一番長距離ランナーに向いている魔法少女はプリキュア・星奈ひかる 元箱根駅伝選手が解説

一番長距離ランナーに向いている魔法少女はプリキュア・星奈ひかる 元箱根駅伝選手が解説
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【後編】「エヴァンゲリオンの走り方だとヒザを壊す」を読む
昨今のアニメ作品は映像のクオリティが高く、驚くほどきれいな映像も多い。人の動きも例外ではなく、「プリキュア」や「セーラームーン」といった子供向けシリーズでも想像以上に動きが作り込まれていたりする。

今回は、そんなアニメの動きについて知るために、順天堂大学から箱根駅伝に出場し「オタクランナー」として知られるようになった壽屋の宣伝ランナー・稲田翔威さんをお呼びして、人の動きのなかでも特に「走り方」について、前編・後編にわたって解説してもらった。
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一番長距離ランナーに向いている魔法少女は「スター☆トゥインクルプリキュア」の星奈ひかる


――最初に、稲田さんは長距離専門のランナーとのことですが、毎日どれくらい走ってらっしゃるんでしょうか?

1日20〜30kmぐらいですね。月だとだいたい500〜800kmぐらいです。

――毎月500km以上! それはランナーとしては普通なんでしょうか?

実業団の選手としては平均だと思います。月600〜1000kmが相場でしょうか。

――すごい世界ですね。走っているときによく考えることなどはありますか?

僕の場合は、アニメのラジオを聴きながら走ったりしています笑。

――なるほど! では本題で、今回はアニメキャラクターの走り方の解説をお聞きしたいと思っています。アニメで「走る」シーンといえばやっぱりこれかなということで、まずは魔法少女系アニメの朝の登校シーンとオープニングを見比べていければと思います。
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このなかだと、長距離ランナーとして一番いい走りをしているのは「スター☆トゥインクルプリキュア」の星奈ひかるだと思います。
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――プリキュアは「女の子だって暴れたい!」をコンセプトにスタートしたシリーズなので、1位に選ばれるのは納得感があります。

長距離走は、ムダな体力を使わないように腕をコンパクトに振らないといけないんです。でも、魔法少女ってけっこう腕をダイナミックに振っていますよね。

それに比べてプリキュアの星奈ひかるは、腕振りがコンパクトでスムーズです。あとは上体もまっすぐですよね。この体勢はヒザに負担がかかりにくいので、その意味でも一番ランナーに適していると思います。
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最も手前にいるのが星奈ひかる(画像出典:Amazon/スター☆トゥインクルプリキュア 感謝祭[Blu-ray](特典なし))リンクはこちら

――ひかるは他の人と比べて歩幅が小さく、やや窮屈そうに見えるのですが、これは問題ないのでしょうか?

確かに、ストライド(歩幅)は小さいですね。ただ、長距離の場合は小さめのストライドで足をはやく回す「ピッチ走法」の方が速く走れるんですね。

ストライドは大きい方がいいし、その選手の持ち味とも言えるんですけど、大きいとその分(足と地面の)接地時間も長くなってしまうんです。そうすると足を回すのに時間がかかって、走るのが遅くなってしまいます。
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なので、ストライドが小さいところも含めて、やはり長距離ランナーに向いているのは星奈ひかるだと思います。

――なるほど、アニメを見ているだけではなかなか気づかないプリキュアの意外な才能が知れて嬉しいです!
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運動神経はいいが腕に力が入りすぎているアイカツの姫石らき


――逆に、このなかでもっとも長距離ランナーに向いてなさそうなキャラクターもお聞きしたいです。

「アイカツオンパレード!」の姫石らきが気になります。
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一番右が姫石らき(画像出典:Amazon/アイカツオンパレード! Blu-ray BOX 1)リンクはこちら

らきは、走っているときに腕がかなり開いてしまっていますよね。腕が外に開いているということは、腕が力んでしまっているということで、ムダな力を使ってしまっているんですね。

それに、ここまで腕を外に振っていると、(走るための)推進力にもあまりなっていないと思います。
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――姫石らきは走りながら満面の笑みを浮かべているのが一番の魅力だと思うんですが、これは三次元の人間にも可能なんでしょうか?

うーん……。余裕があるときは可能ですね。僕も箱根駅伝で、カメラが来たときはちょっと凛々しい顔をしていましたし(笑)。

――そうなんですね!

