
※本文にはネタバレがあります
安心のいちゃこらを楽しむ『ボス恋』7話
『オー!マイ・ボス!恋は別冊で』(以下ボス恋)(TBS系 毎週火曜よる10時〜)第7話では、主人公の奈未(上白石萌音)が、子犬系男子・潤之介(玉森裕太)が、元カノ・理緒(倉科カナ)を抱きしめているところを目撃したら、すぐさま、ワイルド狼系男子の編集者・中沢(間宮祥太朗)に告白されるという、恵まれた展開に。さすがの奈未もすぐに中沢に乗り換えたりはしないが、なぜ私に? と首をかしげる余裕があるところもまた小癪である。【前回レビュー】『ボス恋』6話 潤之介と中沢に告白され、編集長に礼も言われ、でも抱き合う理緒と潤之介も見ちゃって起伏激しい
『ボス恋』は主人公に感情移入できる、少女漫画(『りぼん』とか『なかよし』とか『別冊マーガレット』みたいな)読者である若年層の憧れであると同時に、主人公がけしからんと思う小姑系が不満をぶつけるサンドバッグ的なものとして、ふたつの楽しみ方があり、それが一定の人気(視聴率)をキープしている理由と考えることができる。
万が一、恋も仕事もイージーモードの奈未にいらっとしたら、潤之介に子犬を重ねて考えるように、奈未を瞳の大きなキラキラした漫画キャラと重ねて(好きな少女漫画家の絵を想像して)見ると、気分も薄れていくので、お試しを。
中沢は潤之介に宣戦布告、バイオリニストとして致命的な腕の病にかかった理緒は潤之介に未練があると告白。地元から奈未を訪ねてきた両親と妹たちによって、さらにこんがらがる。
あのいけすかない幼馴染がまた登場した。犬飼貴丈、こんな役割でかわいそう。まだ当て馬のほうがマシだが、当て馬は間宮祥太朗の役割なのである。しかも最近は『この恋あたためますか』の仲野太賀もそうで、本命よりも当て馬キャラが人気を博す時代。いや、この傾向は昨今のものではない。『花より男子』の小栗旬がいた。当て馬は出世コースである。犬飼貴丈も、まずは当て馬役を目指してがんばってほしい。
中沢の清潔感最高
奈未と潤之介の恋はどうなる? というほぼ心配の要らない心配よりも心配なのは、創刊したばかりの『MIYAVI』が出版社の吸収合併によって存続の危機にあること。奈未の仕事がなくなってしまうかもしれない。唯一、社内事情を知っている副編集長は、編集部員を引き連れて、中沢が取材に行くことになっている長野のコテージへ日帰りキャンプに向かい、そこで社内事情を明かす。奈未はその日、麗子(菜々緒)と雑誌存続を賭けた仕事で別行動だったが、偶然、同じ場所で、合流。
ある意味、お別れキャンプが事件を引き起こすことに――。かいつまむと、キャンプ場で奈未が潤之介にもらったブレスレットを落とし、探すのに夢中になって、中沢と共に終電を逃してしまう。ふたりでお泊りする流れに「え」と戸惑う奈未。しかも空きが一室しかなく、奈未と中沢は接近しかかるもーーけっきょく、中沢は「もしお前が俺の彼女だったら、俺はお前がほかの男と泊まるはいやだ」という誠実さを見せ、ほかの宿を探すと出ていく。なんて道徳的な。この清潔感、最高。
その後、ひとりでブレスレット探しをしていたという涙ぐましさなのだけれど、朝になって探したことであってほしい。真っ暗闇のなか、懐中電灯で探すとか、ありえなさ過ぎるので。
だが、中沢の誠実さを知らない潤之介がふたりの仲を心配し、深夜、奈未を迎えにバイクを走らせていると、子犬が道路にいて。それを避けようと――。

朝、ひとり宿を出た奈未の視線に、少年に子犬を届ける潤之介が……というやたらとスローモーションでもったいつけて見せる感動的な場面。
ところが、このときの潤之介が幽霊に見えてしまったのは筆者だけだろうか。ホントはバイクがスリップして死んでしまった潤之介の生霊が子犬を届けに来たという、ファンタジー展開になっているのでは……と妄想が膨らみ、居住まいを正してしまった。少年の腕のなかで子犬が眠そうにずっと目を閉じているのも気になるし(かわいすぎる)、潤之介、あごに擦り傷あったけど、服がきれいなのだもの。
通常のドラマだったら、潤之介が事故ったところでつづく――になりそうなものだが、それは先日、他局のラブストーリー『ウチカレ』でやってしまったからか、その先も描いてしまった『ボス恋』。やっぱり潤之介とのハッピーなシーンが売りとばかり、奈未と潤之介の甘い場面で締めくくった。『ボス恋』はどうなるの〜というハラハラを楽しむドラマではなく、安心のいちゃこらを楽しむドラマなのである。
麗子と宇賀神の恋の行方は?
