香取慎吾『アノニマス』自分が思う正義は誰かを傷つけることにはならないか 誰もが考えるべきことテーマに
イラスト/ゆいざえもん

※本文にはネタバレがあります

『アノニマス』最終回<名もなき正義>

SNSの誹謗中傷問題が加速する現代。PCやスマホなどキーボードによる殺人、“指殺人”の対策室を舞台にした『アノニマス ~警視庁“指殺人”対策室~』。ついに最終話を迎えた。


【前話レビュー】すべての先入観を捨ててたどり着いたアノニマスの正体

香取慎吾『アノニマス』自分が思う正義は誰かを傷つけることにはならないか 誰もが考えるべきことテーマに
(C)「アノニマス」製作委員会

香取慎吾『アノニマス』自分が思う正義は誰かを傷つけることにはならないか 誰もが考えるべきことテーマに
(C)「アノニマス」製作委員会

「ようやく私に、たどり着いたようですね」

万丞渉(香取慎吾)のスマホに非通知からの着信。相手は倉木セナ(シム・ウンギョン)だった。

「お前がアノニマスなのか!」
「ええ。どうですか? 元相棒に振り回される気分は」

心神喪失状態だったはずの倉木が豹変した。2年前の事件で負傷した倉木。目を覚ますと、身内であるはずの警察の裏切りを耳にしてしまった。「警察に真実を隠されないために何ができるか」――それから倉木は、警察が2年前に犯した大罪を明るみに出すこと、犯人捏造など真実を闇に葬った人物を裁くために感情を殺して準備していた。アノニマスとして「名もなき皆さんの正義に期待します」と、事件の捜査資料を相次いで「裏K察」に投稿。炎上を仕掛けて真実を炙り出そうと行動に出た。

「こんな形で警察の不正と隠蔽がバレたら……」
碓氷咲良(関水渚)四宮純一(清水尋也)が警察全体の信用が失墜すると懸念した。

香取慎吾『アノニマス』自分が思う正義は誰かを傷つけることにはならないか 誰もが考えるべきことテーマに
(C)「アノニマス」製作委員会

倉木、アノニマスの暴走、2年前の事件に絡む証拠捏造を指示した城ヶ崎(高橋克実)が行方不明……「俺の問題だ」と抱える万丞に、羽鳥賢三(山本耕史)は万丞のコートの襟を掴んだ。

「ふざけるな。
お前だけの問題じゃない。勝手に背負って正義ぶるな。何か掴んだらすぐに連絡しろ」

少し前まで一触即発状態だったが、荒々しくも目をあわせ、心が通っていた。

香取慎吾『アノニマス』自分が思う正義は誰かを傷つけることにはならないか 誰もが考えるべきことテーマに
(C)「アノニマス」製作委員会

香取慎吾『アノニマス』自分が思う正義は誰かを傷つけることにはならないか 誰もが考えるべきことテーマに
(C)「アノニマス」製作委員会


香取慎吾『アノニマス』自分が思う正義は誰かを傷つけることにはならないか 誰もが考えるべきことテーマに
(C)「アノニマス」製作委員会

行方不明になっていた城ヶ崎は、遺書を残して服毒自殺をはかった。真実を暴こうとした行動によって生まれた弊害だ。「正義が執行された結果です。あなたたち警察に正義を語る資格はありません」と倉木。

一方、城ヶ崎の死、以前から様子がおかしいと思っていた城ヶ崎の娘に、「死んで当然な人間なんていない」と伝えた万丞。相棒だったはずの2人のすれ違いが悲しい。

香取慎吾『アノニマス』自分が思う正義は誰かを傷つけることにはならないか 誰もが考えるべきことテーマに
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「終わり終わり終わり終わり……」万丞の言葉を何度も復唱して、これが始まりだと一蹴した倉木。一方、万丞はなぜ真実にたどり着けたかを熱を込めて語った。何を言っても突っぱねる倉木。
そんな複雑な心境に寄り添い、見抜いていた万丞。

「正義を探し続ける」万丞と倉木が同じことを語ったが、それぞれが定義する「正義」はまた違うのだろう。視聴者にも問いかけているようだった。

香取慎吾『アノニマス』自分が思う正義は誰かを傷つけることにはならないか 誰もが考えるべきことテーマに
(C)「アノニマス」製作委員会

『アノニマス』を振り返って

あっという間に迎えた最終回。身近なテーマや社会問題を取り上げており、毎回すんなりとストーリーに入っていけた。情報を受け取り、発信する……スマホ一つ、指一本で気軽にできるものだけに、自分が思う正義は誰かを傷つけることにはならないか。自問自答、冷静さを含め、様々な角度から考える、作品を通してそんなきっかけをもらった。

