
スタバのロゴでおなじみ“セイレーン”が登場する『マーメイド・イン・パリ』
突然だが、スタバのロゴに描いてあるあの女性のマークが何かご存知だろうか。答えはセイレーン。美しい歌声に聞き惚れた船乗りを海に落とし、船を難破させ、船乗りを食うというギリシャ神話由来の殺人人魚である。【関連記事『ブックスマート』カミングアウトの遥か先で、思いっきりはっちゃけている爆走青春コメディ映画
今回紹介するのは、そんなセイレーンが登場するフランス映画だ。ちなみに、邦題と、米国のタイトルはマーメイドになっているが、原題はセイレーンである。
セーヌ川で人魚を拾った歌唄いのおっさん(イケメン)
【あらすじ】セーヌ川に浮かぶ老舗バー“フラワーバーガー”でパフォーマーをしているガスパール(40歳)は、ある夜、傷を負って倒れていた人魚を見つける。彼女の名前はルラ、夜な夜なセーヌ川に美しい歌声を漂わせ、出会った男性を恋に落とし心臓を破裂させていた恐怖の連続殺人人魚だった。
歌によって人間から身を守ってきたルラは、ガスパールの命も奪おうと歌を歌うが、なぜか全く効果がない。それどころかケロリとしている。それもそのはず、ガスパールは度重なる失恋で、恋する感情を捨て去っていたのだ。ピンピンしていたのは、破裂させられるはずの心臓がそもそもズタボロだったからである。

懸命に看病するガスパールの献身的な優しさに、次第に心惹かれていくルラ。しかし、人魚である彼女は二日目の朝日が登る前に海に帰らねば命を落としてしまう。同時に、恋を忘れたはずのガスパールの体に異変が起こる。胸がギュッと締め付けられるように苦しいのだ。
そんな中、ルラに夫を殺された女医のミレナが、ルナを探し当てようとしてた! 果たして、ルラは海に戻れるのか! ガスパールの恋の行方や如何に!?
おとぎ話だと舐めててゴメンなさい
とまぁ、あらすじを読んでいただければわかるように、恋を知らない人魚と恋を捨てた中年男の絵本のような超絶おとぎ話ラブストーリーである。正直、オンライン試写の案内が来てあらすじを読んだ段階では「えぇ〜〜、アラフォーに片足突っ込んでるオッさんが観るにはチョットきついんですけど〜」と思いながら再生ボタンを押した。だが、エンドロールが流れる頃には「誰か、私の推しを見て、イラスト描くから私の推しの映画を観て」と液タブの前に座っていた。
甘くてカワイイけど、ビターでピリピリ
冒頭から飛び出す絵本を開いたかのような世界観で物語が進行し、背景の小道具もカワイイものが散りばめられ、アヒルのオモチャが大量に並んだガスパールの自宅のバスタブに40のおっさん(自分とほぼ同年代)の風呂にしては可愛すぎだろと抱いた気持ちも途中からどうでもよくなってくる。そして、設定的にも美術的にも甘々になりそうな世界観に、恋に落ちたら死ぬ、時間制限あり、そもそも住む世界が違う、などなどの苦味がアクセントになり、その裏では愛する夫を殺された女医が殺人人魚を追い詰めていくサスペンス要素のフレーバーがピリピリと絡んでいく。この例えで伝わるか自信がないが、言うなれば、甘さと苦さとフレーバーが渾然一体となった Bean to Barチョコレートのような映画である。
【YouTube】『マーメイド・イン・パリ』予告編(90秒)
全方位的にオススメ
そして、人魚ルラを演じるマリリン・リマがとにかくカワイイ。こんな人魚が現れたら、歌声を聞く前に膝から崩れ落ちて死んでしまう気がする。ちなみにこの映画、フランスでは最初のロックダウンの2週間前に公開されたため、2週間で上映が一度打ち切られている。日本では、バレンタインデー直前の2021年2月11日(木)に公開された。男性にも女性にも全方位的にオススメなので、ぜひご覧いただきたい。
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作品情報
『マーメイド・イン・パリ』公開中
出演:ニコラ・デュヴォシェル、マリリン・リマ、ロッシ・デ・パルマ、ロマーヌ・ボーランジェ、チェッキー・カリョ
監督:マチアス・マルジウ
原題:Une sirene a Paris
2020/仏/102分/G
提供・配給:ハピネット
配給協力・宣伝:リージェンツ
後援:在日フランス大使館/アンスティチュ・フランセ日本
(C)2020 - Overdrive Productions - Entre Chien et Loup - Sisters and BrotherMitevski Production - EuropaCorp - Proximus
●ストーリー
<恋を知らない人魚>と<恋を捨てた男>ふたりが奏でる心ときめくおとぎ話
恋の都パリ。セーヌ川に浮かぶ老舗のバーでパフォーマーとして働くガスパールは、ある夜、傷を負い倒れていた人魚を見つける。
ルラを懸命に看病するガスパールの献身的な優しさに、ルラは次第に心惹かれていく。しかしガスパールの体に異変が起こる。胸がギュッと締め付けられるように苦しいのだ。パリで出会ったふたりの運命の行方は――?
ウラケン・ボルボックス
東京から福岡に移住した映画好きのイラストレーター。主な著書『なんてこった!ざんねんなオリンピック物語』JTBパブリッシング、『侵略!外来いきもの図鑑もてあそばれた者たちの逆襲』PARCO出版。
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