【前編】「一番長距離ランナーに向いている魔法少女はプリキュア・星奈ひかる」を読む
「シン・エヴァンゲリオン劇場版」の公開が(おそらく)近い。公開がたびたび延期されるなか、首を長くして待ち望んでいるファンの方も多いだろう。
今回は、そんなエヴァンゲリオンに代表される日本のアニメについて、順天堂大学から箱根駅伝に出場し「オタクランナー」として知られるようになった壽屋の宣伝ランナー・稲田翔威さんに「走り方」や「フォーム」の観点から解説をしてもらう。
エヴァンゲリオンの走りはヒザが心配
――前編(※関連記事参照)に引き続き、長距離ランナーの視点からアニメキャラクターの走り方を解説をお聞きしたいです。後編のトップランナーは「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破」で機体であるエヴァが走るシーンです。
これは実際にやるとあまりよろしくないフォームだと思います。
――映像で見るとかなりきれいに見えるんですが、よくないフォームなんですね……!
腕を大きく振りすぎているのと、足が(体の)後ろに流れてしまっているんですね。たぶん足と地面の接地時間が長い走り方だと思います。
それから、かなり前に傾いているので間違いなくヒザを壊す走り方ですね。
――今までエヴァのヒザを心配したことはなかったんですけど、急に心配になってきました。
いろいろアニメを見てみたんですけど、アニメだとだいたいのキャラクターが前傾姿勢なんですね。大きく腕を振って前に傾いている姿勢の方が、見た目がかっこよく見えるしさわやかなんだと思います。
ただ、実際に走るにはちょっとヒザが...という感じですね。
――確かに、アニメだと疾走感が出すために現実より大ぶりな動きも多いですよね。それから、同じシーンで止まるときにエヴァが足を前に出して地面をすべりながら止まるところがあるんですが、この止まり方はどうでしょうか?
絶対にやめた方がいいですね。
――それは、そうですよね。
エヴァのような速さで走って急に止まるのは間違いなく足に負担がかかるので、そのままゆっくりペースを落として止まった方がいいですね。
――これは特にどこに負担がくるんでしょうか?
ヒザとか腰とか踵とか全部にくると思います。でも一番はヒザですね。特にダメージがきつそうです。
――エヴァ、本当にヒザを大事にして欲しいですね。それからハードルを飛び越えるような走りもしているんですが、このあたりのフォームはどうでしょうか?
ハードル競技は専門ではないんですけど、これを見る限りだとハードルを超える足もまっすぐ伸びていますし、抜き足(先にハードルを飛び越えない方の足)もコンパクトにあげられています。
ハードリングはけっこういいと思うので、エヴァは3000メートル障害だと速い選手かもしれないです。
――なるほど、エヴァの楽しみ方に新たな一石を投じていただきありがとうございます!
「進撃の巨人」奇行種の走り方はランニングマシンで改善できる
――次はたびたび話題になる「進撃の巨人」の奇行種の走り方です。
進撃の巨人は自分もアニメを見ていたんですが、かなりめちゃくちゃな走りですよね。
――絶望的なフォームですが、これはどこから直せばよいのでしょうか?
優先順位で考えると、すぐに直せるのは上半身だと思います。腕の振り方や上体の姿勢を直したあとに、時間をかけて下半身を直していく方がいいですね。
――下半身はどのあたりが一番問題だと思いますか?
わかりやすいところでいくと、一部の奇行種は足の運びが「Knee-in Toe-out」と呼ばれる動きなんですね。
――あの奇行種の走り方にそんな名前が……。
足首が固定されていなかったり、筋肉のバランスが悪かったりするとこの走り方になるんですけど、このKnee-in Toe-outはけっこうケガに繋がりやすい走り方なんですね。
で、僕自身がどちらかというとKnee-in Toe-out気味の選手なんですが、直すには接地を練習する必要があります。
ジムにあるランニングマシンでまっすぐ足をつける練習をするんですけど、奇行種にもこの練習をさせた方がいいなと思いました。
――奇行種のフォームはさすがに直せないのかなと思っていたので、具体的なトレーニング方法があることに驚きました……!
まずは腕振りと体幹をきたえて、同時進行でランニングマシンを使って接地の練習をしてもらうと、この奇行種もきれいなフォームで走れるようになると思います。
――なんだか希望の持てる話をありがとうございます!あとは人間以外で爆走するキャラクターということで、「銀魂」のエリザベスについてもお聞きしたいんですが、こちらは走り方としてはどうでしょうか?
いまのところ一番いいフォームですね。
――意外すぎるご意見です。
そうですよね(笑)。でも、上体がまっすぐで腕の振り方もコンパクトなので、長距離ランナーに向いていると思いますよ。
自分の胸の前あたりで腕を振っているし、ヒザも前に出ているし、足も後ろに流れていないし、けっこういい走りだと思います。
――まさかこの流れでエリザベスが褒められるとは思いませんでした。
禰豆子vsナルトvsアラレちゃん 一番速い走り方をしているのは誰か
――最後に、最近ネットでも話題になっていた「両手を広げて走るキャラクター」についてお聞きしたいです。新旧問わず、アニメには両手を広げて走るキャラクターがよく出てくるのですが、こちらについてはいかがでしょうか。
この3人だと、一番速いのは「鬼滅の刃」の禰豆子だと思います。禰豆子は体幹が強いみたいで、上体がまっすぐで姿勢がいいんですよね。
――さすが不死身の鬼なだけありますね……!
足元はあまり描かれてないですが、見える限りだとヒザがしっかり前に出ていて、体重もうまく乗っていると思います。
マラソンだったら間違いなく禰豆子が一番向いています。
――最近は禰豆子の走り方を真似する子供が多いと言われているので、お話を聞いて安心しました。
腕を振っていない以外はけっこういい走りだと思いますよ。
ただ、長距離の場合は走る時間が長いので、リズムをつかむために腕振りが大事になってくるんですね。体を進める推進力にもなるし、腕を振らないと体がぶれてしまうので、弊害はあると思います。
――なるほど。マラソンに出る機会があったら気をつけて欲しいです!ちなみに、この3人の中でコーチをするとしたら誰にどういうアドバイスをしたいですか?
コーチとしては、一番優先して指導したいのはナルトですね。
やり方としては、ひとつは走るときに前に傾かないように意識すること、もうひとつは体幹トレーニングですね。ナルトには、特に床にうつぶせになって足を伸ばしてキープする「プランク」をして欲しいです。
――なるほど、実生活でもかなり役に立ちそうなお話が聞けてよかったです。今日はありがとうございました!
【前編】「一番長距離ランナーに向いている魔法少女はプリキュア・星奈ひかる」を読む
■まいしろ
社会の荒波から逃げ回ってる意識低めのエンタメ系マーケターです。音楽の分析記事・エンタメ業界のことをよく書きます。
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1994年2月23日生まれ。茨城県常陸太田市出身。順天堂大学卒。箱根駅伝に出場し、14年3区15位/ 15年4区6位/ 16年7区5位を記録。在学中からの縁で株式会社壽屋に入社。入社に合わせて実業団陸上部を新設。ランニングとサブカルチャーをつなぐ宣伝ランナーとして活躍中。コトブキヤ秋葉原館勤務。
コトブキヤ陸上部|Web site