オープニングテーマの「誰誰誰」(アイナ・ジ・エンド)で一気に引き込まれ、主題歌「Anonymous(feat.WONK)」でしばし余韻を残す、個性的な音楽も『アノニマス』の世界観には欠かせなかった。

本作とは離れるが、『推し、燃ゆ』の著者・宇佐美りんが『タイプライターズ』(フジテレビ系 / 2月27日放送回)で、作品を書くにあたって苦労した点について「SNSは描写がしづらい」と語っていた。本作では、アノニマスの書き込みをはじめ、SNSの反応など、ストーリーの流れに欠かせない要素を大画面に映しながら上手く見せていたのも印象的だ。

香取慎吾『アノニマス』自分が思う正義は誰かを傷つけることにはならないか 誰もが考えるべきことテーマに
(C)「アノニマス」製作委員会

民放ドラマへは5年ぶりの出演となった香取だが、胸を打つ万丞の言葉を、視線、声の抑揚を使い分け、シーンによっては迫力満点に演じていた。緊迫した場面でも心の温かさが失われていないところも香取らしい。

また、ラストで碓氷咲良を相棒として認めたほか、過去には万丞が恋人とは手を繋ぐ派と回答したり、香取がアンファーの提供読みをしたり、シリアスなシーンに挿し込まれた“さりげないキュン”も楽しみの一つだった。


香取慎吾『アノニマス』自分が思う正義は誰かを傷つけることにはならないか 誰もが考えるべきことテーマに
(C)「アノニマス」製作委員会


放送中はドラマに関連するワードがトレンド入りを果たし、放送終了後には続編を希望する声が多数寄せられた。また、主演の香取も、放送30分前から投稿、放送後にも「ありがとう」と画像つきでお礼を伝えると、たくさんのコメントが寄せられていた。これぞSNSの醍醐味だ。理想的な使い方を自ら体現していた。

16年ぶりに共演した香取と山本。万丞のこれまでや、万丞と羽鳥のストーリーももっと知りたかったし、2人が対峙するシーンは2人にしか出せない独特の迫力があった。今後、続編もしくはスピンオフ作品で、『あぶない刑事』シリーズのタカとユージ、『踊る大捜査線』シリーズの青島刑事と室井さんのようなバディ作品に出演を! と、想像が掻き立てられた。

香取慎吾『アノニマス』自分が思う正義は誰かを傷つけることにはならないか 誰もが考えるべきことテーマに
(C)「アノニマス」製作委員会

室長の越谷(勝村政信)に、菅沼凛々子(MEGUMI)、そして碓氷と四宮がいる指殺人対策室。回を追うごとに自然と距離が縮まっていったのも微笑ましかった。事件は起こってほしくはないが、相談に訪れた人に親身になって相談にのる、こんな頼れる場所は増えてほしいと思う。

香取慎吾『アノニマス』自分が思う正義は誰かを傷つけることにはならないか 誰もが考えるべきことテーマに
(C)「アノニマス」製作委員会

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番組情報

テレビ東京系
『アノニマス ~警視庁“指殺人”対策室~』
毎週月曜よる10時〜
※放送終了
Blu-ray BOX&DVD BOX

2021.08.04発売予定!!


出演:香取慎吾(プロフィール)
関水渚(プロフィール) MEGUMI(プロフィール) 清水尋也(プロフィール) 勝村政信(プロフィール) シム・ウンギョン(特別出演)(プロフィール) 山本耕史(プロフィール)

監督:及川拓郎(プロフィール) 湯浅弘章 大内隆弘
脚本:小峯裕之 玉田真也 入江信吾
音楽:山下宏明 丸橋光太郎

制作:テレビ東京/ギークピクチュアズ
制作協力:ギークサイト
(C)「アノニマス」製作委員会

番組サイト:https://www.tv-tokyo.co.jp/anonymous/

Writer

柚月裕実


Web編集/ライター。ジャニヲタ。アイドルがサングラスを外しただけでも泣く涙腺ゆるめな30代。主にKAT-TUNとNEWSですが、もはや事務所担。

関連サイト
@hiromin2013

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