さて、別冊の恋のほか、本誌の仕事の話。雑誌がなくなることを阻止するため広告をとろうと、麗子は新規開拓をはかる。そのため奈未を伴って長野のメーカーを訪ねることにしたのだが、なぜか麗子は大幅に遅刻。交渉のための準備に手間取ったからで、でもどんなときでも麗子はクールで焦ったところを見せない。彼女があたふたするのは、宇賀神(ユースケ・サンタマリア)の前だけ。麗子のキャラで、彼女のヘンな部分は、とぼけていてかわいいとこもあると笑って済ませられる。
無理してヒールで田舎の街を歩いたため足首を痛めた麗子に、宇賀神が「これでも医師の免許をもってるんで」と冗談を言う。このボケもユースケだから成立する。靴を脱いで、素足を宇賀神の前にさらす麗子のドキドキシーンも、いちゃこらである。
無事、広告案件も成立して『MIYAVI』の逆襲はあるか。
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●第8話あらすじ
迫りくる音羽堂出版社の吸収合併と『MIYAVI』の廃刊危機を乗り越えるべく、COACHとMIYAVI、そしてISOBEの3社がコラボレーションする化粧水のプロジェクトへ向けて編集部は動き出した!
そんな中、奈未 (上白石萌音) は特集記事の磯辺 (近藤芳正) 社長の紹介欄の執筆を任され、自分の原稿が初めて雑誌に載ると期待に胸を膨らませる。そして潤之介 (玉森裕太) との仲は距離がグッと縮まったことで、仕事中も潤之介との半同居生活を思い出してはニヤけてしまうのだった。
そして一度、金沢の実家へと帰った潤之介。母・香織 (高橋ひとみ) に宝来グループを継ぐことを前向きに考えていると告げるのだが、付き合っている彼女を連れて帰って来いと言われてしまい……。
そんなある日、編集部に写真週刊誌から一枚のゲラが送られてきた。そこには奈未と麗子 (菜々緒) が写っており……!?
――番組サイトより
番組情報
TBS系『オー!マイ・ボス!恋は別冊で』
毎週火曜よる10時〜
出演:上白石萌音(プロフィール) 菜々緒(プロフィール) 玉森裕太(プロフィール)
間宮祥太朗(プロフィール) 久保田紗友(プロフィール) 亜生(ミキ)(プロフィール)秋山ゆずき(プロフィール)
太田夢莉(プロフィール) 高橋メアリージュン(プロフィール) なだぎ武(プロフィール) 犬飼貴丈(プロフィール) 橋爪淳(プロフィール)
山之内すず(プロフィール)
宮崎美子(プロフィール)
高橋ひとみ(プロフィール)
宇梶剛士(プロフィール)
倉科カナ(プロフィール)
ユースケ・サンタマリア(プロフィール)
番組サイト:https://www.tbs.co.jp/BOSSKOI_tbs/
木俣冬
取材、インタビュー、評論を中心に活動。ノベライズも手がける。主な著書『みんなの朝ドラ』『ケイゾク、SPEC、カイドク』『挑戦者たち トップアクターズルポルタージュ』、構成した本『蜷川幸雄 身体的物語論』『庵野秀明のフタリシバイ』、インタビュー担当した『斎藤工 写真集JORNEY』など。ヤフーニュース個人オーサー。
@kamitonami