続きが気になって仕方がない。

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作品情報

Netflix Nシリーズ
『返校』
2020年 / 1シーズン

監督:スー・イースアン、チョアン・シャンアン、リウ・イー
出演:リー・リンウェイ、ハン・ニン、ホアン・コアンチー、ジャック・ヤオ、シア・トンハン、デヴィッド・チャオ、ルオ・グアンシー、ウー・クンダー、セレナ・ファン、キャロル・チョン、チャン・ハン、ツァイ・ルイシュエ、リン・チーチエン

<ストーリー>
台湾発人気ホラーゲームがドラマ化。1990年代、山奥の学校で立ち入り禁止の場所に入った転校生リュウは、亡霊となったファンと出会い、過去の惨劇の秘密を知ることに。

◎配信ページ:https://www.netflix.com/title/81329144


Writer

しげる


ライター。岐阜県出身。元模型誌編集部勤務で現在フリー。月刊「ホビージャパン」にて「しげるのアメトイブームの話聞かせてよ!」、「ホビージャパンエクストラ」にて「しげるの代々木二丁目シネマ」連載中。プラモデル、ミリタリー、オモチャ、映画、アメコミ、鉄砲がたくさん出てくる小説などを愛好しています。

関連サイト
@gerusea
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