カメラが離れるとちょっと油断した顔になるんですけど笑。

らきはたぶん、心に余裕を持って走れているんだと思います。長距離で後半かなりきつくなってくると、笑っている余裕はないので……(笑)。

――現実世界だと、どれくらい走ると余裕がなくなってくるものなんでしょうか?

長距離でいうと、だいたい60%ぐらいですかね?半分をすぎて60〜70%に差し掛かると一気にきつくなってきます。
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――姫石らきはオープニングでかなり盛大に転んでいるんですが、転んだときのアドバイスなどはありますか?

集中して走っているときはアドレナリンが出ているので、転んでも意外と痛くないんです。それより「すぐに起き上がらなきゃ!」とい思います。

でも、ゴールして終わってから急に体が痛くなったりするんですね。なので、らきもここは一旦冷静になった方がいいと思いました。
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――かなり有用なアドバイスをありがとうございます。

あとは、らきは転んだ後の着地がよくできていますよね。ヒザを曲げて衝撃を吸収できています。

とっさにこの動きができるということは、運動神経はいいんだろうと思います。

――この短いオープニングからかなりの情報を読み取っていただきありがとうございます!想像以上にキャラクターについて深く知れて嬉しいです。

セーラームーンの新作は旧作より体幹が鍛えられている


――最後は1992年版「美少女戦士セーラームーン」月野うさぎについてです。

うさぎについては、服装が走りにくそうなのが気になって……。

基本的に走るときは、ヒザが前に出しやすい服や、軽い服装が理想です。うさぎの服は走るにはスカートが長すぎますね。
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――セーラームーンに変身した後は完璧なんですけどね……。

あとは靴がヒールなのも気になりますね。

訓練したランナーなら「フォアフット走法」といってつま先から地面に足をつける走り方ができるんですけど、一般の方は「かかと接地」と呼ばれる、かかとから足をつける走り方をしています。

なので、ヒールで走るとヒールが折れてしまうんですね。

――なるほど。「美少女戦士セーラームーン」については2014年から新作アニメも放送されているんですが、新作と旧作で走り方に違いは感じますか?
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右が月野うさぎ(画像出典:Amazon/美少女戦士セーラームーンS Blu-ray COLLECTION VOL.1)リンクはこちら

新作の方が、すこし上体がまっすぐになっていて、いい走りをしていると思います。
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――22年の時を越えてフォームが改善されたんですね。

おそらく体幹がよくなったのかなと思います。フォームが少しよくなっていますね。
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――うさぎの隠れた努力が知れて嬉しいです! ここまで魔法少女系アニメのキャラを見てきたんですが、稲田さんが今まで見たアニメのなかで、特にいい走りをするキャラがいればお聞きしたいです。

「ノラガミ」というアニメに出てくる「ひより」という子のフォームがすごくいいんですよね。アニメ一期のエンディングで走っているシーンがあるんですが、かなり長距離選手向きです。本当に、女子長距離選手のような動きなんです。

――絶賛ですね!

腕の振り方もコンパクトで、体もまっすぐで前に傾いたりしていない。うまく体重を乗せられています。

エンディングでは足元は描かれてないんですけど、たぶん足もうまく回せているので接地時間も長すぎず、きれいなピッチ走法ができていると思います。長距離の理想的なフォームは、まさにこんな感じですね。

――長距離を走る機会があったらノラガミのひよりを参考にします!

あとはフレームアームズ・ガールの轟雷も、比較的きれいに走れていると思います。
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走って駆け寄っているのがフレームアームズ・ガールの轟雷(画像提供:壽屋)

服装も走るにはベストな衣装になっているかなと思います。

<後編では「新世紀エヴァンゲリオン」や「進撃の巨人」の奇行種の走り方について聞いていく>

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■まいしろ
社会の荒波から逃げ回ってる意識低めのエンタメ系マーケターです。音楽の分析記事・エンタメ業界のことをよく書きます。

Twitter:https://twitter.com/_maishilo_
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Profile
稲田 翔威


1994年2月23日生まれ。茨城県常陸太田市出身。順天堂大学卒。箱根駅伝に出場し、14年3区15位/ 15年4区6位/ 16年7区5位を記録。在学中からの縁で株式会社壽屋に入社。入社に合わせて実業団陸上部を新設。ランニングとサブカルチャーをつなぐ宣伝ランナーとして活躍中。コトブキヤ秋葉原館勤務。
関連サイト
コトブキヤ陸上部|Web site

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